第三話 謎の来訪者
状況確認が終わったところで、先ずは異世界転生したことなどは深く考えず、麻雀に意識を戻すことにした。
とりあえず、この半荘戦は俺の大勝利で終わったみたいだ。
トカゲ人間三人から訳の分からない金貨をどっさりと渡され、この金貨は異世界の貨幣なのだと直ぐに察した。
精算が終わると、異世界人は雀卓中央のボタンを押した。どうやらまだやるつもりらしい。
「マダ、ヤル.... モウハンチャン....」
やつれた顔でトカゲ人間は言い放った。
自分としては、さっきの奇跡が本当に奇跡だったのか、確かめたかった。だから、その申し出を受けることにした。
他家より前に、自分がサイコロを勢いよく振った。
出た目は6と6。仮親は俺だ。もう一度サイコロを振る。出た目は3と2。つまり合計で5で自分が親だ。
牌を順にリズムよくツモ山から取って行く。親番のため、手牌は14牌でスタートだ。牌を整理しながら、手牌に目をやる。まだ全部は牌が把握できてないが、直感で直ぐに面子ありの良い手牌だと思った。無駄な字牌が無く、それでいて綺麗に面子が一つ、また一つと整理して行くうちに揃っていく。しかし、三つ目の面子が整理され終えた頃、異変に気付いた。既に手牌は四面子、一雀頭の形になっていたのだ。そう、二度目の天和である。またも、自分は鳥肌が止まらず、心臓が激しく鼓動しているのがわかる。すると後ろから声が聞こえた。
「お前も異世界転生した奴だな、手配を見ればお見通しさ」
目が眩しいほどチャンピオンシップイエローのマントに包んだ謎の男はそう言い放つと、ニヤリと怪しげに微笑んだ。
「誰ですか?」
と恐る恐る尋ねた。
彼はひっそりと静かに答えた。
「俺の名前は北村優作、通りすがりのヒョロガリさ」