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利便性とセキュリティの高さは両立しない

 店への賠償は国が行うことで決着した。修繕費や慰謝料など貰うものさえ貰えれば文句のない店はそれで引いてくれた。雪女は納得いかなそうだったが店長である親に騒ぎ立てるなと説教されて渋々認めた。問題はそうは問屋が卸さないと言わんばかりの退魔師たちである。件の化物が里の中に現れたのだ。詳しい事情を聞かなければならないと居座ろうとした。樹神さん曰く、これを機に樹神さんへの覚えを良くしたいと考えているのだろうとのことである。だがそれに待ったを掛けたのは堂島さん。捜査機密を漏らすわけにはいかないと至極当然なことを仰った。


 そうなれば揉める。もはや事件よりも警察庁と退魔師の縄張り争いが主になっていた。どうするか決まらないうちに俺が何かをいう訳にはいかず、待つしかないのだがいつまで経っても何も決まらない。


 業を煮やした樹神さんが制止を聞かずに俺と北御門を旅館に連れ帰ることになった。


 さすが神様。一番偉いだけあった。


 こうして俺は勝手知ってる我が部屋に戻ることができた。普段使用していないベッドで昼寝しているポンポコリンを除けば、樹神さんと北御門が部屋にいるだけである。


「アイツ追い出した方がいいですか?」


 親指を背後でいびきを立てるポンポコリンを指しながら樹神さんに尋ねた。


「あーケイオスが現れたんやろ。ならそこらへんの第一人者には話聞いてもらった方がええな。敏樹、起こしたって」


 北御門がポンポコリンの肩を揺するがポンポコリンの眠りは深く、起きる気配がなかった。助けを求められ、仕方なく俺も参戦する。無論、優しく起こすつもりはなく尻尾を思い切り掴んだら飛び起きた。セクハラだなんだと騒がれたが樹神さんが仕事の話だとその尻尾を引っ張る。しゅんとして座る様は狸のくせに首根っこを掴まれた子猫のようであった。


「ケイオスが現れた目的はなんやったんや?」


「世界を滅ぼすために半年間休戦したいらしいです」


「なんやそれ。意味わからん。戦いたくないのやったら表に出てこなきゃええだけのことやろ」


 腕を組み、首をひねる樹神さん。


 北御門が言う。


「もしかしたら表に出てくるから見逃せっていう意味だったりしませんか?」


「んな馬鹿な話があるか」


「でもそうじゃないと意味が通じませんよ」


「そうだとしてもわざわざ戦いを避ける意味は薄いやろ。電脳で戦える人材はまだ一人しかおらんのやぞ。むしろ、無理してでも戦うべきとこやろ」


「そうですね……そんなこと百も承知のはずですが……」


 俺はポンポコリンの尻尾を引っ張る。


 ふにゃあと情けない声が響いた。。


「そもそも結界ってのがあるのにどうして里の中に入られたんだ」


「それはこの里の結界がゆるゆるだからだと思いますぅ。力を抑え込めば入れちゃう程度のものですしねぇ」


「プライベートスペースの結界は大丈夫なのか?」


 プライベートスペースにもポンポコリン謹製の結界が張られている。もしそれも力を抑え込めば簡単に入り込めるものなら妹の身に危険が及ぶ可能性が高い。


 しかしポンポコリンは胸を張った。


「大丈夫ですよぉ。プライベートスペースのはホワイトリスト方式の魂レベルで見分けるガッチガチに厳しいものにしてますからぁ」


「ホワイトリスト? なんやそれ」と樹神さん。


「ええと、ざっくり説明しますとぉ、許可を得た人だけが入ることができるのがホワイトリスト方式ですね。逆に駄目な人だけを弾くのがブラックリスト方式というんですぅ。里の結界はある一定以上の力を持った人を弾いたり、普通の人が迷い込まないようにするブラックリスト方式ですねぇ」


「はーっ色々あるんやな」


 魂レベルがどこまで見ているか専門家ではない俺の理解は薄いが、不特定多数が入らないことを想定するプライベートスペースならそれで問題ないのだろう。


 そう考えて思い至る。


「なあ、来月に控えてるライブなんだが、危なくないか?」


 樹神さんと北御門はいまいち不味さが伝わっていないのか考える仕草をする。


 その一方、ポンポコリンは全てを察したのかは慄いていた。

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