表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/38

13話・あれで名門伯爵家のご令嬢とは嘆かわしい


「何なの? あれ。見ていて腹が立ったわ。ロザリーのこと、何だと思っているのかしら?」

「しかも初対面の異性に対し、馴れ馴れしいですよね。あれで名門伯爵家のご令嬢とは嘆かわしい。コンテストの時は猫を被っていたようですね」


 レノアが怒ったように言えば、滅多に人の悪口なんて言わないハンスさえ呆れたように言っていた。猫を被るとは言い得て妙だと思う。わたしは叔母から「泥棒猫の娘」と当てつけられてきたのに、ジュリエットの方は「猫を被る」だなんて面白い。


「でも、ベルの返しは最高だったわよね。笑いそうになっちゃった。真顔で切り返すから」

「ロザリーが馬鹿にされて頭にきたからな」

「ありがとう。ベルに助けられたようなものね。わたし一人だったら何も言い返せなかったかも」

「心残りはないか?」

「ないない。思っていたこと言ってやれてスッキリした。いつかは言ってやりたいと思っていたけど、そう思う日に限ってなぜか会えなかったしね」


 ティボルトとはキャピュレット家当主が決めた婚約とはいえ、それなりに仲良くやっていこうと思っていた。でもあれはない。人の許婚にちょっかいを出しておきながら返す? 

 ジュリエットの「ティボルトを返すから」発言には反発を覚えた。人は物じゃない。人の心はそう簡単に切り替えられるものでも無いのに、彼女はティボルトをあっさりと手放そうとした。彼女にとって彼は、簡単に取り替えのきくアクセサリーのようなもの? 理解不能だ。

 いつからあんな子になってしまったのだろう? 残念でならない。


「それにしてもあのティボルトは何なの? ずっと棒立ちしちゃってさ、許婚が批難されているのに庇いもしないで」

「仕方ないわ。彼はジュリエットの護衛だから、彼女の機嫌を損ねたら立場がないしね」

「それでも何とか許婚の為に出来ることぐらいあるでしょう? あれではまるで正妻と愛人の間に挟まれたどっちつかずの夫みたい」

「レノアったら何なの、その例え」

「私が読んだ大人向けの恋愛小説の中に、そう言った描写があったのよ」


 レノアは面白いことを言う。吹き出すと、「本当に本に書かれてあったんだからね」と、念を押された。そんなレノアが可愛く思えるらしく、ハンスは彼女の横顔を微笑んで見つめていた。


「あ~あ。暑くなってきたわ。あー、喉渇いちゃったなぁ。レノア、これから茶店でも行かない?」

「いいね、皆で行こう」


 従妹の運命の恋のお助けにはならなかったけれど、友人の恋は上手く言って欲しいと願って、わたしはレノアの手を引いた。後ろではベルサザとハンスが肩を並べて何か話している。その何気ない日常が、今のわたしにはとても有り難く感じられた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