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妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜  作者: 宮比岩斗
4章 我が女神、それは

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我が神は此処にありて

 どうにかこうにか妹の機嫌を直し、進行が再開する。


 コメント欄には女心わからないやつみたいな俺を揶揄するコメントで溢れていた。中には「髪色同じだから本物の兄妹みたい」と設定上の兄妹と考えてる人もいるようだった。実際、血のつながりはないからあながち間違いではないのだが、妹はこれに「本物の兄妹だし!」と躍起になって反論していた。


 妹がリスナーとわちゃわちゃやっている横で改めて新しくなった自分の姿を見る。


 いけすかないイケメンのような見た目であった。ある意味ではアンチ大量にいる俺らしい姿とも言える。その分、量産型使いの名の下に集まった信者はいたのだが、この姿になったことでいなくなってしまうだろう。今もコメントとコメントの間に挟まって阿鼻叫喚が流れていた。


 シオミンにいい格好見てもらうためならば必要な犠牲である。


「さて、お披露目自体はこんなもんでいっか」


 始まってまだ三十分しか経っていないのに妹はそういった。そのほとんどは妹の機嫌直しの時間だったので、まだほとんど何もやっていないに等しいのに大丈夫だろうか。


 そう思っていると妹は俺の肩に手を置く。


「実はにーちゃんに喜んで欲しくてあること用意してたんだよね」


 にひひと口角をあげる妹に碌でもないことを考えているのではないかという恐怖を覚える。


 玉露の時然り妹が俺を喜ばせたい時は大体ありがた迷惑に終わることが多いのだ。


「ではでは~そこに立っててくださいな~」


 部屋の真ん中に誘導される。


「では! 入ってきてください!」


 カメラに向かって合図を送る妹。俺と同じように外で待機している人に向けたものだろう。


 目の前に円柱上に並ぶ光の輪が現れる。それは誰かが部屋に入る時に現れるエフェクトだった。


 現れたのは金髪サイドテールの白ギャル。


 その姿には見覚えがあった。見覚えしかなかった。


 汐見柚子である。


 シオミンである。


 俺が敬愛してやまないお方である。


 この世で最も美しく、可愛い、それでいて愛嬌もあれば、確かな歌唱力にダンスも堪能。神が気まぐれに完璧な存在を作ったとするならばそれは彼女である。


「カラードロップ所属バーチャルライバーの汐見柚子です。よろしくね!」


 いつもの挨拶。それが俺に対して送られる。


「お兄さんってば汐見のファンなんだってね。マイマイともども仲良くしてね!」


 さらにそう声をかけられてしまった日には俺の平常心なんてどこかへ吹き飛んでしまう。


「こちらこそよろしく」なんてカッコつけて言いたかったが、俺にとっての神を前にそんな取り繕う真似なんてできるわけなく「はわわ」なんて擬音が似合うぐらいにきょどっていた。神は全てを見通すというが、神の前で隠し事ができなくなるだけだろう。


「そのアバターカッコいいね。あたしもマイマイにプライベート用作ってもらいたいなぁ」


 あまりに何も言えなくなっている俺を気遣って話を振ってくれる。


「舞香、汐見さんの頼みだ。作ってあげなさい」


 妹は笑顔で俺の背後に回ると、思いっきり俺のケツにタイキックを叩き込む。


 痛みこそなかったが衝撃はあり、前のめりに転んでしまう。


「にーちゃん、嬉しいのはわかるけどはしゃぎすぎ。というか私のお手製アバター見た時よりも喜ぶな……ばか……」


 新しいアバターのせいでいつもよりも小さく見える妹に、どこに行くにも俺の影に隠れていた頃を思い出す。


「悪い」


 思い出したがゆえ昔のように頭を撫でてしまった。


 妹はその手を振り払い、シオミンの影に隠れて猫のようにシャーっと威嚇してくる。


 その顔は熱を帯びているように見えた。

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