エピローグ 俺はあいつの上司兼親友
シル視点です。
ちょっと長い。
偶然見つけた。
その日はなんだか力がみなぎり、やけに感覚が冴えていたことを覚えている。
俺は時空の亀裂を発見し、それに触れた瞬間に異世界へと飛ばされた。
このようなことは初めてで、俺でもどうなるかわからなかったのでひやりとした。
そして飛ばされた先の世界を見て驚いた。
そこには不思議なものがたくさんあった。
人を乗せすごい速さで地面を走る機械。馬が引っ張っているわけでもないが、何を原動力としているのだろう?
他にも空を飛ぶ巨大な機械まであるのだから驚きだ。
俺が飛ばされた場所は人間がたくさんいた。その見た目はこちらの世界と大して変わりはなかった。
ただ人間たちは何やら薄っぺらな長方形のものを指でつついたり、耳にあてがってひとり言を話していたり、食べ物にかざしたりと不思議な行動をとっている者が多かった。
あれは一体何をしているのだ? すごく気になったが、近くにいた奴に話しかけてもスルーされてしまう。
なるほど、俺の姿は他の者には見えていないらしい。尋ねることは難しいみたいだ。
考えるに、どうやら魂だけがこちらの世界に引っ張られてきたようだな。
そうなると魂と身体が離れている時間は長くはないだろう。
強制的に戻る前にもう一度ここに来れるようどこかに印をつけたいところだが……。
まだここに来て少ししか経っていないが、俺は自分の創った世界と全く異なるこの世界に興味がわいていた。
ああ、建物の中も気になるな。
時間はないがもしかしたら二度と来れぬかもしれない。あそこに入ってみるとしよう。
入ってみた部屋は薄暗く、空気がよどんでいた。
入り損だったな、と思った時、目の前にある大きくて黒い四角のものが気になった。
なんとなくそれに手を伸ばすとすぅっと引っ張られ、俺はその四角の中に収まってしまった。
どうやらこいつと相性が良いみたいだな。俺はこいつに世界を繋ぐための印をつけることに決めた。
俺が印をつけ終わったとき、床から何かがのそりと起き上がった。
どうやらここの住民のようだ。
ふと、そいつと目があった。
はじめはこの物体を見ているのだと思ったが、そいつは確かに俺を見ていた。
『おいお前、なんなんだ一体。そんな辛気臭い顔をして』
その顔があまりにも酷かったもので、俺は自然とそいつに話しかけていた。
そいつは俺が話しかけてきたことに驚き固まってしまったが、しばらくすると恨めしそうに俺を睨んできた。
どうやらこの四角の物が媒介になり、俺の姿や声をこいつに届けているらしい。
しかしこいつ話を聞いてみると、こんなに不思議なものが溢れた世界なのに、他人のせいでこの部屋から出ることができないなんて、不憫なやつだ。
俺の国ならそんな顔はさせないのに。
『……ふむ、でもそうだな。もしお前がこちらの世界で人生をやり直したいと思うのなら手引してやらんでもない』
俺は何を言ってるんだろう。
こいつの生気のない顔を見ていたら勝手に口走っていた。
第一、そんなことできるかもわからないのに……いや、印もつけたしそうだな、風の力が強まる日になら俺ともう1人くらい連れ帰ることは可能か……? あちらの世界へ戻れば新たな生を授けることもでき……。
うん、できるな。
こいつもさっきの顔より俺を訝しんでる顔の方が幾分かマシだな。
「……そこなら本当に楽しい人生が送れる?」
掠れた声を搾り出すように問いかけてきた。
こいつ、俺の言うことを信じられないのか?
……違う、不安なんだな。
『次の人生の中で、奇跡的に俺に会うことができたのなら、その時は特別に友としてお前のことを迎え入れよう。
俺の友になれば永遠に楽しませてやる』
ふん。はじめにこうやって目標をたてておけば、充実した人生にはなるだろう!
