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22話・ロミオとベルは知りあいなの?


「随分とロミオさまは腹黒くなったものね。10年前は悪童として名が知られていたのに」

「ああ。あれ。あれはぼくじゃないんだよね」

「……! あなたじゃないって、じゃあ、モンタギュー家の悪童ロミオと呼ばれていたのは誰なの?」


「ぼくの兄なんだ。兄はあの頃、ぐれていてね、ぼくの名前を騙って悪さをするものだから、父は毎日怒っていたし、母は泣いていた。でも、ある日を境に急に大人しくなって、父に田舎に里子に出されたんだ」

「そうなの。道理で悪童ロミオの名前が聞こえなくなった訳ね。今も元気でやっているの?」

「元気なようだよ。そのうち、きみには会いに来るんじゃないかな」

「……?」

「だって兄は、きみのおかげで更生したみたいだから」


 ありがとうと、ロミオは言った。軽い男のように感じていたけど案外、しっかりしていそうだった。


「こんな時に言うのもなんだけど、あなたはジュリエットに会って惹かれるものはなかったの?」

「全然、何とも思わないよ。逆にああいうタイプは好きじゃない。大体、女性じたい興味ないし、苦手だ」

「え?」

「まあ、その。そこはあまり突っ込まないでくれると有り難いな」


 ロミオの目が泳ぐ。もしかして女性に対して気のあるような軽い態度を見せているのは、わざとなのかもと思った。彼は同性愛者? この世界は、同性愛者寛容ではない。彼にとって知られたくない秘密なのは確かだ。


「わたしもね、あまり父の実家の立場には触れて欲しくない事なの。他の人に言わないでもらえると助かるわ」


 ロミオにお互い、内緒にしようと持ちかけると「さすがだね」と、言われた。


「兄が気に入るはずだよ。あなたのことを姉さんと呼べる日が来るといいな」

「それはどうかしら?」


 ロミオが気前よく、お土産にケーキの詰め合わせを買ってくれたので、礼を言い店を出ると、なぜかベルサザが待っていた。


「ロミオ。これはどういうことだ? なぜロザリーと一緒にいる?」

「嫌だな。そう怖い顔しないでよ。ぼくは何も言ってないよ」

「本当か?」


 ロミオにベルサザが食ってかかる。二人とも見知った仲のように思われた。


「そんな怖い顔していると、彼女に嫌われるよ」

「放っておけ。おまえには関係ないだろう?」

「どうしたの? ベル。よくわたしがここにいるって分かったわね」

「ロザリー達が座っている席は通りに面しているから、ガラス越しに見えた」


 外から見えていたらしい。ベルがふて腐れたように言ってくる。


「ねぇ、ベル。これロミオさんに買ってもらったの。家に帰ったら一緒に食べるでしょう?」

「お土産? 食べる」


 ロミオに買ってもらったケーキの入った箱を見せると、ベルの機嫌は少し良くなったらしい。ロミオがにやにや笑う。


「二人の邪魔はしないよ。ロザラインさん、例の件、考えてみてよ。じゃあね」

「ご馳走様。ありがとう、ロミオさん」

「ロミオでいいよ。ぼくもロザリーって呼んでも良い?」

「あまり調子に乗りすぎるなよ。ロミオ」

「ハイハイ。怖いなぁ。もう、ぼくはもう行くね」


 ロミオは苦笑いしながら手を振って去った。ベルサザが黙って、わたしが手に持っていたケーキの箱を持ってくれた。


「ロミオとベルは知り合いなの?」

「ロミオ?」

「あ。ロミオさん……?」


 ロミオと親しそうに感じられたから聞いたのに、ロミオの名前を呼んだら、横から睨まれので言い直した。


「あいつとはまぁ、切っても切れない仲と言うか……」


 ベルサザが言い淀む。どうしたのかと思えば、彼が何かを注視していた。その視線の先を追って見慣れた女性の後ろ姿とぶつかった。


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