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さようなら

ラストコネクト。

『Connected』

 

 前の世界のぼくが住んでいる部屋の中で、ぼく達は見つめ合った。


 ぼくは今、シルに頼んでこの世界の自分に会いに来た。

 最後にこの世界のぼくにお別れを告げたかったからだ。

  

 ぼくが何度も見ていた前の世界の夢は、夢ではなく現実なのだと、風の神殿でシルは言った。

 

 やっぱり前の世界のぼくの体を動かしていたのはシルだったのだ。


 シル曰く、2つの体を同時に動かして生活することは可能だけど、それはとても疲れるらしい。

 なので極力片方が寝ている間にもう片方が生活するようにしているという。


 そしてなぜぼくが何度も前の世界に戻ってしまったのかというと、元々1つだった体と魂は無意識に惹かれあっているらしい。

 そこにもう1つの体へ精神をすぐに飛ばせるように設定しているシルの体にぼくが触れた時に、シルを介してぼくの魂が間違えてあちらへ飛ばされていたのだ。

 

 ちなみに繋がるときに聞こえてきた女性の声は、シルが意識を動かすためのイメージボイスのようだ。


「おい、先に説明したとおり、魂だけでは長くここにとどまれないからな」

「うん」

 

 今ぼくの体の中にはシルが入っていて、ぼくは魂だけ幽霊みたいにこちらの世界へやって来ている。


 珍しい状態なので目の前の机を触ってみようとしたが、すうっとすり抜けるだけで触ることはできなかった。


 また視線を目の前のシルに戻す。

 けして大きくない体は中性的な顔も相まって女性みたいだ。

 眉毛は細く整えられており、耳にはたくさんピアスがつけられている。


「ぼくの面影が全くなくてさ、初めて見たときは自分の体だったなんてわからなかったんだ」

「そんなに違うか?」

「うん。もしぼくがその体のまま大人になっても、こうはならなかったんじゃないかな」


 そう伝えるとシルが少し考え込むような素振りを見せてからぼくと目を合わせた。

 その目はとても真剣だった。 

 

「なぁ、今からこっちの世界に戻る気はないか? もしそれを望むなら、俺の体に触ればいい。そうするとお前の魂はこの体に適応するだろう」


 突然の提案に目を見開いてシルを見つめ返した。

 言葉が出てこないぼくにシルは続けた。


「最悪な人生というのも年を重ね環境を変えることができれば、生きやすい道を見つけることもできるだろう。今この体はあの頃と比べ格段に住心地の良い場所を手に入れた……ここからまた、こちらの世界でやり直してみないか?」


「シルは、最初からそのつもりで?」


「いや……だが、お前の体を借りてこの世界を生きてみて、俺達が創る世界と比べこの世界の文明レベルは遥かに高い。あちらの世界で生きてみてお前は不便ではないか? クーラーも、スマホも、テレビゲームも、なにもない世界は不便ではないか?」


 シルが気にしていることが、少しだけ理解できたような気がした。


「シル、ぼくはこっちには戻らないよ。だってもうぼくはすっかりシルが創った世界が大好きなんだから」


「そ、うか……」


 ぼくの答えを聞いて、シルは目をつむり、喜びを噛みしめるように深く息を吸った。


「そういえば、シルはこれからもこっちの世界で生活するの?」

「ああ、ある程度生活に区切りをつけたら、この世界への道は閉ざすことにする。そろそろ怒るやつも出てくる頃だろうしな」


 その言葉にリヒトの顔が浮かび上がり、ぼくは苦笑いした。


「そうだね、それがいいかも」


 じゃあ今度こそ、さようなら。


『Disconnected』

お読みいただきありがとうございます。

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