ま、俺に会える確率は低いだろうがな。
「……君ともしともだちになれたら、一緒にテレビゲーム、できるかな?」
テレビ? よくわからんがゲームってことは何かの遊びだよな。
神である俺と遊びたいなんて、おもしろいやつだな。
『まっ、俺に簡単に会えるとは思うな。ヒントをやろう。シルリヤ=ヴァ=ウィンドという名を覚えておけ。俺の名だ。俺の国に来たら人生がつまらんとは言わさんぞ。
では⸺またな』
どうやら時間切れのようで、俺は引っ張られるようにしてまた次元を渡った。
元の世界に戻りあの世界へつけた印を確認すると、ちゃんと機能してくれそうなので安心した。
その後俺は約束通り、力の強まる日にあちらの世界へ行き、あいつを連れ出した。
その際、俺はあいつの魂が抜けた身体を借りることにした。もっとこちらの世界のことを知りたかったのだ。
そしたらテレビゲームについても知ることができるだろうと思って。
風の国で新たな人生が始まったあいつのことを俺は随分気にかけた。あいつに楽しい人生を約束した以上、不幸にはできないからな。
あいつは中々危なっかしくて、ベッドから転げ落ちようとしたり、何もないところでつまづいたりとどんくさいやつだった。
その度に俺はこっそり風を送り大怪我をしないように見守った。
頻繁に風を送った影響で、風もえらくあいつのことを気に入ったのは予想外だった。
だがお陰で俺が風送りをしなくても勝手にあいつの周りに風が集まり見守ってくれるようになった。
これなら心配ないだろうと思い、俺はあちらの世界へしばらく集中することに決めた。
まず、あの世界でのあいつの位置づけについて確認した。
あの時はそんなことと一蹴してしまったが、中々ややこしい状況におかれているようで、俺が奴に話しかけたこの部屋が、唯一休める場所のようだった。
俺はまず部屋の中の物から色々なことを学んだ。
テレビゲームというものには思いの外すぐにたどり着いた。
俺が入り込んでいた黒い物体のことをテレビと呼び、それにつなげて遊ぶ機械のことをゲームと呼ぶらしい。
あいにくこの部屋にはテレビしかなく、ゲームというものの現物を見ることはできなかった。
俺は時間をかけてこいつの人生の修復にかかった。
学校を卒業するための行動、1人で生きる準備、はじめは苛立つことも多かった。だが年齢が進むにつれできることは増えてきた。
国を創るときと同じようだ。丁寧に、丁寧に環境を整える。
ようやく状況が落ち着いたので、俺は久しぶりに成長したであろう風の国の方のあいつを見に行くことにした。
置いて行かれた身体は中身が変わればなんとでもできるが、心の傷の修復は難しい。
もしかしたら新しい世界のギャップから心細くなり、俺に逢いたくなっているかもしれん。
王宮の風送りの間に立ち、あいつの暮らす村を脳裏に映し出した。相変わらず麦畑の広がるのどかな町だった。
そこには16歳になったあいつがいた。
学校で友人たちに囲まれ楽しそうに笑っている。
その姿を見るとなんだか胸がむずむずした。
なにかの呪いか? と辺りを警戒したが、どうやらそうでもないらしい。
気にしないようにしてあいつの観察を再開する。
あいつは友人とも両親とも関係は良好で、誰が見ても幸せそうに見えた。
はじめはその様子に満足感を得ていたが、段々と俺は不安を感じた。
あいつはテレビゲームがなくても幸せなのか? スマホは? スナック菓子は? 冷房の効く部屋で音楽を流してのんびりと時間を過ごすことは……?
あちらの世界はあれだけ便利なのだ。あいつはまだ幼いから楽しそうだが、いつか帰りたくならないか? その時不幸を感じないか?
俺はある決心をして、風送りの間から出た。すぐに外に控えていたラップに声をかける。
「ラップ。どうやら俺には付き人が必要らしい」
「は?」
「風の国全域で募集するぞ」
色々言いたげなラップだったが、最終的には納得し、部下を集め準備をはじめた。
こうして付き人募集の紙をあいつの村はもちろん、風の国中に貼りだすことにした。
そして第一審査である書類選考のため、国中から俺のもとに次々と申込書が到着した。
それを俺は真剣に選考していく。なぜこんな回りくどいことをするかというと、あいつを指名してそばに置くことは簡単だが、王の付き人となるなら適正を見なくてはいけない。
俺はまず第一にこの国の王であるからだ。
だが俺はあいつがきっと最後まで残ると信じている。なんせ俺に会うにはこれは大チャンスなんだからな! あいつも必死になるだろう。
「こちらの申込書で締め切ります」
応募期限最終日にラップから渡された申込書を食い入るように確認した。
ない! ない!!!
