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19話・ジュリエットとロミオが婚約?


「いやあ、お疲れ、お疲れ」

「お疲れさまでした──」

「カンパーイ」


  三日三晩続いた花祭りは無事に終了した。それから数日後。父の帰宅に浮かれた様子で大公さまが引っ付いてきたので、ベルサザとわたしの4人で夕食となった。

 今晩のメニューは、若鶏の照り焼きにトマトスープ。香草炒め。それを前にして4人で地ビールの入った杯を掲げて祝杯をあげた。


「今年の花祭りは大成功だ。ロザリーのおかげだよ。ありがとう」

「ロマーノ小父さまのお役に立てて良かったです」

「競技大会も好評でね、モンタギュー家や、キャピュレット家の当主からもぜひ、また来年してくれないかと要望があったよ。ロザリーのお手柄だ。何かご褒美を出さなくてはな。何がいい?」

「別にご褒美なんていらないですわ。これで街の皆が安心して生活できて、父や青い鳥騎士団の皆さんが、両家の争いに振り回されることなく、暮らせれば他には何もいりません」

「さすがはロザリー。無欲だな」


 ロマーノ小父さまは感心したように言うが、別にわたしは無欲なんかじゃない。確かに反目し合う両家の騒動に胸を痛めていた小父さまや、父の苦労も報われて欲しいと願っていたけど、ジュリエットがティボルトと懇意になってしまったのは、本来結ばれる相手だったロミオと出会ってないせいかもしれないと思い、早くストーリー通りに出会わせないといけないのではと、焦燥にかられたせいだ。

 わたしはその為に、花祭りを利用したようなものだ。人に誇れることはしていない。


「ロザリーがキャピュレット家の狂犬なんかと婚約などしてなければ、わしの甥を勧めたのになぁ。実に惜しい」

「小父さま。ありがとう」


 大公さまはわたしのことを買いかぶりすぎだ。事が上手く運んで浮かれているのだろう。わたしがティボルトとの婚約破棄を望んでいることを知っている父は苦笑し、ベルサザは黙っていた。


「そう言えば今日、キャピュレット家から、モンタギュー家に婚約の打診をしていたな。そうなると一人娘のジュリエットを、モンタギュー家に嫁がせる気でいるのかな?」

「ジュリエットを嫁がせる……?」


 ロマーノ小父さまの言葉に、父は信じられない顔をしていた。叔父がまさかそのような行動をとるなんて思いもしなかったからだろう。


「キャピュレット家当主は気が進まなそうだったが、当主夫人から是非にと、モンタギュー家当主に持ちかけていたんだよ。両家の和解のためにもどうかと」

「えっ? ゾフィーが?」


 ゾフィーとは、キャピュレット家当主夫人である叔母の名前だ。父や叔父とは幼馴染みだったので、子供の頃から親しくしていたと、父からは聞かされていた。

 あの叔母がジュリエットを、長いこと敵対関係にあったモンタギュー家の嫁に出すことを勧めた?


「何かの間違いじゃないか?」

「いや、間違いない。わしの目の前でキャピュレット家夫人が話したからな」

「……!」


 父と目があった。現在、ジュリエットは部屋で監禁状態にある。ティボルトとの仲が叔父に知られたのだ。花祭り前日に会ったジュリエットらには、花祭りが終わったら婚約破棄の件を父に話すと言ったが、実はすでに父には話してあった。父は二人が親密な仲だと打ち明けると、「娘が蔑ろにされた」と、怒り心頭で叔父のもとへ乗り込んで行った。


 叔父は父から話を聞き、初めは「誤解だ。あれは兄妹のようなもので」と、なかなか信じなかったようで、父が「では娘の素行調査をしてみろ」と言ったことで、半信半疑で調査機関を介して調べたらしく、そこで上がってきた報告書を見て卒倒しかけたそうだ。

 叔父としては愛娘に悪い虫がつかないようにと、子飼いのティボルトを護衛として宛がったのに、それが裏目に出てショックを受けたらしい。


 叔父は憤り、叔母は青ざめて気を失い、二人は引き離された。ジュリエットは部屋に監禁され、ティボルトは護衛の任を解かれて実家に謹慎になっている。

 そのジュリエットを、かつての宿敵に宛がおうとする叔母の気持ちは理解出来なかった。修道院に行かせるよりは良いと思ったのだろうか?


 いくら何でもそれではモンタギュー家に失礼ではないだろうか? 父を窺うと「あれは、何を考えているんだ?」と、呆れていた。


「それでモンタギュー家当主は、その返事には何と?」

「少し考えさせて欲しいと、言っていたな」


 ロマーノ小父さまの言葉に、父はお酒の入った杯をくいっと煽った。飲んでないとやり切れないと言った様子だ。わたしも複雑だった。


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