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ぼくは美形な王の付き人兼おともだち  作者: ツナズキクン
新人付き人編 ~ブラックではないんでしょうね?!~
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7 またお前は

ラップは実は甘いもの好き。休みの日は意外とふんわりした格好でお出かけしている。

 なんとか2人に頼み込んで無事に王宮まで辿り着くことができた。


 門まで行くとラップが慌てて駆け寄ってきて、僕たちを応接間へと連れて行ってくれた。

 

「おねーさん可愛いねぇ。ね、ぼく雷上手に落とせるんだよ? 見てみる?」

「まぁ! 勿体なきお言葉。ところでリヒト様は甘いものはお好きですか? こちら私のお気に入りのケーキなのですが……」

「うわぁ! ぼく、甘いものだーい好き……ふああっ、おいしー!」


 リヒトはラップが来てからそちらに夢中のようで、ぼくは内心ほっとしていた。


 ラップもさすがの対応で、ぼくがリヒトのことを説明すると、瞬時に失礼じゃない態度で、でも幼い子どもをあやすような優しさでリヒトに接していた。


 問題はぼくの手の先にある。

 今ぼくはウィンちゃんと手を繋いでいる。

 いつもは明るく破天荒な性格の彼女が、今は頬を軽く膨らまし子どもがぐずる前のような不機嫌オーラを漂わせていた。


 それを下手に刺激することができないので、先ほどから掴まれた手を握り返すことしかできなかった。


「あー! ウィンしゃん手繋いでるのずるーい! ぼくも!」


 リヒトがこちらを見たかと思うと、ずるいと言って駆け寄ってきて、ぼく達が腰掛けているソファへ飛び乗ってきた。

 そしてぼくの空いている方の手を握ってきた。


 幸い帯電しているのは髪の毛だけの方で、手は触れ合っても痺れることはなかった。


 しかしこれが起爆剤となり、良くない事態が起きた。


「リヒトお主! わしの許可なく手を繋ぐとは何事じゃ!」

「ウィンしゃんの許可なんていらないでしょ? ね?」

「ぶぇっ、いるもん! 許可……いるんじゃもん!」


 ぼくとリヒトが手を繋いだことが気に食わなかったらしく、ウィンちゃんが泣きだしてしまったのだ。

 

 おかしい。こんなウィンちゃん今まで見たことがない。

 ラップも同じなのか困惑してどう動けばいいのか測りかねているようだった。


「お待たせしました」


 大混乱の中、扉からノックの音が聞こえたかと思ったら、ワインドが扉を開け一礼して入ってきた。


 その後ろからシルも悠然とした態度で入ってくる。

 そして、こちらへ目を向けるやいなやものすごくしかめっ面になった。

 

 なんでシルも機嫌悪そうなの?!


 シルはその顔のまま、早足で近付いてきてまず泣きじゃくるウィンちゃんの首根っこを掴んだ。

 そのままウィンちゃんをラップに抱っこさせる。


「雷の近くにいると風の気性が荒くなる。ラップ、別の部屋に連れて行って雷が帰るまで相手をしてやってくれ」


 シルに指示されたラップはウィンちゃんを抱っこしたまま頭を下げ、部屋を出ていった。


「えー、お姉さんどこか行っちゃうのぉ? ぼくも行きたぁい」


 ずっとぼくの腕に擦り寄っていたリヒトが、部屋を出ていくラップを見て甘えるような声を上げた。


「雷よ。お前はここに来た要件を告げて早く帰れ」


 シルが今度はリヒトを持ち上げた。

 さすがにウィンちゃんの時とは違って首根っこではなくちゃんとお尻と背中を支えて抱き上げた。


「うわぁ、シルリヤしゃんが抱っこしてくれたぁ!」


 面識はあるみたいでリヒトは嬉しそうにシルの首にしがみついた。


「良いから。早く言わないと保護者を呼ぶぞ」


 保護者という言葉にリヒトがすごく嫌そうな顔をした。


「むぅ。わかったよお……はい、これ! 招待状」

「ワインド、読んでくれ」


 リヒトが自分のセーラー服へ手を突っ込むと、そこから一通の手紙を取り出した。

 真っ白い便箋に黄色の封蝋がされている。


 リヒトはワインドにその手紙を読むように伝える。


「では、失礼して……親愛なる風の王。最近付き人ができたんだって? 見たーい、見たーい! 良かったら次の雷の国で行われる祭りに連れてきてくれよぉ。そしたら何でも言うこと聞いてあ・げ・る。シルリヤちゃんだーい好き! チュッチュッ……以上です」


 真顔でとんでもない内容を読み上げたワインドに、室内が静まり返った。


「きゃははは! お兄ちゃんおもしろーい!」


 リヒトだけ嬉しそうに笑い声を上げた。


 ぼくは目を閉じ試験の時のかっこいいワインドを頭に思い浮かべ瞑想した。

 ぼくはなにも見ていない。ぼくはなにも見ていない……見ていない。


「っていうわけだからさぁ、みーんなぼくの国に遊びに来てねぇ。一緒にお祭り楽しもぉ!」


 ぴょん! っとシルから飛び降りたリヒトがまたぼくのところに戻ってきてぎゅっとぼくに抱きついてきた。


「約束だよぉ?」


 上目遣いであざとく『約束』と言ってくる少年に、思わず頷いてしまう。


「お前っ」

「じゃっ、ぼく帰るねー! まったねぇ!」


 シルがもう一度リヒトを捕まえようとしたが、一瞬の内に消えてしまったリヒトに、空振ってしまった手で眉間を揉みため息をついた。


 なにも見えなかったのであとでワインドに聞いたが、雷は光の速さで移動ができるらしい。


 とにかくぼくが頷いてしまったことによって、来月行われる雷の国の祭りに行くことが決定したらしい。 

お読みいただきありがとうございます。

ブラックなお仕事ではなくて良かったね主人公!

次の次から雷の国へ出張します!

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