今までの申込書ももう一度確認するが、やはりあいつの名前がない。
「……いかがされましたか? シルリヤ様」
ラップが心配そうに尋ねてくる。
掴んでいた書類を机に置き、彼女と目線を合わせた。
「なんでもない。ご苦労だった。では今から私が選考するので、明日またこの時間に来てくれ」
「承知しました」
ラップが出ていくと机に突っ伏し、ため息を吐いた。
「あいつはもう俺と友になりたくはないのか?」
回りくどすぎたか?
付き人という立場なら神である俺の隣に立てるというのに。
落胆しながらも大量に届いた申込書にすべて目をとおす。
あくまで選考は真剣に、だ。
「シルリヤ~……ん? お主何をしておるんじゃ?」
こちらが落ち込んでいるところに、風が実体化した少女、ウィンドがノックもせずに入ってくる。
ふわふわと寝そべりながら浮遊するやつは、後ろから俺の手に持つ書類を覗き込んできた。
「あ~、なんか言うとったやつか。なんでいきなり付き人なんか……ま、遊び相手が増えるのは楽しみじゃがの」
のんきに選考に参加してくるウィンドの言うとおりに書類を仕分けしていく。
王の付き人なら風に好かれることは大前提なので、彼女の意見は採用される。
そう、最終的には風との相性が大事なのだ。
試しに聞いてみる。
「……もし、俺が推薦したかったやつが応募していなかったら、あなたならどうする?」
ウィンドが考えるような素振りを見せた。
「ふむ……応募しなかった理由は多々考えられるな……知らなかった、めんどくさい、自信がない、忘れていた」
机に尻を乗せ足を組んだウィンドが、思いつく理由を上げていく。
確かに応募したかったがなんらかの理由でできなかった可能性もある。
「とりあえず合格したと通知を送ってみてはどうじゃ? それで二次審査に来ないのなら諦めよ」
ウィンドは、ニコリと愛らしい笑顔で不正を助言してきた。
「その提案……ノッた」
さすがは俺の母的な存在。悪いやつだ。
次の日、時間通りにやってきたラップに合格者の書類を渡し、彼らに通知するように言った。
それとは別に私信があるからと、1人郵便屋をこの執務室に呼び出してもらう。
「忙しいところすまないが、これを届けてほしいのだ」
俺は机ごしに薄緑色のポストカードを郵便屋に渡した。
「確かにお預かりしました」
受け取ってすぐに、でかでかと書かれた”合格”という文字は郵便屋の目にとまった。
「よろしく頼む……そうだ、よければ町のものにもこのことを伝えてやってもらえないか? あの町からは唯一出た合格者なのだ」
「確かにこれは喜ばしいことですね! 承りました」
「礼を言う」
「おお……勿体なきお言葉……必ずお届けします! では失礼いたします!」
郵便屋の男は感動に打ち震えながら足早に執務室から出ていった。
できることはやった。椅子に座りなおしながら俺は短く息を吐いた。
あいつはちゃんと二次審査に来るだろうか? 初めて来る土地で迷子にはならないだろうか?
