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妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜  作者: 宮比岩斗
4章 我が女神、それは

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初代失業騎士

 ゴールデンウィーク二日目、今日も今日とてブルースフィアを進めていく。


 昨日はアンジェラ先輩からの御鞭撻を受け、本ゲームの進め方を理解した。とにかくストーリーを進めて、レベルアップなどの強化が必要だ。しなければ色を変えてパラメータ調整されただけの数増しモンスターに血祭りにあげられるだろう。


 今日やることはレベル上げを兼ねた武器種開放だ。二日でアンジェラに追いついてやろうという魂胆だ。


 武器種解放には、とある任務をクリアする必要がある。初期職業ごとに担当NPCが存在し、そいつからの試練を達成することで武器種が解放されるのだ。その任務を受けれる状態まで昨日、アンジェラと一緒に進めた。


 だから今日はその任務をクリアすれば晴れてアンジェラと並ぶことができる。


 ちなみにこの段階で初期の目的であったシオミンのためのゲームの予習は終わっているのだが、どうせならばゴールデンウィーク中はほぼ空いているからこれに時間を割くのも悪くないだろう。


 その担当NPCがいる村へ向かう。


 騎士の担当NPCは過去に英雄と呼ばれた元騎士である。親友に裏切られ、命からがら逃げ出し、この村に逃げ落ちた。その時に受けた傷で騎士としては死に、今では酒浸りの生活を送る中年親父……という設定だ。つまりは失業騎士だ。


「ん……なんだおめえ」


 担当NPCは酒場にいた。


「一手御指南受けたい」


 イベント進行の都合なのか俺ではない声が勝手に再生される。


「どこで聞いたか知らねえが俺はもうそんなことしねえんだ。もし受けたきゃ聖女の雫でも持ってきな」


 聖女の雫。それはとある遺跡の深部に自生する植物の朝露を指す。魔力の含んだ朝露はどんな怪我でも一瞬のうちに治すことができるという。つまりはこの中年親父は騎士だった頃の自分に未練たらたらというわけだ。


「わかった。取ってくればいいんだな」


 そう再生したあと身体が勝手に踵を返し、酒場から出ようとする。後ろから「お前如きが取ってこれるわけないだろう!」という怒号が響いた。


 酒場から出てからは身体の操作権が戻る。自由に動けるようになったのでマップを開く。聖女の雫があるという遺跡の場所を確認していると声をかけられる。


「こんにちは! あのおっさんに話しかけたってことは武器種解放任務やるんでしょ。お姉さんと一緒にやらない?」


 声をかけられた方を見ると、外国人モデルを元に作られたアバターがいた。こういうタイプはお高い。美人になればなるほどお高い。量産型という部類には入るものの、量産型とは呼ばれることはない。ブランドものという呼ばれ方をする。


 コスパを至上とする我ら量産型使いとは水と油の存在と言えよう。


「俺弱いですよ?」


 パラメータを開示して俺の弱さを見せつける。


 アンジェラがほぼクリアしてくれたおかげで任務解放するのに適正なレベルからだいぶ下のパラメータを見せつける。


 体良く断ろうとする。


 むしろ、向こうから断ってほしい。


 知らない人と喋りたくない。


「いいよいいよ気にしないから! 喋りながらやりたかっただけだし!」


 この頭の悪そうな女性は俺がやりたくなかったことこそが目的だった。


 量産型とブランドもの、やはり水と油であった。

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