1 両親にご挨拶
今回はあの憧れのアイテムが登場!
気がつけばぼくは両親に抱きしめられていた。
「他の受験者が出てきた時にお前の姿がなかったから心配したよ」
「おめでとう。よくがんばったねぇ」
さっきまで何か恐ろしい夢を見ていた気がして、その体温にほっとした。
そういえばと、ぼくは両親から離れた後に右手を確認した。
さきほどシルリヤと握手した際に浮き出た模様は消えていて、今は元の肌色のみだった。
一体あれは何だったんだろう? それにあの後からの記憶も曖昧だ。
「シルリヤ様、これからこの子をよろしくお願いいたします」
両親がぼくの後ろに声をかけた。
振り返るとシルリヤが立っている。どうやらずっとそこにいたようだった。
「ああ。だがこの子はまだ子ども、今の学校も変わりたくないらしい……なので、ここへ通いやすいよう道を用意した」
シルリヤが空を見上げる。
ぼくたち3人もつられて上を見た。
そこには確かに弧を描き風の道が轢かれていた。とても高さがあるためすぐには気がつかなかった。
ここを辿ればすぐに家へと戻れるらしい。
「初めは私も同行しよう」
シルリヤが階段を上るように空へと上昇していく。
ぼくもその後ろについていった。
「あっ」
ぼくの後ろにいた母が足を踏み外す。
慌ててぼくとまだ地上にいた父が支えて事なきを得た。
「お前、こんなに風読みが上手だったんだねぇ……どうやら母さんと父さんにはこの道は難しいみたいだよ」
嬉しそうに言う母になんだかむず痒くなって目をそらした。
そうしているうちにシルリヤも戻ってきた。
「これは失礼した。そうだな……ではこちらを使うといい」
思案したシルリヤが合図をすると、兵士が2人がかりで大きな筒状のものを運んできた。
地面におろしてそれを開くと、その正体は綺麗な刺繍が施された絨毯だった。
も、もしやこれは……!
「空飛ぶ絨毯だ。これに乗ると目的地までオートで運んでくれる」
うおおおお! 空が飛べる世界だからあるんじゃないかと思っていた空飛ぶ絨毯!
まさか乗ることができるなんて!
お礼を言いながら絨毯の上に乗る両親に続きぼくも足を乗せようとしたとき、シルリヤに腕を掴まれ引き止められた。
「……あいにく、これは2人乗りでなぁ」
ぼくにしか見えないように見せるその表情はとても意地が悪い。
「後ほど合流するとしよう」
シルリヤが2度手を叩くと、両親を乗せた絨毯はふわりと浮かび上がり、ゆっくりと風の道を進みはじめた。
「おい、俺達も行くぞ」
再び空に上がったシルリヤに呼ばれ、ぼくも隣を歩くことにした。
歩きながらも、鼻の高い綺麗な横顔をじとりとした目で見つめる。
その視線に気がついたシルリヤが不思議そうな顔でこちらを覗き込んできた。
「ん、なんだ? そんなに絨毯に乗りたかったのかよ……はぁ、また今度な」
軽くあしらうように頭をぽんぽんと軽く叩いてくる。
その態度に腹が立つ。今度絶対絨毯に乗せてもらおう。
「ようこそシルリヤ様。どうぞ中へ」
一本道をまっすぐ帰ってきたぼくたちは、行きに乗った列車よりもかなり早く家につくことができた。
確かにこの距離なら毎日通うことも難しくないだろう。
「いや、長居はするつもりではない……また明日」
シルリヤはすぐに踵を返すと絨毯に乗ってあっという間に空へと消えていった。
道中、シルリヤから付き人のスケジュールを聞いた。
2日に1回、学校が終わったあとの放課後の2時間を王宮で働くことになった。それを5回繰り返したら3日間休みをくれるらしい。
明日からの王宮での仕事に不安をいだきつつ、なんだかんだ1日中遠い土地へ行きいろいろな人と関わり、試験を受けた疲労から、ぼくは死んだように眠りについた。
お読みいただきありがとうございます。




