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ぼくは美形な王の付き人兼おともだち  作者: ツナズキクン
4年後の世界では、編
45/48

2 ぼくの職場を紹介します

懐かしい。

 朝起きるとまだ胃の中にたくさん詰まっている感じがした。

 朝食を食べる気分にもなれず、母から一杯の水をもらい職場に向かうことにした。


「お昼に食べなさい」


 そう言って母は、パンの間に羊の肉を挟んだサンドウィッチを持ち運び用の大きな葉に包んで渡してきた。


 父と母に見送られぼくは風の道を渡った。


 家から職場まで一直線に伸びたこの道はとても便利で、本来なら汽車に乗らないといけないところを、なんと徒歩で向かうことができるのだ。


 しばらく歩いていると、直線上に風の国の王が住んでいるエメラルドの王宮が見えてきた。

 あそこでぼくは住み込みをしながら働いている。


 

 風の道は王宮の中までは続いていないので、正門の前で着地した。

 はじめはここを通ることだけでも緊張していたが、すっかりと慣れた今では顔見知りの門番とも挨拶を交わす仲だ。


 建物の中へ入ると、見慣れた顔が目に入った。

 

 かっちりとした黒いスーツに、赤色の特徴的な形をした眼鏡をかけている。

 ラップだ。

 ラップは長い間この王宮内であらゆる物事の管理を担っている。


 シルリヤ王の側近の1人だ。


 どうやらラップは誰かと話をしているようだ。

 ぼくからだと顔が絶妙に見えないが、普段王宮内では見ない姿なので恐らく今日謁見の予定が入っている者だろう。


 ……でもなんだか見覚えがあるな。

 赤と緑が基調となったチェック柄のスーツに、後ろから見てもわかるくらい横に流して巻いてある前髪。


「おお、帰ったのか」


 その時ちょうどラップがこちらに気がついて声をかけてきた。

 それにつられて彼も振り返り、目があった。


「やあ、君か」


 この気取った声。そう、確かチョークという名前だった。

 彼とは数年前に一度だけここで出会ったことがある。


 あの時はなよなよしい印象だったが、今は体格も少しがっしりとしていて頼もしい雰囲気があった。


「今日は父の代理で来たんだ。水の国との貿易の件でね」


 そのことは事前に聞いていた。

 4年前に雷の国と貿易を開始して以降、反対側に隣接している水の国からも貿易の打診があった。


 この世界には5つの国がある。火・水・緑・雷、そしてぼくたちの住む風の国だ。

 はるか昔、5つの自然が5つの神を生み出して世界を創造した。

 その神たちが今もそれぞれ国を統治しているのだ。 


 いわば兄弟のような間柄の彼らだが、友好な者もいれば非友好的な者もいる。

 いつ均衡が崩れ衝突してもおかしくない状態は、長年各国を閉鎖的にしていた。


 しかし4年前に雷の国と風の国が歩み寄ったことにより、時代が新たに動き出したのだ。


 ……なーんて、あの頃はそんなことこれっぽっちも知らずにいた。

 正直今もすべて理解できているわけではないけど、今回の水の国との貿易も中々重大なことらしい。


「今まで2か国間だからぎりぎり成り立ってきたけど、今回水の国と貿易が成立すると、火と緑は良い顔をしないだろう……でも、水の国の資源はさらにこの国を豊かにするんだ」

 

 真剣な顔でチョークが語る。

 昔は嫌味なやつで苦手だったけど、誰かを思いやるこの姿に今は素直にかっこよく思う。


「あ、おーい!」


 ラップとチョークと話し込んでいると、また聞き慣れた声が呼びかけてきた。


「ワインドか……いかん、長話しすぎたな」


 ラップが苦笑する。

 昔は他人にも自分にも厳しかったが、最近なんとなく柔らかくなったと思う。


「引き止めてすまなかったな、またあとで」


 ラップに言われてぼくは一礼すると駆け足でワインドの元に向かおうとした。


「あ、ねぇ、君」


 思い出したかのようにチョークが引き止めてくる。

 振り返りチョークを見ると、彼は目を細め片方の口角だけを上げて笑った。


「今回は負けないからね」 


 挑発的な表情と言葉に、やっぱり嫌なやつだなと苦笑する。


 別に今日は争うつもりはないんだけど……まぁいいか、と2人に背を向け今度こそワインドの元へ走った。

この度はお読みいただきありがとうございます!

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