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2話・悪童ロミオとの邂逅


「ああ。ティーボ。ティーボ。どうしてあなたが許婚なの?」

「……それはご当主さまに聞いてくれ」


 数ヶ月後。

 キャピュレット家当主である叔父の謝罪と、ティボルトとの婚約を受け入れたわたしは、頭の怪我が直ってから、許婚としてちょくちょく我が家に通ってくるようになったティボルトを、そうやってからかうようになっていた。


 その度にうんざりといった様子をティボルトが見せ、父は「そう虐めてやるな」と、苦笑いをする。別に虐めていたわけではなく、許婚のわたしよりも、父に夢中のティボルトの態度が面白くなかっただけである。叔父が決めたわたし達の婚約は、そう悪い関係ではなかった。 


 父はわたし達の住むヴェローナ公国を治める、大公殿下お抱えの「青い鳥騎士団」の総団長をしている。父の剣の腕前は相当なもので、他国にも「剣聖」として、名が知られているらしかった。

ティボルトにとって父は憧れの人で、初めて会った日には、「おまえのお父さんって、あの剣聖のジオンさまだって? すごいな」と、言われていた。思いがけない形で始まった婚約関係だけど、わたし達は仲よくやっていた。


 それから3年は何事もなく過ぎていった。その間、わたしに出来たことと言えば、従妹のジュリエットを愛でることと、モンタギュー家のロミオの同行を探ること。とは言っても、たかが子供の身でやれることなんて限られている。嫌がるティボルトを連れて、モンタギュー家の前に行くものの、中に入る手段が思いつかずに辺りをうろうろして終わった。

 そうこうしているうちにわたしは10歳となり、ティボルトは13歳となっていた。この国では14歳で成人とみなされる。変声期を過ぎてティボルトは、大人の男性へと移行しているときであり、お兄さんらしくなってきた。


 そんなある日のこと。

父に頼まれた買い物をしていたわたしは、ティボルトとその友人のメテオが、不良少年達に一方的に痛めつけられているのを見つけた。大勢の少年達は、ティボルト達を取り囲み、殴ったり、蹴ったり木剣で叩いたりしていた。それを見て黙って見ていられなくなった。


「あんた達、何してんのよ!」

「誰だ? おまえ」

「わたしはロザラインよ。あなたは?」

「俺はロミオだ」


 ティボルト達の間に割って入ると、リーダー格と思われる金髪の少年と目があった。少年は「へぇ」と、あざ笑った。


──そうか、おまえがロミオか。


 わたしは噂の不良少年ロミオと、初めて対面した。まるで長いこと探し求めていた、親の敵にでも会ったような、変な高揚感があった。

 その相手とじっくりと見合う。少年は前髪で顔の半分が隠れていたが、露わになっている片目でこちらをねめつけてきた。眼光が鋭く怯みそうになったけど、ここで前世の祖母の言葉を思い出した。


──目を反らしたら駄目だよ。大きく息を吸って胸を張った状態で相手をじっと見返してやんな!


 それは演技指導の一部で、前世で演劇のことで躓くと、祖母によく相談していた。ある芝居で喧嘩を売るシーンだったような気がする。

わたしはそれを思い出して、負けじと見返した。


「ば、ばか。なんでここに来た。ロザリー、下がっていろ」

「ティボルト。おまえは、女に庇われないと何も出来ないのか? この弱虫め」


 慌ててティボルトは、わたしを自分の背に匿おうとする。それを馬鹿にするロミオが許せなかった。こんなやつ、あんたで十分だと思う。


「そういうあんたは卑怯者ね。一人では何も出来ないから、群れたがるんでしょう? 弱虫なのはあんたの方よ」

「なんだとっ」

「ロザリー、止せ」


 ロミオはわたしの言葉に、虚を突かれたように目を見張った。ティボルトは、ロミオを挑発するわたしを止めようとした。


「生意気な女だな。まあ、いい。女相手にムキになっても仕方ないからな。おら、おまえらもう行くぞ」

「ちょっと待ちなさいよ、あんた」


 聞き捨てならない気がした。女なんか自分の相手にすらならないと言われたような気がして、苛立ちを覚えた。


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