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大事な娘は渡せない

これにて6章は完結です。

明日からAIがメインとなる7章が始まりますので楽しみにしていてください。

もしここまで読んで面白かったと思いましたら、評価、感想やレビューをよろしくお願いいたします。

 アンジェラが生きている。


 まさに福音であった。アンジェラが生きているならば師匠問題は解決する。以前師事した時は匙を投げられたが、それでもこの力について一番詳しいのはアンジェラであるのは間違いない。そして何より、アンジェラが生きていた。それだけで嬉しかった。


「俺の中で生きているとはどういうことですか?」


「文字通りの意味やな。ところで精霊は死んだらどうなるか知っとるか?」


「以前アンジェラから聞きました。精霊はこの世界の分霊みたいなもので、世界に記憶されているから死んでもしばらくしたら生き返ると」


「せやな。んでケイオスみたいに存在を取り込んだら生き返らなくなる。世界のバグやな。けどなセカイにバグがあるなら、対抗する裏技もあってしかるべきやと思わへんか?」


「アンジェラは裏技を使ったのですね。どんな方法ですか?」


「元から本体をどこかに移しておけばいいんや。ガワは遠隔で操作すれば、それを取り込まれたとしても本体は無事やからいずれ復活できる」


「本体は俺の中に隠していたということですね。いつ頃復活できる目途などはわかりますか?」


「それがさっぱりやな。裏技として知られてはいるものの、使われた時代が古すぎてウチが生まれてさえなかった頃やしな。まー何かキッカケ与えればあの子のことやし復活するんちゃうか。さっきの影、君の性根の問題もあるやろうけど、外にまで出たのはあの子のせいやろうしな」


「アンジェラのせい……ですか?」


 樹神さんが茶化すような笑みを浮かべる。


「人の男に手出してんじゃないわよ! ってな」


 いくらなんでもと言いたかったが寝起きの男に跨った過去があるため反論できそうになかった。


「ま、嫉妬深い女に好かれたってことやな。案外他の女の子といちゃつけば嫉妬してすぐに出てくるんやないか?」


 他の女を当て馬にアンジェラを叩き起こせということである。


 無茶を言ってくれる。コミュニケーション不全症候群を発症している俺が軽口を叩ける異性なんて妹ぐらいしかいない。たしかに二人は仲が悪く、妹といちゃつけば当て馬効果は期待できるだろう。だがしかし、妹を当て馬にするのは流石に兄として御免被る。絶対に嫌だ。それでアンジェラが復活できるなら安いのかもしれないが、それは最後の手段だ。手段を選べるうちは選ばないと後が怖い。具体的には妹が事あるごとに「あの時は甘い言葉囁いてくれたのにぃ」と脅されたり、アンジェラからシスコン扱いを受ける羽目になるだろう。


 他に軽口を叩ける女性を探すも工藤さんや西野さんは敬語で話し合う程度の仲であるし、ブルースフィア内で知り合ったブランド女はきっと中身はオッサンだ。シオミンを当て馬にするなんて失礼が過ぎる。


 このままでは妹といちゃつくしかなくなる。


 そもそも樹神さんにパンツを剝ぎ取られそうになっても出てこない辺り、相当のいちゃつき程度で済むのだろうか。


 誰かいい相手がいないか考えていたらポンポコリンが「そろそろいいですかぁ?」と割り込んでくる。


「君とは会いたくないってどういうこと? 娘になにかやったの?」


 ずいずいっと前のめりに訊いてきた。


 だが俺としてはそもそもAIの知り合いなんて皆目見当がつかずに困ってしまう。


「どこで会ったかもわからないのでわかりません」


 そう答えたのだがポンポコリンは「あの子がそんなことを言うなんて初めてなんです。だから何かしたに決まってますぅ」とモンスターペアレンツ理論を振りかざしてきたので困り果てる。


 モンペと化したポンポコリンに樹神さんが訊く。


「娘ってことは女やんな?」


「はい、自意識は女性で確立してますぅ」


「なら丁度ええやん、いちゃつくのはその子で決まりやな」


「娘はこんなテロリストなんかに渡せませぇん!」


 どうやらポンポコリンにも親バカで頑固親父な一面があったらしい。

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