心配事は尽きない。
二次審査の前日、ラップとワインドを呼び出した。
「明日の二次審査にワインドも参加してもらう。もしその場で怪しいものがいたらいつでも動けるようにしてくれ」
「わかりました」
ワインドはなんの疑問も持たず受け入れた。
ラップの方を見ると「わざわざ受験者に紛れ込まなくても……」と言いたそうな顔をしていた。
だがワインドが快く了承したことで、意見できないでいるようだ。
「ラップ、ワインドを最終審査まで残してくれ」
「承知しました……まぁ、彼なら実力でも残れるでしょうが」
「ははっ、ラップさんに褒められるなんて嬉しい限りだ」
無事に話が進んだので、ラップには退出してもらい、ワインドと2人になった。
「頼みがある。明日、ある少年が受験しに来るのだが、街についたらさり気なく様子を見てやってほしい」
「シルリヤ様が気にかけるなんて珍しいですね。その少年はどのような方なんですか?」
ワインドはそのフランクな性格から、ラップと違い気になったことはずばずばと聞いてくるところがある。
「恐らく姿を見ただけでわかると思う。風にすごく愛されている少年だ」
そう説明するとワインドが軽快に口笛を鳴らした。
「それは……オレも会うのが楽しみになってきました」
ワインドが目を輝かせ純粋な笑みを見せた。
俺はこいつのこういうところが気に入っている。
次の日になり俺は朝からすでに4杯もコーヒーを飲んでいた。
あいつは来るだろうか? 気持ちを落ち着かせながら俺は余裕を持って試験に立ち会うために、休みなしに仕事を片していた。
その時、あちらの世界で面倒事が起きた。
こんな時に……! しかしあちらの世界を放っておくことはできない。
2つの身体を同時に動かすことは造作ないが、一方に集中したいときは片方を眠らせて動くようにしている。
二次審査はもうすぐだったが、あちらの世界を優先するしかなかった。
部下にラップへ伝令を頼み、俺はすぐにソファに身体を預け、むこうの世界へ集中した。
急いで問題を片付け戻ってきた俺は、部屋の外の兵士に状況を確認する。ちょうど2次審査が終わり今は結果発表に入っているらしい。
俺は足早に試験会場の部屋に向かうと、何やら中が騒がしく、嫌な感じがした。
部屋の中へ入るとすぐにあいつが目に入った。良かった、来ていたんだな。
しかし、あいつは何故か他の受験者たちに責められていた。
騒動を止めようとさらにあいつに近付くと、ちょうど後ずさりしたあいつが俺の胸に飛び込んできた。
バランスを崩しこけないように、そっと両肩に手を置き支える。
何が原因かまだわからないが、大勢でここまで責めるなど……俺は少し声に圧をかけた。
「何をしている。お前たち」
両手を乗せている肩がびくりと跳ねた。掴んでいる肩はカチコチに固まっている。
怯えさせてしまったと思い、あいつから手を離し距離をとった。
先ほどまでのぬくもりがなくなると、少し肌寒く感じた。
距離ができたことによりゆっくりとこちらを振り向くあいつと視線が交わる。
肌寒かったはずなのに、今度はじわじわと心臓が熱くなった。
今すぐにでも「久しぶり」と声をかけたい。
だが、王である俺が今この場でその言葉を言ってはいけない。
まずはこの場を収めなければ。
「状況を確認したい。しばし待たれよ」
ラップを呼ぶと、後ろからウィンドが顔を見せた。
なるほど、察した。
ウィンドと会話を交わした後、彼女の姿が見えない者達へ説明をする。
この目で見えないものを信じることの方が難しいとわかっているため質問にも丁寧に答えていく。
先ほど私がウィンドと会話していたこともあり、全体的に気持ちも落ち着いてきたようだ。
そろそろ話を進めようとあいつの方を見ると、何故か不安そうな顔をしていて、それを慰めるようにウィンドが頭を撫でていた。
俺が話している間に何が起きた?
