1 休日です
花粉症のない世界に行きたい
家へ帰ったら、まず畑一面に広がる麦の、のどかな風景がぼくを出迎えてくれた。
朝に雷の国から出立したのに、今はすでに夕刻だった。
雷の国では暗くなると、電気が配線を通り眩しいくらい輝いていたが、電気の通っていない風の国はこの時間になってくると薄暗かった。
ぼく達を乗せた馬車は、王宮より先にぼくの自宅に停まった。
到着間近に目が覚めたぼくの隣では、珍しくシルが熟睡していた。
シルが寝ている姿を見るのはこれが初めてだった。
この旅行の最中、同じ部屋の中であってもシルはぼくより後に寝てぼくより先に起きていた。
まじまじと寝顔を観察する。
……というか静かすぎる。
…………え、死んで……あ、息してるや。
シルは結局ぼくが馬車を降りる時になっても熟睡していた。
家の中へ入ると両親が出迎えてくれて、帰りにルーンが持たせてくれたブレンドティーを3人で飲みながら、あちらの国の話をした。
物珍しいといった顔で聞いてくれる両親にぼくも嬉しくなってたくさん話をした。
もちろん誘拐の話は伏せて。そんな話をしたら心配かけちゃうからね。
「楽しかったようで良かったよ。話してくれてありがとう」
父がぼくの頭を撫でながらお礼を告げた。
「疲れたろう? もうおやすみ……そうだ、明日お隣のウィートネちゃんにもこの美味しいお茶を飲みながら色々と話してあげなさいな。お前の様子が気になっているようだったよ」
母が思い出したかのようにぼくにウィーのことを教えてくれた。
隣に住んでいる幼馴染のウィートネは同い年だけどしっかり者で、ぼくが小さい頃から何かと世話を焼いてくれる女の子だ。
ぼくがシルの付き人になってからウィーはぼくの両親の様子も度々見てくれているようなのだ。
母の提案に頷いて、明日はウィーに会いに行こうと思った。
「よ、おはよう」
朝起きると、ワインドが父と一緒に畑仕事をしていた。
「ワインドくんが訪ねてきて仕事を手伝ってくれてね」
「農作業も鍛錬になりますから!」
うっ、眩しい……!
まさか朝からワインド光を浴びることができるとは……!
でも一体何の用で来たんだろう? 今日は付き人の仕事も休みのはずだ。
一段落終えたワインドが近づいてきた。
「急に来てすまない。今日は仕事じゃなくてオフで来たんだ。実はシルリヤ様が2連休をくださるということで急に休みになって……」
どうやら王宮にいるとどうせ仕事をするからと、シルがぼくの元へ行くよう指示したようだ。
「おお、それなら今日はぜひうちに泊まっていってください」
農具を物置に片付けてきた父がぼく達の会話を聞いて、ワインドに泊まるように言った。
「ここの村の地酒はとびっきり美味しいんですよ!」
「ほんとですか? ではお言葉に甘えて、お世話になります」
とんとん拍子に話が進み、いつの間に父とこんなに仲良くなったんだと驚く。
でもワインドが泊まることにはぼくも賛成だ。
「今日はウィートネさんに会いに行くのか。オレも同行していいかな?」
それはウィーも喜ぶと思って、2人で会いに行くことにした。
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