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6話・そして7年後

 そして7年の月日が経ち、わたしは17歳となっていた。ジュリエットには会えず、許婚のティボルトとは交流が途絶え、許婚とは名ばかりの関係となっていた。


「あ~あ。あれはどうにかならないものかね? ジオン。頭が痛いよ」

「あれはそう簡単には収まらないだろうな。ロマーノ」


 父の友人である、ロマーノ小父さんの訪問は愚痴から始まる。食堂に父と共に姿を見せた小父さんは、先に食事をしていたわたしとベルサザのお皿に目を留めた。


「おお、それは上手そうだな」

「お父さま、お帰りなさい。ロマーノ小父さま。いらっしゃい」


 ロマーノ小父さまはヴァローナ大公殿下で、我が家にちょくちょくお忍びでやって来る。白髪のヴァローナ大公さまは御年38歳。父と同い年の大公さまは、気苦労が多いせいなのか、元は黒かったという髪が白髪となっていた。

 大公さまと父は非常に仲が良い。プライベートではお互い名前で呼び合う仲で、時々こうして我が家を訪れていた。大公さまにとって、我が家は息抜きの場所となってもいるようだ。

 何度か大公さまの訪問を受けるうちに、いつしかわたしは愛称で呼ばれるようになり、わたしも大公さまを「ロマーノ小父さま」と呼ぶようになっていた。


「これはロザリーが作ったのかい?」

「そうです。小父さまのお口に合えば良いのですけど」


 ロマーノ小父さまと話をしていたら、ベルサザが慌てて自分のお皿を両手で抱え込む。誰も取らないのに。と、呆れる側で小父さまは苦笑していた。ベルサザも大公さまとは顔馴染みとなっているので、無礼を問われることはなかった。

 わたしは唐揚げと、ポテトフライをお皿に盛り付けて父や大公さまの前に置いた。これは前世でわたしが得意としていたものだ。唐揚げは前世の祖母直伝の味付けで自信がある。


 男爵家の我が家には、通いで来てくれている使用人一家がいた。ジェモさん一家だ。ジェモさんは馬丁、奥さんのセラさんが料理人兼、家政婦。娘のマエラが侍女をしてくれていた。その一家の大黒柱であるジェモさんが突然ギックリ腰となり、そのジェモさんの看病にセラさんが付き添うことになったので、一人娘のマエラだけが現在来てくれていた。

 マエラ一人でこの屋敷の掃除、洗濯など家事一切を任せるのは大変だと、手伝いを申し出たら、初めはとんでもないと拒まれた。マエラとしては、貴族のご令嬢というものは、使用人に傅かれて当たり前。使用人と同じように掃除、洗濯、料理をするなんてあり得ないと思っていたらしい。


 でも、その横で何食わぬ顔をしてやって見せたら絶句していた。わたしにとっては、家事は出来て当たり前。前世でも祖母に習って一通り出来たし、今生では亡き母が教えてくれていた。前世のことは口に出来ないけど、「5歳の時に亡くなった母が平民で、家事を教えてくれた」と、話したことでさらに驚かれた。


 この世の中、平民にとってお貴族さまと出会い、結ばれるなんておとぎ話のような話だ。滅多にないことだ。前世で言うと、一般女性がどこかの会社の社長や、御曹司に見初められるという感じだろうか?

そのような話が身近にあったと知って、マエラは目を剥いていた。

 それでもわたしが家事を一通り出来ると知って、感心していた。そのうち、彼女の働く時間帯などから食事は主にわたしが用意することになった。

 さすがに馬の面倒は、わたし達ではみきれないので、父やベルサザにお願いしている。セラさん達が復帰するまでは、わたしが料理を担当することに決まった。


 ベルサザは我が家の下宿人。黒髪に蜂蜜色の瞳をした、爽やかな雰囲気を持つ若者で、わたしより2つ年上。父が総団長を務める青い鳥騎士団に、6年前から入隊していた。彼は地方の貧乏貴族の三男坊らしく、ひょうひょうとしていて、当時騎士団の独身寮の空きがなかったことから、我が家に下宿することになったのだけど、空き部屋が出来た今も、引っ越しが面倒くさいなどと言って、我が家にずっと居着いている。


 童顔のせいか実年齢よりも、やや年下にみられがちなのを、気にしているらしい。


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