今ここでそれを聞くことができないのがもどかしい。
横顔を見ていると、ふいにあいつがこちらを向いてばちっと目があった。
「今回、私が募集したのは私の付き人だ。それにはどうしても風が見えてある程度気に入られる者が望ましい。2次試験の通過者は2人と聞いていたが、どうやら風はこの少年をすでに少し気に入りだしているようだ。彼をこのまま帰してしまうことは私にはできない……皆にはせっかく平等に試験を受けてもらい申し訳ないが、最終試験は彼を含めた3人で行いたい」
そう告げると落選した受験者たちがじょじょに会場から出ていった。
それを見届けてからラップへ指示をだした。
「最終試験会場へ案内してくれ。私もすぐに向かう」
「はっ! ではお前たち、ついてこい」
歩きだす一行からウィンドの首根っこを掴みあいつから引き剥がした。
「あなたとは少し話さねばな」
ウィンドがじたばたと手足を動かし、俺の手から逃れようとする。
2人だけになったところでウィンドが嬉しそうに笑った。
「シルリヤ! あいつ、わしも気に入った!」
「それは良かった」
大人しくなったので地面におろしてやる。
「あやつ、付き人決定じゃな。くるくる前髪はわしのこと見えていないみたいじゃし。良かったのぉ、シルリヤ」
嬉しそうに手を叩く。
俺も先ほどからそのことを確信していたため気分が良くなる。
「あいつは付き人だけでなく俺の友人だ」
「……お主、なんだか普段見せない顔しとるぞ? ほんとに好きなんじゃなぁ」
ウィンドに指摘され顔を引き締める。
どんな顔をしているかわからないが緩んだ顔など見られたくない。
「ま、邪魔して悪かったの。行っておいで」
「ああ……俺が来るまで引き止めてくれて感謝する」
ウィンドは無言でピースサインを見せると姿を消した。
あいつが落選しないように止めたのは俺のためではなく風の総意だったのだろうが、お陰であいつは最終試験に残ることができた。
俺も部屋を出てラップたちを追いかけることにした。
風送りの間ではちょうどラップを先頭に上へ登っている最中だった。
あいつの後ろにワインドが続き、手を振り合っている。
その後ろに続くとあいつは俺に気がついたのか身を固くした。
……ワインドには手を振るくらいなついているのに、俺のことは怖いと思っているのだろうか。
声をかけるとワインドは嬉しそうに「弟みたい」だと言ってのける。
まぁ、これからワインドにはあいつの護衛も頼むつもりなので良好な関係のほうが良いだろう。
フロアに到着すると最終試験の説明を始める。
実際に風送りを行う様子も見せる。
やはりチョークとやらは見えていないようだ。頷いてわかっているふりだけ見せている。
逆にあいつは見えているのに不安そうな顔で、水晶の前に移動した。
無事に風送りが成功するとラップが口をあけて固まっていた。
チョークは、やはり風送りができぬようでこれで結果は決まった。
ラップにチョークを送ってもらう。
「さて、これで私の付き人は決まったな」
「そのようですね」
俺がワインドに声をかけると、ワインドも嬉しそうに同意した。
ああ、嬉しい。
早くあいつと色々話をしたい。
ワインドにも外に出てもらい、ようやく2人きりになった。
あいつと向き合うと喉から自然と言葉が溢れてくる。
「久しぶりだな。いくつになった? ああ、もう16なのか。俺を探さなかったということは、まぁ無事幸せに過ごせているらしい」
自分でもこんなにぺらぺら喋りだしたことに驚きながらさらに話を続ける。
「だが喜べ、今日から俺の付き人であり友であるお前はさらに幸せになれるだろう」
今お前が何を考えているのかも俺には全てわかっている。
「本当にそうだろうか?」
自分に言い聞かすように言葉を続ける。
「せっかくこの国に生まれたからには、お前には最高の幸せを見つけてほしい。あの文化水準の高い国で過ごしてきたお前には、だいぶ不便なこともあるだろう」
わかってる。お前が利便性より心を大事にしているということを。
「お前は……オレとは笑いあいたくないのか? 今まで通り家族と友達と楽しく過ごしたらいい……だが、そこにオレを入れることはできないのか?」
我ながらずるいと思いつつ、せっかくここまで来たのだからなんとしてでも繋ぎとめたいと思う気持ちが強くなる。
そして、あいつは優しいから、まんまと俺の手を取ってくれた。
「……いいのか?」
少しの間でもいい、お前との繋がりを形にさせてくれ。
「では契約だ」
俺は自分でも最高に意地が悪いだろう笑みを浮かべると、神の伴侶の契約を結んだ。
「これからよろしくな。付き人兼ゆ・う・じ・ん」
こうしてあいつは俺の付き人兼友人となった。
そして今もまだ俺の隣にいてくれる。
これからのことは正直わからない。
だがこの関係は俺のわがままから始まったことだ。
約束どおり、永遠に楽しい時を過ごせるよう努めよう。
俺との人生を選んでくれてありがとう。
こちらで終わりとなります。
最後までお読みいただき本当にありがとうございました!




