3 酒の香りと火と恋の話
お兄さん、酔っちゃってますね
父がコップに地酒をなみなみと注いだ。
「いただきます」
ワインドはコップを持ち上げた腕を、同じくコップを持っている父の腕に軽く当てる。
乾杯が済むと2人ともくいっとお酒を喉へ流し込んだ。
「ん、少し苦いけど爽やかだ!」
「さ、どんどん飲んでおくれ」
普段から友人たちとお酒を飲むことが好きな父はワインドへ嬉しそうにお酒を注いでいった。
お酒の飲めないぼくと母が食べ終わったあとも、2人の酒盛りは続いた。
隣の部屋からいまだ盛り上がる声が聞こえてくる中、ぼくはベッドに体を沈めた。
ぼくの家は平屋で、玄関から入ってすぐはダイニングテーブルを中心に広めの間取りの部屋になっている。
その奥に1つ、寝室がある。
両親と同じ部屋だがベッドは対角にあり、間に背の高いクローゼットなどを設置して個室みたいになっている。
「なぁ、起きてるか?」
先ほどまで隣で盛り上がっていたはずのワインドが、ぼくのそばにやってきた。
暗闇の中、ベッドサイドに置いたろうそくの火が、優しくワインドとぼくを照らしてくれた。
ワインドの頬はほんのり赤かった。
「今日はありがとうな。良い休暇だったよ」
起き上がろうとすると、そのままで良いと優しく体を押し戻される。
ワインドにベッドのフチを勧めると、そこに浅めに腰掛けた。
「ウィートネさんは明るくて気立ての良い子だよなぁ」
ワインドはウィーのことをとても気に入っているようだ。
確かに学校でもウィーは人気者で、陰ながら想いを寄せている者も少なくはない。
まさかワインドも好きになったのだろうか?
「正直に聞くけどさ、2人は付き合ってるのか?」
目を合わさずぼうっと火を見つめながら尋ねてくる。
その目はどこか熱に浮かされているような感じがした。
やっぱりワインドはウィーに惚れたんだ……!
ぼくは必死に首を左右に振り、ウィーとは何もないことをアピールする。
ウィーは恋人というより家族の1人だと思っている。
「家族、か……なるほど……そ……」
おああああ?!
急にワインドが倒れてきた。
のしかかられて動けなくなった体をなんとかよじってワインドを横に転がした。
思っていたより酔っていたようだ。
話し方がいつも通りだから気がつかなかった。
気持ちよさそうにすやすや眠るワインドの顔なんて初めて見た。
もし、ワインドとウィーが結婚することになったら、たまに泊まりに行って、こうやって隣に並んで寝落ちするまで語り明かしたりしてさ。
……気が早いか。
ぼくも眠ろう。
……ワインドから香るお酒のにおいに、なんたかぼくも酔ってしまいそうだった。
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