2 幼なじみ
健康を意識してオートミールデビューしましたが、美味しくてつい食べすぎます。
隣の家と言っても、我が家の麦畑を挟んだ少し先にある。
土産を手に持ち、ワインドと並んで畑道を歩く。
「ウィートネさんに会うのは久しぶりだなぁ」
思い出すようにワインドが呟いた。
ぼくが付き人の初出勤の日、家まで迎えに来てくれたワインドはそこでウィーと少しだけ話をしたことがある。
ウィーもあの日以降たびたびワインドに会いたいと言っていたので、きっと喜んでくれるだろう。
大きな目をきょとんとさせて、ウィーがぼく達を見つめた。
状況処理に時間がかかっていたが、突然はじけたように喋りだした。
「えっえっ、ワインドさん?! あ、すみません、少し待っていてください!」
家から出てきたウィーが急いで家の中へと戻っていく。
ダダダダダと、中で走り回る音が外まで響いてきた。
「お、お待たせしました……どうぞ入ってください」
先ほどまで前髪ごと持ち上げてひとまとめにしていたマロン色の髪の毛は、今はおろされてくせ毛1つ見当たらないほど整えられていた。
服も着替えている。
「もぉー、あんただけと思って寝間着で出ちゃったじゃん!」
ウィーは照れ隠しにぼくの肩を軽く叩いてきた。
「え、お土産? ありがとう!」
叩いてくる手へ土産を渡すと、ウィーは手を止めてまじまじと中を覗きこんだ。
「わぁ、いい匂い! せっかくなんで今飲みましょうか」
「お、じゃあこっちはお茶請けにしよう」
ウィーがお茶を用意するというと、ワインドが手に持っていた包を開いてみせた。
中には美味しそうなクッキーがたくさんあった。
どうやらワインドも手土産を持ってきていたようだ。
3人でテーブルを囲んでお茶とクッキーを食べながら楽しい時間をすごした。
はじめは雷の国の話をしていたが、途中でぼくとワインドの仕事についてや、ぼくとウィーの思い出話に変わっていった。
「家族で花見に行ったとき、山であたし迷子になっちゃったよね」
あれは大変だった。
6歳の時ぼくの家族とウィーの家族で山の頂上に花見に行ったのだ。
お互いひとりっ子のため兄弟のように育ってきたぼくとウィーは、はじめて登った山に興奮し、2人だけでかくれんぼを始めたのだ。
鬼だったぼくが100数える間に、ウィーは思った以上に遠くへ行ってしまい、ぼくは慌てて四方八方探し回った。
「大きな岩の陰に隠れてたけど、いつまで経っても見つけに来ないから、もう戻ろうと思ったら帰り道が全くわからなくってさ、あ、帰れないって瞬時に悟ったよ」
でもウィーは小さい頃からしっかり者で、泣いてもいい状況だったのに泣かずに、さっきまで隠れていた岩に向かって木の枝を叩きつけて音を出した。
ぴしゃんぴしゃんという音は、たまたま近くまできたぼくの耳に届き、無事に合流することができたのだ。
「でもまさかあんたも帰り道わからなくなるなんて思わないじゃん?」
そうなのだ。
ウィーと合流できたことは良かったのだが、その時点でぼくもどこから来たのかわからなくなってしまったのだ。
結局ウィーがぼくに道に関する質問をして、その答えを頼りに歩くことになった。
「泣きべそかきだすあんたの手を引きながら、あぁあたしが守らないとって、そりゃ心底思ったわよ」
うっ、お陰でなんとか親の元へ戻ることができたが、その時からウィーはぼくに何かと世話を焼くようになったと思う。
終始笑いながら話を聞いていたワインドが口を開く。
「こんなに仲のいい幼なじみ、オレにはいないから羨ましいな」
「……ワインドさん。この子、王宮でちゃんとやっていけてますか?」
あ! ウィーがまたお母さんみたいなことを言ってる!
もう遅いが両手をクロスさせ、罰じるしを作り、ウィーに質問の中断を求める。
「だって気になるわよ」
「そうだなぁ、ずっと見ているわけじゃないが、よくやっていると思うよ」
「そうですか! ワインドさんにそう言っていただけるなら良かったです!」
ぼくの話をする2人を見るとむずむずむずむず、むず痒い。
「あんた何うねうねしてるのよ」
体を左右に揺らしていたら、ウィーに頬を突かれた。
やーめーろーぉ。
いやいやと今度は指を避けるように顔を左右に振る。
「――もっ」
ワインドから変な声がもれた。
ぼくとウィーが同時にワインドの方を向くと、そこにはにこやかにお茶を飲むワインドがいた。
変な声出してたと思ったけど気のせいなのかな?
ウィーの母が夕飯を食べていくか聞いてくれたが、ワインドは父と酒盛りを約束しているため、やんわりと断りを入れて帰ることにした。
「ワインドさん! 絶対にまた来てくださいね!」
名残惜しそうなウィーが玄関の前でぼく達を見送ってくれた。
ワインドと一緒に家に帰ることが、まるで本当の兄弟になったみたいで嬉しくてつい口元が緩んだ。
暗がりのためワインドにはバレなかったのでセーフとする。
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