表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/38

26話・明かされた真実


「おまえ達は何を考えているんだ」

「どうして駄目なの? ティーボはロザリーと婚約破棄したじゃない」


 ティボルトはわたしと婚約破棄したので、その彼と自分が結ばれても、何も問題はないだろうと彼女は言った。婚約破棄という言葉の重みを軽く考えているようだ。その為に叔父が、何度も父やわたしに頭を下げた事や、支払った慰謝料とか全然気にしてなさそうだ。


「ジュリエット、あなたは今、モンタギュー家のロミオさまと婚約話が持ち上がっているところなのですよ」

「それはお母さまが勝手に進めた話でしょう? わたしは嫌だって言ったわ。ティボルトと結婚したいってお願いしたじゃない」


 諫めるように叔母は言ったが、ジュリエットは眉を顰めるだけだった。貴族なら結婚は惚れた腫れたの話ではなく、政略ありきのもので、結婚相手は親が決めるもの。それはキャピュレット家の嫡女の、ジュリエットも分かっているはずなのに、恋に盲目状態では聞き入れる気もなさそうだった。


「ジュリエット」

「お母さまなんて嫌い。それ以上、彼との仲を邪魔するのなら死んでやる」


 ジュリエットが胸元から出した小瓶を、グイッと煽ろうとする。その腕を横からロミオが掴んで止めた。


「なんで邪魔するの?」

「一応、あなたはまだ私の許婚候補なのでね。これはまた厄介なものを手に入れられたものだ。どこで購入したか分からないけど劇薬だよ。飲んだら即座にあの世行きだ」

「うそ。これは仮死状態になる薬だって言われて……」

「誰から購入したのかな?」


 ロミオは彼女から小瓶を取り上げながら聞く。ジュリエットは青ざめながら打ち明けた。


「分からない。アニーに買って来てもらったから。ティボルトともしも結ばれないのなら、死んでしまいたいと言ったら彼女がいい案があると言っていたの。お父さま達に認められなくて行き詰まったりしたら、この薬を飲めば良いって。仮死状態になる薬だから、死んだと思われて埋葬されるかも知れないけど、その時にはアニーが必ず墓を掘り起こして助けてくれるって言っていたから、だから……」


 ジュリエットの話を聞いて皆が呆れた。この国では人は死んだら土葬になる。死体を棺桶に入れて埋葬されることになる。ここまでジュリエットがお馬鹿さんだとは思わなかった。アニーのことを信頼し過ぎではないだろうか? もしも、アニーが裏切って墓を掘り起こさなかったら、ジュリエットは生き埋めにされていたかも知れないのだ。

 アニーに渡された薬は仮死状態ではなく、命を奪う劇薬だったと知りジュリエットは震え出した。やっと杜撰な計画で命の危険があったことに気がついたようだ。

物語の中でもすれ違いのまま、ジュリエットとロミオは命を絶っていたけど、もう少し周囲が見えていれば死なないで済んだ話だったようにも思う。


「この辺りで本当のことを打ち明けては如何でしょう? キャピュレット伯爵夫人」


 ロミオが促すように叔母を見た。叔母は両手を胸元で組んでいたが、重く閉ざされたパンドラの箱を開けるかのように口を開いた。


「……あなた達は兄妹なの。ティボルトは私がお腹を痛めて産んだ子なのよ」

「……!」


 叔母の言葉は静まりかえった修道院内に重く響いた。ジュリエットは「嘘」と、呟き、ティボルトは驚愕していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