11 バスタイム
風呂は落ち着くので好き
ぽわんぽわん。
バスタブいっぱいの泡泡泡。
その中に埋まるぼくは泡を手に取りふぅと息を吹きかけ飛ばしてみる。
「楽しいか?」
隣にいるシルが問いかけてきた。
それに軽く頷き、ぼくはさらに泡に隠れるように体を沈ませた。
シルはぼくの片手を掴んでいて、縄で擦り傷ができてしまった箇所を真剣に観察している。
突然風呂に誘ってきた理由はどうやら、ぼくの身体にできた傷を治療するためらしい。
「少し痛むぞ」
シルが小声で呪文を唱えると、傷口の周りが薄く光った。
ピリッと痛みが走り少し顔をしかめてしまう。
ヒーリング魔法は誰にでも使えるわけじゃなく、そして完治するものではないらしい。
手首の傷を観察すると、傷口に薄い膜がまとわりついているような感じだった。
お湯につけても特に傷がしみることはなかった。
「数日経てば跡も残らず治るだろう……次は、足だな」
足、その言葉を聞き無意識にシルから離れるよう後退りした。
手首はまだ耐えれたが、足はなんだか気恥ずかしい。
「おい。のぼせてしまうぞ? 早く足を出せ」
うう……確かに変に緊張していつもより体温が高い気がする。
おずおずと泡の中から足を差し出すと、シルがそれをキャッチして、またじっと傷口の観察を始めた。
風呂に入る前、シルから一緒に入ることを提案されたとき、ぼくは耐えられないと思って断固拒否した。
長い髪は常に輝くオーロラで、透き通るような白い肌、大きくて切れ長な瞳、人ならざる美しさを持つ風の神様。
そんな神様の裸はなんだかみてはいけないもののように思える。
ぼくはますます激しく左右に首を振る。
「お前の傷口を治療するだけだ。手足以外にも傷がないか確認したい」
言葉が足りていなかったことに気がついたシルが理由を付け足す。
でもそれなら風呂じゃなくてもいいし、大怪我していないのは自分が一番わかっているから必要ないよ!
「……とある異界の国では、友人と裸の付き合いをすることがあるんだろう? 俺はそれがしたい」
ここでぼくは動きを止めた。
え、そういうこと? 友達みたいなことがしたかったの?
「ここは浴槽が広いので2人で入っても充分に足が伸ばせるだろ?」
確かに大きくて丸い浴槽は余裕ではある。
「確か泡を発生させる粉もあったと思う。これならお互いの体も隠れるし、恥ずかしくないだろ?」
やめろ。そんな悲しそうな目でぼくを見るな。
こうしてぼくは根負けをして今肩を並べて風呂に入っているということだ。
ちなみに先にぼくが泡の中に入って、目を瞑っている間にシルも入ってくるという条件だけはつけた。
これでお互い裸は見られることはない。
体を浴槽の縁に預けて足を上げているので、自然と顔は天井を見つめることになる。
ここの部屋は浴室にも細かい電気が散りばめられていて、満天の星を眺めているような気分になる。
良い匂いのお湯に柔らかく気持ちいい泡、シルに足を握られている感覚もなんだかマッサージを受けているみたいで、少し前まで縛られて固まっていた体には心地よい。
「ほら、終わったぞ。ではそろそろ上がるか」
治療が終わったシルが満足したのか風呂から出るため急に立ち上がった。
あ、見え……。
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