12 雷隠し
ローカルルールかくれんぼ
次の日、シルが帰る前にブリッツと話すことがあるからと、午前はルーンとリヒトとワインドで過ごすことになった。
「はいはーい! ぼく、雷隠ししたーい!」
リヒトがぼくの腕をとり、楽しそうにぴょんぴょんと跳ねる。
「雷の国の遊びなんですの。まず2チームに分かれて、チームの中で雷様を1人選びます。決められたエリア内でそれぞれが雷様を隠したらスタートです。相手チームの雷様を見つけ、スタート地点へ先にお連れしたチームが勝ちとなります」
ルーンがぼくとワインドに説明してくれる。
「ぼくはルーンしゃんとチーム!」
ルーンしゃんが雷ね! とリヒトは楽しそうに、今度はルーンの手を取りぶらぶらと揺らしている。
「わかりました。ではエリアですが、1階のフロアのみと言うことにしましょうか」
土地勘のないぼく達に配慮してか、ルーンが狭い範囲を指定すると、リヒトも「いいよぉ!」と了承した。
「じゃあまず、雷様を隠しに行きましょう。終わったらまたここに集まってくださいね」
ルーンの合図でお互い別れることになった。
ぐんぐん進むリヒトについて、ルーンの姿もあっという間に見えなくなった。
「オレが雷様になるよ」
ワインドが立候補する。
じっと隠れる役はつまらないだろうと、ワインドはぼくに気を遣ってくれたみたいだ。
早速2人で隠れる場所を探そうと、リヒトたちに遅れて今いる部屋の外へと向かった。
いつもは明るく話しかけてくるワインドだが、昨日のこともあってか2人になると中々話題が浮かばなかい。
「昨日のさ、シルリヤ様と2人で来てくれたとき、すごく嬉しかった。
ありがとう」
急にお礼を言われ、反射的にワインドの方へ顔を向けた。
ワインドもぼくのことをまっすぐ見つめており、その真剣な眼差しと目が合うと、何故だか心臓がむずむずした。
照れ笑いしかできなかったぼくは、それを誤魔化すように上の方にあるワインドの肩を軽く叩くと、ワインドも少し笑ったあと、いつも通りの明るい雰囲気に戻ってくれた。
「じゃあ俺はこのカーテンの後ろにいるから……接待試合なんて考えるなよ?」
何事も全力で。
ワインドと拳を突き合わせて、約束した。
スタート地点に戻ると、すでにリヒトが戻っていた。
「おっそーい! ぼくすごく待っちゃったぁ」
嬉しそうに怒るリヒトに謝り、押し付けてきた頭を撫でてご機嫌を取る。
「きゃははは! じゃあはじめちゃう? どうする? 別の遊びはじめちゃう?」
おいおい、ルーンとワインドはどうなるんだ、といった顔でリヒトを見ると、「冗談だよぉ」とこれまたご機嫌な顔で返してきた。
「あのね、神の伴侶は解消できるんだよ」
ふと、リヒトの纏う空気感が変わったような気がした。
口は笑ったままなのに、目はまるで捕食者のようだ。
「手を握ってお互いが了承したら契約完了。だからまた手を握って、お互い解消を願ったら契約は破棄されるんだ」
「シルリヤしゃんがろくに説明もせずに契約結ばれたんでしょ? そもそも、別世界から君の魂を引っぱってきてる時点で彼、少し勝手がすぎるんだよなぁ」
目の前にいるリヒトはリヒトでないと感じ、ぞっと背筋が寒くなる。
何か、この世界の核心に触れたような気がして、急に泣きたくなった。
「あっ、悲しい顔しないで……驚かしちゃってごめんなさい」
我慢しきれず涙が溢れ出そうになったとき、リヒトが戻ってきた気がした。
あちらも悲しい顔で、手を組み祈るように言葉を続けた。
「あのね、ぼく達は良い世界を創るために神を生み出したんだ。力を持つ者が自分勝手に振る舞うことはけして許されることじゃない……もし、シルリヤしゃんがこの世界の均衡を崩そうと企てているのなら、その時は引き止めてあげてほしいんだ」
頼んだよ。じゃあ雷隠しスタート♪
そう言ってリヒトは走ってワインドを探しに行った。
一体リヒトの情緒はどうなっているんだと思ったが、そもそもリヒトは人間ではなく雷という抽象的な存在だ。
きっと普段の性格以外にも様々な思念があの中には詰まっているのだろう。
力を持つ者は自分勝手に振る舞うことは許されない。
そんな存在として生み出されたシルは、一体自分のことをどう思っているんだろう?
本当に良くないことを計画していた場合、ぼくは止めることができるのだろうか?
不安な気持ちが次々とこみ上げてきたけど、それに気づかぬフリをして、ぼくはルーンを探すことにした。
お読みいただきありがとうございますー。普段かわいいキャラが強めの雰囲気出してくるの好き




