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本当のことを言ったら怒られるやつ

「妹に頼るとは?」


 汐見は俺の前に立ち、自身の胸に手を当てる。


「当て馬として相応しいのはマイマイってこと。話聞いてた限りだと、二人して反目してたみたいだし、神様見習い同士ってことで意識してたんでしょ。なら汐見よかマイマイの方が当て馬にちょうどいいかな。それに君って汐見のファンだけどそういう目で見てないでしょ」


 女神様は信仰するものであるからあながち間違っていない。むしろアイドルの応援とは無償の愛で為さねばならない。だからアイドルに彼氏がいたとかで心揺らいではならないのだ。ただ、怒り狂う同士を見た時は「いるならいるで正直に言って欲しかったのだろうなぁ」と思わないでもない。


「熱狂的なファンだからこそ守るべき一線は死守してるな」


「うん、そういうところホント駄目。当て馬にしたいなら嘘でも愛してるの一言ぐらいあって然るべきなんだけどなぁ」


「陰キャにそれは些か難易度が高すぎるな」


「だからマイマイにお任せかな」


 汐見が当て馬に向かない論理は正しい。だが妹にそれを推すのは論理の飛躍と言っていい。


「妹だぞ」


「でも血は繋がってないじゃん」


「今更女性として見れない」


「男に走るよりは難しくないって。イケるイケる!」


「俺のことをなんだと思ってるんだ」


「血の繋がらない妹を女性として見れないと世界が滅亡するやもしれぬセカイ系主人公」


「そんな世界滅んでしまえ」


「うん。ホントに滅びるからね、それ」


 どうしてこうなった。


 アンジェラを目覚めさせるには当て馬が必要だろう。アンジェラの感情を揺さぶる何かが必要である。樹神さんが言い始めたことだが嫉妬させればいいという。また、汐見が当て馬にならぬことは自らの口で認めてしまっている。だからといって妹を女性として、ぶっちゃけ性的に見るなんてできない。舞香は妹なのである。血が繋がらないからといって今更女性として意識しろなんて無理である。良い所は十個も言えないが、駄目なところならば百個は余裕な奴を性的に見れるだろうか。いや、見れない。


 だがそうしなければ世界は滅びる……可能性が高い。電脳世界における戦力は俺一人。アンジェラという戦力は大きな存在なのは間違いない。だからアンジェラを呼び起こすことは最優先事項だ。


 だからといって無理なものは無理なのである。


「これは重症ですねー」


「むしろ健全過ぎるぐらいだろう」


「多少不健全ぐらいが丁度いいんだよ」


「妹に恋慕する兄とか多少じゃ済まないだろう」


「少女漫画とかならよくあるシチュエーションなんだけどなー」


「参考にしてるビックデータを捨てて常識を学んできてくれないか」


 せめて妹が何か自慢できるところがあればよかったの。そうすれば純粋に応援もできた。興味を持ったのが俺にとっては妥協のできないアイドルという分野だったのがいけない。ピアノとかハイソな趣味があったらと思わなくもない。


「努力はするけど期待しないでくれ」と嘆息する。


「汐見に向かって努力とか嫌味ー?」


「虐めないでくれよ。妹をそういう目で見ると思うと気持ち悪くて」


「うわぁマイマイかわいそー」


 あまりにもどうしようもないのを悟ったのか汐見は「ところでさ」と話を変えようとする。


「アンジェラっていい名前だね」


「そう言って貰えるとアンジェラも喜ぶだろうな」


「神様に関した名前でそうつけたんでしょ。語源はエンジェル。うん、天使って神様と同一視してる土地もあるし神様っぽくていい名前だと思うよ」


「……俺もそう思うよ」


 アングリーとジェラシーが由来だなんてとても言えなかった。

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