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てえてえじゃない

 妹に連れられてきた先は、とあるオンラインゲームの電脳であった。


 昔から人気のあるジャンルのゲーム。銃で撃ち合い、最後の一人まで残るまで戦い抜くタイプのオンラインゲームだ。昔からとの違いは、個人用アバターの使用可否だろう。昔はゲーム内で用意されたものしか使用できなかったらしいが、メタバースが主流になった時流もあり、電脳世界で使用される一般的なアバターならば使用できるようになった。無論、ゲームごとに細かい規格の違いはあるが、よっぽどでない限りは通るらしい。


 よっぽどの例でいえば、背が高すぎるアバターだったり、ごてごての装飾が多すぎたり、全身が余すところなく発光していたりなどがある。ゲーム性の問題や処理負荷的な問題など俺には想像が及ばない多種多様な問題があるのだろう。


 妹のアバターもその類から漏れなかったらしく、電脳のロビーへ入った途端、煌びやかな衣装は迷彩服となっていた。


 俺の方はというと、広く流通しているモデルだったためか変化はなかった。


「うへーせっかく可愛かったのに、こんなん酷くない?」


 ぶーたら文句をつける妹の無視して人だかりを探す。桜庭のことだ。どうせいつも通りのイケメンアバターで入ってきて、歓声を浴びているのだろう。そう思って周囲を見回したら、やはりいた。なんならファンサまでしていた。


 ちょっとした握手会だった。握手を終えた人が横を通り過ぎた時「サクラバ、今日は新人さんとのコラボで来たんだってー」と話していたのを聞いた。


 記憶を失った幼馴染とやらのために、オフ用のアバターで入ってくるのを心のどこかで期待していたのだが、予想は的中し、期待は裏切られた。


「はーサクラバさんって人気あんだね」


 隣でその光景を見ていた妹は言った。


「そういえば桜庭のことを最初に見た時にちゃんとプロゲーマーって覚えていたが、記憶喪失はどうなった?」


「サクラバさんのこと知ったのこうなったあとだから記憶喪失云々は関係ないかな? もしかしたら忘れてからもう一回知ったのかもだけど」


「知る機会なんてあったのか?」


「詳しくはあとで話すつもりだけど、その界隈に興味あったんだ」


「初耳だな」


「恥ずかしくて言ってなかったしねー。……って今私のこと妹って認めた上で言ったよね!」


「気のせいだな」


「このこのー本音言えよー。妹とまた話せてお兄ちゃん嬉しいですって言えよー」


 腕にしがみついてくる妹を引き離そうとして攻防を繰り広げ、周囲から失笑を買っていると、いつの間にか桜庭が呆れ気味に俺らの前に立っていた。


「オレよか目立ってんじゃねーよ。やっぱ素で愉快な奴見てると羨ましいわ」


「偽物、褒められてるぞ。喜べよ」


「総司、お前に言ってんだよ」


「それ俺に対しては誉め言葉じゃないぞ」


「けなしてるんだよ、馬鹿め」


 こんな軽口を叩き合ってると、周囲から「あのサクラバさんが気を許しているアイツは何者?」とか「あの気難しいサクラバさんが気を許してる相手との絡み、てえてえ」とか聞こえてきた。


 間近で見ていた妹からは「軽口を叩き合える友達ができたんだね……」と涙ぐむ仕草をしやがった。

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