6 神の伴侶
ルーンのことがどんどん好きになってきた
全然眠ることができなかったぼくは、朝になると音もなく起き上がったシルと目が合い、頭を優しく撫でられた。
「起こしてやるから、もう少し寝ていろ」
そう言われると、寝ていなかった頭が急に重くなってきた。
ゆっくりと何も考えられなくなり、気がついたらぼくは眠っていた。
寝る前にかけられた言葉のとおり、時間になるとシルに揺すり起こされた。
なんだか良い匂いがする……。
「朝食を運んでもらった。あっちで食べるぞ」
ああ、またやってしまった。どこの世界に王に起こしてもらって朝食を用意してもらう一般人がいるんだ。
朝食を食べ終わり2人で部屋を出る。
案内の人が部屋の前で待機していたみたいでブリッツ達の元へ連れて行ってもらうことに。
その時ちょうど廊下でワインドに出会った。
「おはよう。よく眠れたか?」
その問いかけに微妙な顔をしていると「案外繊細なんだな!」と笑われた。
ワインドだってシルと同室になってみたらいいんだ! 絶対寝れないから!
「今日は街でパレードが行われるんだってな。楽しみだな」
そのままワインドがぼくの隣に並んで話を続けた。
そう言えば祭があるからって誘われたけど、一体なんの祭なんだろう?
「今日はぼくと妻の結婚記念日に参加してくれてありがとう!」
ブリッツとルーンがバルコニーから下にいる雷の国の民に手を振った。
なんと今日は結婚記念日を祝う祭らしい。
ぼく達は2人の後ろ姿を眺めながら拍手を送った。
「そして、なんと隣接する風の国のシルリヤ=ヴァ=ウィンド王がありがたいことにこの国へ来てくれた」
ブリッツの紹介に、シルが民衆の前に姿を現すと、再び大きな歓声が上がった。
開会式が終わったあとは街中に屋台が出るらしい。パレードは夜に閉会式の一部として行われるそうだ。
混乱を避けるためにブリッツとシルは街へ出ることができないらしいが、ぼくはワインドと後で少しだけ屋台を見に行ってもいいと言ってもらった。
その前に皆でお茶を飲もうというルーンの提案に、ぼくとシルはブリッツ達の正面のソファに腰掛けた。
お茶を一口飲んだあと、改めてシルを筆頭にお祝いを述べていく。
「そういえば、結婚して何年になるんだ?」
シルがブリッツに質問する。恐らくぼく達が聞きたいけど聞きづらいことを察して代弁してくれたのだろう。
その問いにブリッツは笑みを濃くした。
ぼくはというと、まさかその答えに驚くことはないと思っていたので、ちょうどお茶を口に含むところだった。
「なんと今年はちょうど100周年なんだ!」
ひゃ、100?!
かろうじてお茶を噴出さずに飲み込んだが、変なところに入ったみたいで激しくむせこんでしまう。
シルが背中を撫でてくれる。
少し落ち着いた後に、ブリッツが話を続けた。
「その様子だと、やはり神の伴侶の意味を教えてもらっていないんだね」
最初に出会ったときにルーンが言ってやつだ。
神の伴侶って、ただ言葉のとおりの意味だけじゃないのか。
ここからルーンが話を引き継いだ。
「わたくしは元々街の小さな料理屋の娘でした。ある時ブリッツに見初めていただいて、結婚まで話が進んだとき、結婚指輪ともう1つ、証をいただきました。その時から私の時は止まり、100年間この姿のままブリッツの隣にいます」
ルーンが結婚指輪をはずして、その左手をぼく達に見えるように少し掲げて見せた。
細くて白い、きれいな指だった。
その薬指からじわりと黒い複雑な紋様が浮かび上がる。
その紋様を見たとき、ぼくは心臓がどきりと跳ねた。
それは茨を象ったような、落雷のような印象だった。
ぼくがシルと契約した時、模様は違うが腕に今のルーンと同じように確かに刻まれた。
その時は夢かと思っていたが、先ほどのブリッツの口ぶりからすると、神の伴侶となったものはあの証が刻まれるらしい。
そしてルーンの言い方からすると、神の伴侶になった者は……永遠の命を手に入れるらしい。
真正面に座るブリッツとルーンが、同情か、はたまた試すような目でぼくを見つめている。
ぼくは今どんな顔をしているんだろう。
なんでシルは何も言ってくれないんだろう。
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