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怪しい雲行き

 過疎地となったストリートの電脳に跳んだ。ビル街にあってはならない閑静さを手に入れたストリートはさながらゴーストタウンのようであった。足音さえ響き渡る街の中の歩き慣れた道順を辿っていく。


 いつもの場所には白ギャルの見た目をした女神様がいらした。地べたに座り、閑静になってしまったこの場所に想いを馳せているようであった。


 彼女も俺に気付き、手を振って挨拶を交わす。


「ビックリした。誰かと思ったよ」


「こんな辺鄙なとこ誰も来ないだろうからな」


「汐見たちの思い出の場所を辺鄙とかひどーい」


「そのおかげで二人きりでここにいられるからいいじゃないか」


「たしかに」


 壁に背をつけて地べたに座る汐見はポンポンとその横を叩いて、隣に座るよう促された。


「それでなんか用あったの?」


「いや、今朝から皆バタバタしてたのに汐見の姿だけ見えなかったから心配だったんだ」


「あらあら、嬉しいこと言ってくれるね」


「心配はいらなかったみたいだけどな。集中してるとこの邪魔なるから戻るわ」


 立ち上がろうとする俺の腕を汐見が掴む。


「せっかく来たんだから少しゆっくりしていきなよ、お客さん」


「集中の邪魔だろう?」


「ライブなんて慣れっこだよ、もう。それにせっかくだから訊きたいことあったの」


 妹か工藤さんに関することだろうか。それならば一緒にレッスンを受けているのだから直接訊いた方が早かろう。もしかしたら本人には聞き辛いことだろうか。


「アンジェラちゃん……だっけ。その子のこと汐見は知らなかったから知りたいの」


 そういえばアンジェラと汐見は一切の接点がなかった。


「何処まで知ってるんだ?」


 汐見は小悪魔がわざとらしく無邪気を演じた笑みをした。


「んーアンジェラちゃん目覚めさせるために汐見を当て馬にする……ってとこまでかな!」


 間違ってはいないが。だが伝え方というものがある。。誰だ。誰がそう汐見に伝えたんだ。


「誰にそう教えて貰ったんだ?」


「更科に」


 ようし、ポンポコリン。アイツは一回徹底的にしばく。


 汐見が「待った待った」と俺を落ち着かせるために肩を叩く。怖い顔をしていたのかもしれない。


「別に当て馬どうこうについてはなんにも思ってないってば。そういう商売やってたら妬み嫉みなんてあって当然だし、むしろ名誉なことだと思わなきゃ」


「アイドルってドロドロしてんだな」


「アイドルはトイレに行かないなんて幻想は捨てなきゃ。あ、でも汐見は行かないけどねっ」


「完璧なアイドルはここにいたのか」


「もっと褒め讃えろーっ! とまあ冗談はここまでにしといて話戻すけど、アンジェラちゃんってどういう子だったの?」


 別に隠すようなことではなかったため、アンジェラとの出会いから別れまでを教えた。聞き終えた汐見は「話してみたかったなぁ。あーでもこれじゃ当て馬としては失敗かも」とはにかんだ。


「やっぱさ、マイマイに頼るしかないかな」


 なんだな怪しい雲行きになってきた。

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