ここはどこ?
わたしはだれ?
『Connected』
女性の綺麗な声が耳に直接入ってきた。
ぼくとシルリヤの周りには誰もいないはずだったし、聞いたことのない声だった。
「あ、しまった」
シルリヤがそう呟いた瞬間、ぼくの視界は真っ暗になっ
「………………ぶはぁ! ……はあ、はあ」
息苦しさに飛び起きた。
上体を上げたと同時に何かがぼくの身体から飛び退いたのでそれを目で追うと、どうやらぼくの上に乗っていたのは猫のようだった。
猫はぼくから飛び降りたあと、部屋の暗闇に溶け込んだ。まるでこちらを監視するように、黄色い光が2つ、じっとその場から動かなくなる。
シルリヤの飼い猫だろうか? ほんの一瞬見た限りだが、とても大きくて真っ白な長毛の美しい猫だ。
「君も美人さんなんだね……あれ、」
違和感に気がつき喉に手をあてる。
自分から聞き覚えのない男の低い声がした。
慌てて部屋を眺め回す。
よく見るとぼくが寝ていた場所は小さな部屋で、布団のすぐ傍には低い机が置いてある。
その机の上には封の開けられたスナック菓子や缶ジュースが乱雑に乗せられていた。
照明が消えているみたいで薄暗いが、正面にあるテレビからの光がぼんやりと部屋全体を照らしていた。
「ここは…? ぼくは…」
目が慣れてきたので照明のリモコンを探していると、机の上にスマホが置かれていることに気がつきそれを手に取る。
真っ暗な画面の中には中性的な顔の青年が映っていた。
「やっぱりぼくじゃない」
さきほどまでぼくがいた世界とは違い、この場所はまるで転生前に暮らしていた世界のようだ。
嫌な思い出がフラッシュバックしていく。
「きっとこれは夢だ、夢なんだ」
戻りたい一心で自分に言い聞かす。
『そうだ、夢だ』
どこからか、今度は女性ではなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
この声は……そうだ、シルリヤだ。
「シルリヤ!」
『落ち着け。テレビを見てみろ』
姿は見えないがどこからか聞こえてくるシルリヤの声に誘導され、ぼくは画面へと視線を向けた。
よく見ると真ん中辺りに2行に及んで文字が浮かんでいる。その上の行の文字の横には矢印のマークが点滅していた。
暗闇の中、眩しい光が痛くて辛かったが、目を凝らしてよく読んでみる。
戻る←
戻らない
シンプルにそれだけが書かれていた。
なにかのゲーム画面なのかもと考えたが、それにしても情報が少ない。
『戻るを押せ』
ぼくが文字の意味をとらえかねていると、シルリヤがまた指示をだしてきた。
どうやって、と聞こうとしたが「にゃー」とさきほどの猫がぼくの手元で鳴き声を上げたので、反射的に右手を見るとその傍にコントローラーが置いてあった。
コントローラーを恐る恐る手に取る。
両手の親指がボタンに添えやすい形状のもので、左に十字のボタン、右に丸やバツなどのマークが印字されていた。
一見普通のゲームコントローラーにしか見えないが、ぼくはシルリヤの言うとおりに丸ボタンを押してみた。
『Disconnected』
またもやあの女性の声が聞こえてきて、ぼくはそのまま意識を手放した。
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