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馴れ合い

 体感三十分ほど経過した頃だろうか。森の中にヘリポートらしきものが現れた。アスファルトを突き破った根性逞しき雑草たちに覆われ、ヘリポートを示す円と白文字は微かにしか残っていない。最後に勝つのは雑草魂だと言わんばかりの繁殖具合であった。


 そんな場所が何故ヘリポートだと思ったのかといえば、ど真ん中にヘリが停まっていたからだ。


「これに乗ってもらう」


 俺を担いでいたパワードスーツは俺を下ろし、腕を掴む。


「こんな場所、自衛隊にも見つからずによく用意できたな」


「大昔に民間へ払い下げられ、放置されたものだ。記録から抹消されたからここを知る者はほとんどいない」


 ヘリに乗り込む。


「見たとこ五人乗りみたいだけど他の奴らはどうするんだ?」


 それに答えないまま定員一杯まで乗り込んだ後、残りの殆どを置き去りにしてヘリは飛び立った。


 飛び立ってすぐ密閉式ヘッドホンを手渡され、下を見るように促される。指示に従い、下を見ると残ったパワードスーツの全員が事切れたようにその場に倒れていた。


「殺したのか?」


 問いかけた。


「殺していない。元よりこの中に人はいない」


「……ロボットか」


「俗な言い方だとそうなる」


「お前もどこかで遠隔操作してるのか?」


「そろそろバラしてもいいか」


 わざとらしくノイズ音が走る。


「やあ、僕の声なら誰がこれを操作しているのか鈍感な君でも気付くだろう」


 その声は小憎たらしい小僧が脳裏に浮かぶものであった。


「ケイオスか。俺は別に逃げるつもりはなかったぞ。それとも俺と戦うのが怖くなって現実で武力に訴えかけたのか?」


 安い挑発がてら探りを入れる。


「ふん、この期に及んで見苦しい真似はしないよ。むしろ感謝して欲しいぐらいだ。あのまま自衛隊に保護されていたら、人権派を気取るテロリストに引き渡されていた」


「……何を言ってる」


「自衛隊も一枚岩じゃないってことさ。君みたいな若者が無駄に命を散らす必要はないって人情派がいた。それを唆す悪い大人もいた。それだけのことさ」


「助けたつもりか?」


「恩に着せるつもりはないよ。決戦で雌雄を決める。邪魔は入らせない」


「ならいい。優しくされると殺す決意が鈍る」


「良いことを聞いた。なら捕虜として丁重な扱いをしようかな」


「おいおい、今や俺は国家元首レベルの要人だろう。ファーストクラスのもてなしを期待してるからな」


「僕だとわかった途端に調子に乗るな」


 ヘリは進む。


 既にあの山々は視界の彼方まで離れた。


「あんな人と変わらない動きをするロボットなんてどこで手に入れたんだよ」


 パワードスーツから小憎たらしい小僧の声で返ってくる。


「日本近海にちょうど最新式装備を揃えた船が集まってるじゃないか。その中から少しばかり拝借しただけさ。もっともあの装備が見つかったら、何処の国由来のものかわかるはずだから世界は紛糾するだろうね。水面下で君を返せと要求して、見に覚えのない要求に反論するか、そのままイニシアチブを取ろうとするか見ものだ。もっとも話が纏まる瀬戸際で僕の仕業だとバラすつもりだけどね」


 それはもう楽しげに語っていた。


 神に近づいた余裕からか、以前の必死さがなくなった代わり、性悪さが増したような気がした。

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