世間の反応
会見からさらに数日が経過した。
世間の反応は様々であった。
好反応だったものから並べると、チームメンバーに非がないこと、妹の現在の状況、桜庭が内通していること、の順になる。
チームメンバーに非がないこと。
これについては「まあ、あんな状況だし仕方ないよね」という同情の声が多かった。桜庭の要望通りであり、現場に全ての責任をおっ被せた政府という印象は覆せた。
次に妹の現在の状況だ。
これは良い反応や悪い反応があるというよりも驚きの色が大きく出たといえる。妹の現在の状況が特殊過ぎるせいであった。兄以外の記憶を喪失した状態、電脳世界に意識だけが取り残されている、身体は集中治療室、本人は呑気にアイドル活動。情報量が多く大半の人間が「お、おう」と理解を拒否した。もっとも俺に関しては妹のために頑張る兄という単純明快なものであったため、妹のファンからは「もっと頑張れよクソ兄貴」という叱咤激励を貰ってしまった。
いずれにしても妹の名を騙る他人という噂は払拭できた。今後ユニット結成の話をした際に、マイナスイメージを持たれる印象はないだろう。
さて、最も悪い反応があった桜庭の内通についてだ。
ただ悪い反応とはいっても前者二つと比べるとだ。
意見は二つに分かれている。
悪い反応は、様々な罵詈雑言で裏切り者だと罵られていた。記憶喪失者の身内などは文字通り、桜庭への殺意の籠った文字をネット上に書き連ねたりしていた。それが犯罪であると誰もが理解していたが、背景が同情できるもののため社会的に情状酌量の余地があるという雰囲気になっていた。
これは悪い反応を切り取ったものである。
何故か好反応もあった。
しかも関係のない俺が巻き込まれる形で。
奴のファンから擁護の声があがったのだ。何か理由があるに違いないと推理した。そうは言っても一ファンが推理できる情報などたかが知れている。なので俺を悪者に仕立て上げたみたいだ。そいつらがでっち上げた推理は論理の欠片もないものであったが、面白がられ、拡散し、一種の構文と化した。
もはやアンチが何をしようと心が揺らがない程度には鍛えられた俺であったが、桜庭のファン層と俺のアンチは被るのはちょっとした発見をした気分になった。桜庭ガチ恋勢が悪の道に踏み行ったのは俺のせいであることにしたいらしかった。
さて様々な反応が出揃ったが、今後の方針に支障をきたすものはなかった。
むしろ、今なら何をしても好感触で世間は受け止めてくれる気すらする。
俺に関すること以外ならば。
だから、あとはこちら側の問題なのである。
これさえ解決すればあとは俺の影をどう制御するかぐらいしか方針について問題は残らない。
そう妹が汐見のことを毛嫌いして、ユニット結成に断固として反対すること。
それをどう説得して、ユニット結成について納得してもらうかという問題である。