14 帰国
帰るよ!
ルーンとお茶をして一息ついた後、2人でスタート地点へ戻ると、頬を膨らませて不機嫌そうなリヒトがいた。
「おっそ~い!」
「すみません……あら? リヒト様、ワインドさんはどちらに?」
ルーンがすかさず謝るが、近くにワインドがいないことに気がついた。
「だってお兄ちゃんどこにいるかわかんないんだもん。飽きちゃった」
「あらまぁ」
ええ?! 絶対探していないであろうリヒトに呆れてしまうが、それよりカーテンの裏に隠れているワインドを迎えに行こうと部屋から出ようとした。
だけど同時に扉が開いて、ブリッツとシルが入ってきた。その後ろにはワインドも立っていた。
「まさか城の中で雷隠しをしていたとは、カーテンをめくるとワインドくんがいたときは驚いたぞ!」
どうやら商談が終わったブリッツとシルは、ワインドが隠れている部屋の前を通りがかったとき、小さな衣擦れの音が聞こえて乗り込んだらしい。
「危うく不審者と間違えて攻撃するところだった」
シルがそう言うとワインドもおかしそうに笑った。
いや、攻撃されてたらシャレにならないよ?! ワインドが無事で良かった……!
「ところでリヒト。客人を放置するのはどうかと思うぞ」
ブリッツが笑みを浮かべたまま注意をすると、リヒトは心底嫌そうな顔をした。
「べー! ぼくの勝手でしょー?」
舌を突き出し反抗的な態度をとるリヒトは、そのままふわりと飛び上がり、壁をすり抜けどこかへ行ってしまった。
「あいつ……見送りもしない気だな」
来たときと同じように馬車に乗り込む。
「シル! また暫く会えないと思うとものすごく寂しいよ!」
「世話になったな」
ばしんと、扉を閉めてブリッツとの挨拶を強制終了させた。
扉の外ではブリッツの大笑いが聞こえてくる。
なんだこの神々。
ゆっくり進む馬車に、とうとう風の国へ帰るのだと実感がわいた。
後ろを振り向き嵌め込み式の小さな扉を開くと、大勢の兵士に囲まれたブリッツとルーンがこちらに向かい手を振っていた。
ぼくも手を振り返した。
よく見ると、空に白いものが浮いていて、それがリヒトだと言うことに気がついた。
リヒトも笑顔でこちらへ手を振ってくれている。
色々なこともあったけど、お城の人たちはみんな優しく楽しいこともたくさんあった。
風の国へ帰ったら両親やウィーたちにいっぱいお話をしよう。
……誘拐されたことは伏せとこ。
「さきほど、ブリッツと商談したのだが、今度から良い品が風の国に入ってくることになった」
突然、シルが話しかけてきた。
すでに雷の国の入り口の大門を抜けて暫く経っていた時だった。
「ほら」
そう言って差し出してきたのは紙に包まれたパンケーキだった。
「ワインドがお前に食べさせたいと言っていた。ブリッツに聞いたら、雷の国の名物らしい」
見た目は普通のパンケーキだった。
一口食べてみる。
何か小さな固形のが生地に混ぜられていた。
それを噛もうと歯をあてた途端、ぱちぱちとそれが爆ぜた。
口の中に一気に甘みが広がる。
お、美味しい……!
驚きに目をぱちくりとさせる。
「雷栗のパンケーキらしい。雷の国の名産品で、毎朝雷栗の木へ雷を落として栽培しているらしい」
衝撃の方が勝ってしまったが確かに栗の味だ。
え? もしかして栗を貿易する話をしていたの?
「気に入ったか?」
柔らかい表情でぼくの様子を窺ってくる。
素直に頷くと満足そうに頭を撫でてきた。
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