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ぼくは美形な王の付き人兼おともだち  作者: ツナズキクン
雷の国出張編 ~遠出と楽しい時間と、少しの疑心~
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5 夜の攻防

この話を皆さんが読む頃には、年が明けているんですね。

 会場から出て少し歩いた場所に、縦型に長方形の扉があった。

 案内の人がその扉の横についているボタンを押すと、ゆっくりと自動で扉が開いた。


「上階に参りますので、こちらにお乗りください」


 またもや衝撃。

 これはまさかの、エレベーターだ!


 そこまで大きいものではないけど、3人なら同時に乗れそうだった。


 案内の人とシルとぼくでこじんまりとした箱の中に入る。

 扉が閉まるとゆっくり、ゆっくりとだが上へ動き始めた。


 はじめは感動したが、揺れのひどい箱にぼくは途中でロープが切れて底に落ちてしまわないか到着するまで気が気ではなかった。


「到着いたしました。こちらの部屋です」


 部屋のドアを押さえながら「どうぞ」と案内の人が手で入室を促した。


 ん?


 え、どっちの部屋?


 ぼくが戸惑う隣でシルが部屋の中へと入っていった。

 確かに、普通先に王の部屋を案内するよね!


「……いかがなされましたか?」


 ぼくが一向に動こうとしないので、案内の方が不思議そうにぼくに問いかけてきた。


 え、同室?!

 なんで?! いや、1人一部屋用意しろなんて言わないけどさ、せめて他国の王様には一人部屋が良いんじゃないの?


「どうした?」


 気がついたら引き返してきたシルが、ぼくの顔を覗きこんでいた。

 あまり表情の変化は感じられないが、動かなくなったぼくを不思議そうに見ている。


 え、気にならないものなの? 

 ん……まぁ、あなたが良いならぼくも良いんだけど。


 今度こそシルの後に続いて部屋の中へ入った。


 部屋の中にも電気が通っているので、眩しいしなんだか暖かい。


「それでは、ご用がございましたらそちらのボタンを押してお呼びください」


 案内の人はぼくたちが部屋に入ると、すぐに一礼して部屋の扉を閉めて去っていった。


 改めて、ぐるりと明るい部屋の中を見回す。

 全面に星空が描かれている壁には、電気を通す素材を埋め込んでいるのかピカピカと点滅していてとても素敵な部屋だった。

 ただ、部屋の真ん中にどんと構えられた円形のベッドだけは、目をそらしたくなる。

 この部屋にはベッドはこれだけだ。

 ベッドの端にはかわいいフリルがあしらえており、いちごクリームのような色がとてもキュートだった。


 これ誰の趣味でなぜ客室に置いたの??


「浴室があるみたいだな。一緒に入るか?」


 シルが近くの扉を開けて、中を確認しながら誘ってきた。

 な、な、な?!

 なあ?! 

 何も言葉が思いつかない。 


「冗談だ。先に入らせてもらうぞ」


 ぼくの反応に満足したという顔で、そのままシルは浴室に入り扉を閉めた。


 お城の客室ということで、広さは申し分ない。ベッド以外にも大きなソファがあるので、とりあえずそこへ座る。


 すぐ隣ではシルが風呂に入っているのだと思うと全く落ち着かない。

 風の国でも何度か王宮に泊まったことはあるが、部屋は別々なので風呂上がり後のシルを見るのは初めてだ。


「おい、上がったぞ」


 何もすることがなくただそわそわしているぼくの背後へ、風呂から出てきたシルが声をかけてきた。

 

 その声に油断していたぼくは、驚いて全身がびくんと跳ねた。


「なかなか心地よかったぞ。お前も入ってこい」


 足首まで隠れるガウンを身に纏ったシルからは普段以上に良い匂いがした。

 真っ白な肌からは湯気が立ち昇り少しだけ紅く色付いていた。


 だから! シルのちょっと色っぽい姿なんて見たくないんだって!


 俯きながら浴室へ逃げ込む。

 張られたお湯に体を沈みこませると、馬車に乗って固まっていた筋肉がほぐれていく感じがした。

 心地良い……一旦外のことは忘れて風呂を楽しもう。



「おい。ソファで寝るつもりか」


 風呂から上がると一気にシルと2人という現状が戻ってきた。

 しかも、シルはすでにあのピンクの丸いベッドに寝そべっている。


 なんかあの隣に行くのとてもやだ!

 と、思ってソファの方へ向かいそのまま上にダイブした。

 

 シルは不満そうな声を上げたが、ぼくは聞こえていないフリをして目を瞑った。


 ふわり。


 身体がゆっくりと浮き上がった。

 ちがう。浮き上がったのではない。


 誰かの両腕に抱き上げられたのだ。

 そしてこの部屋には2人しかいないわけで、その誰かとはシル以外にいない。


「風邪を引いてしまうからソファはダメだ」

 

 おかんか!

 いわゆるお姫様抱っこをされベッドまでシルに運ばれたぼくは、到着すると乱暴に放り投げられた。

 上質なベッドはその衝撃を吸収し、ぼくを柔らかく包み込む。


 っておいおいおいおいおい!!

 シルがぼくに覆いかぶさるようにしてベッドに乗り上げてきた。


「電気は……これか?」


 どうやらぼくの頭上にボタンがあるようで、真下にいるぼくを全く見ることなく、シルがボタンを押した。


 ギギ、ギギギギギ。

 ゆっくりと、ベッドが回転した。


 なんで回転するの?!


「おお、ではこっちか」


 シルがもう1つのボタンを押すと、今度こそ消灯し、暗闇の中、壁に埋め込まれた星空がとてもキレイに輝いた。

 

 ようやくシルがぼくの上から退いて、隣に並ぶように寝転んだ。


 ベッドはまだ回転している。


「これは中々見応えがあるな」


 シルが星空の壁を賞賛する。

 ぼくは早くこの回転を止めたいと心から願った。

お読みいただきありがとうございました!

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

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