4 挫折
ぬるいけど仕事の嫌な話注意。
爆睡してしまった日から、ぼくは王宮に通っていた。
結局初日は何もできずに帰ってしまったけど、それ以降はシルから仕事を教わった。
まず最終試験で行った水晶を使って風を送る業務だ。これは出勤したら最初に行う日課になった。
次にシルについていって鞄持ちをしたり、執務室の掃除を行ったりした。
最後にこれは仕事と考えていいのかなと思うんだけど、ウィンちゃんの接待だ。
緊張していたがぼくにはあまり難しい仕事はふられることがなかった。
なーんだ、ぼくもやればできるじゃん!
そう調子に乗っていた時期がぼくにもありました。
「あの付き人の子、やっぱりまだ子どもだから早すぎたんじゃない?」
「いや、あれくらいの子でもしっかりしてる子はしてるわよ……言われたことしかできない子っているわよね」
たまたま、たまたま聞こえてきたんだ。
ぼく以外にもシルの周りでは色々な人が仕事をしている。
シルの元にやってくる大量の意見をわかりやすくまとめたり、街で問題があればシルに頼らず解決できる人、王宮には優秀な人がたくさん働いていた。
言われたことはちゃんとしていたしミスもしなかった。
でも仕事ってそれ以上を見つけないといけないの?
一体そんなスキルどこで学んできたの?
ぐるぐると頭の中でさっきの人たちの会話がリピートされる。
どうすればみんなに認められるんだろう。
なんでぼくはここで働かないといけないんだろう。
たまらずに気がつけば王宮の外へ飛び出していた。
崖の端に座り込んで夕暮れをぼーっと眺めた。
「貴様、サボりとは良い度胸だ」
背中に厳しい言葉が飛んできた。
振り返るとラップが立っていた。
他人にも自分にも厳しいラップ。今は会いたくなかったなぁ。
ラップは特徴的な赤いフレームのメガネを2本の指で上げながらぼくの顔をまじまじと見た。
「ただのサボりじゃあなさそうだな? 何かあったのか?」
ラップは座りはしないものの、隣に並び夕日を眺めながら話を聞いてくれた。
ラップは色々な仕事や人員の管理を行っているので、仕事の場面でもよく出会う。
シルのスケジュールを管理しているのもラップだった。
いつも口うるさくいろんな人に注意したりするラップにぼくは苦手意識を持っていた。
しかし今のラップはうるさいどころか、ぼくが話すこと一つ一つに相槌を打ちながら静かに話を聞いてくれた。
自分が仕事のできない人間だと話していくことはとても惨めで泣きたくなった。
話終わるとラップが長いため息を吐いた。
「みんなそれぞれの役割がある。お前は自分は仕事ができないと言ったが、その仕事を代われる者が果たして何人いるだろうか? 風を操ることなんて私にはできない。目に見えないことなので、周囲には中々理解されないかもしれない。でも、お前はよくやっていると私は思う」
弱音を吐くなと怒られると思っていた。
慰めの言葉をもらって幾分かすっきりした気持ちになる。
でもラップはそう言ってくれるが、ぼくはやっぱりできないことの方が多い。
「私の言葉だけで足りないのならシルリヤ様に聞いてみたらどうだ?」
ラップにお礼を伝えてシルのいる執務室へと戻った。
いつも通り山積みになっている書類と格闘していた。
ラップは聞いてみたらって言っていたけど、ぼくはシルには話す気にはなれなかった。
無言で壁一面にある本棚の前へ行って本を眺めた。
なんかここごちゃごちゃしてるし整理整頓でもしてみようか?
そう思って本に手を伸ばそうとしたとき、ふっと、ぼくに影が覆い被さった。
振り向くとシルが真後ろに立っていて、じっとぼくの顔を見つめてくる。
「飽きた。街にでもサボりに行くか」
有無を言わさぬ早業でシルに引っ張られ、ぼく達2人は誰にも見つからず王宮の外へと抜けだすことに成功した。
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