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人気者の

気が狂いそう。

『Connected』


 またあの機械的な女性の声だ。

 ぱちっと意識が覚醒した。

 今回ぼくは寝転がってはおらず、どこかに座り手にはシャーペンを握っていた。


 見回すとたくさんの人がいた。

 部屋の中は後ろから前へと高低差があり、長机が段差のように設置されている。

 一番低い位置には高齢の男性がマイクを通して話し続けており、時折背後にある黒板に何かを記入している。

 それを皆が真剣にノートに書き写していることがわかった。


「おい  、急にきょろきょろしてどうしたんだよ?」

「もしかしてこの講義に気になる子でもいんの?!」


 ぼくが状況を掴めず周りを観察していると、両隣に座っていた男たちが声をかけてきた。


「名前……」

「え? 気になる子の名前が知りたいの? どの子?!」

『そこ、話を聞かないなら退出してください』


 聞き覚えのある名前を呼ばれ思わず声が漏れる。

 ぼくの言葉に食いつくように、先ほどの2人だけでなく、周囲がざわめきだした。

 すかさず前で話をしていた男性からマイク越しに警告を出されてしまう。


 その後はただ静かに、男性が話すことをぼんやり聞くばかりであった。


 終了の合図が出ると、またぼくの周りの人たちが口々にぼくへと質問を浴びせてきた。


「で、どの子なの?!」

「えー、  好きぴいるのぉ? ショックぅ」

「クールな  も恋とかするんだなぁ」

「おい、とりあえず今日の夜飲み会しねぇ?! 色々話聞かせてくれよー」


 話しかけられて気がついたことがある。

 今ぼくの意志で動いているこの見知らぬ人間は、前の世界のぼくだということを。


 先ほど鞄を漁っていたら見つけたスマホの画面を鏡代わりに、さり気なく自分の顔を確認した。

やはり以前見た夢と同じ顔をしている。違っているのはあの時は寝間着でだらしなかったが、今日はシワのないシャツをまとい、髪もきちんと整えられていた。


 名前は聞き覚えがあるのに顔は見覚えがない。

同姓同名なだけなのかもしれない。だが、ぼくの頭の中では嫌な想像が止まらず涙が出そうになる。


「  ? 具合でも悪いのか?」

「どしたどした、さっきから全然喋らないしさぁ」


 辛そうにしていると皆が心配してくれた。ぼくではありえないくらいこの身体の人物は人気者だった。


「おーよしよし、こいつらが茶化すのが嫌なんだよな?」

「お前だってノリノリで聞き出そうとしてたじゃん!」


 大勢の笑い声が嫌で机に突っ伏して両耳を塞いだ。今絶対変だと思われている。怖い。目を開けたくない。


『おい、目を開けろ』


 嫌だ。


『早く目を開けてスマホの画面を見ろ』


 いやだ……あ、れ……この声はシル?


『早くしろ、皆心配しているぞ』


 シルの優しい声がぼくの心を落ち着かせた。

 恐る恐る手を耳から離し、ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出し画面を見た。


 戻る←

 戻らない


 またあの選択肢だ。

 今度は迷わずぼくは“戻る”の文字をタップした。


『Disconnected』


 女性の声が聴こえると、ぷっつりぼくの意識はその場からシャットアウトされた。

お読みいただきありがとうございまーす!

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