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『こんな事はままごとだ』

挿絵(By みてみん)

相内 充希さま作成♡


 頬を染めてテレテレになっている王太子から離れたネルとアンが抱きついてくるのを抱きしめる。休憩に入る時にはいつもこうして、それから三人でお母様とソフィアのもとへ行き、リオさんと王太子は騎士さんたちの方へ。

 私たちの方へ奥さんが一人、汗を拭きながらやってきた。


「ねぇねぇゾーイちゃん、今新規で受講生募集してる?うちのお隣りの奥さんが興味あるらしくて」

「わ、嬉しいです。でも今のところ新規の募集はしていません。今以上の人数になると平均的に見られなくなるので……」

「そっか〜」

「すみません……」

「ううん!ありがとう。実は彼女にはクッキーをわけてあげたことがあって、それで気になってるみたいなの。ほら、ゾーイちゃんたちの手作りだからここでしか手に入らないでしょ。体は引き締まるし美味しいおやつはあるしで結構あちこちで気になってる人はいるみたい、ふふふ。だから事業拡大する気があるならいけるかもよ?」

「え!嬉しい情報をありがとうございます!」

「ふふ、情報はいくらあってもいいもの〜」


 と言って奥さんは他の奥さんたちのもとへ戻っていった。さすが騎士の妻、情報の重要さをわかっている。

 でも本当に現在で手一杯なので、お母様もソフィアも難しそうな表情だ。


「嬉しいことだけれど、現状では難しいわね」

「そうですね。騎士さんたちが相手をしてくださってはいますが、お母様や私たちがいないと旦那さまの職場とはいえ気が引けると言う奥さんもいますし」


 需要が高まっているのはありがたいが、うちで作れるクッキーの量もあるし、これを完全に商売にするとほぼ無料で借りられている場所代の料金が跳ね上がる。王妃の口利きで訓練所を借りられているが、本来ここは国のもので一般人は入れない。新たな場所を確保しても、場所代を払うために指導料を集金しなければならなくなる。平民が生活費を切り詰めてまで受講したいと思うだろうか。

 今は無料同然だから来ている奥さんたちがほとんどだ。


 人攫いは、子ども相手なら女もいるが、だいたいが男。

 基本的に護身術とは不意をつくものであり、逃げるためのもの。

 今お母様が受講生に教えているのは、さらに遠くへ逃げやすいように犯人を少しだけ痛めつけるもので、気絶まではさせられない。

 思い切りのいい奥さんなら相手をしてくれる騎士さんが涙目になってしまうほどだが、そこまでできない奥さんは多い。私もだ。単純に力の差もある。

 だからその分受け身はたくさん練習する。転んでも怪我の少ない方法を覚えて、痛みにショックを受けた気持ちを立て直す訓練だ。けして犯人に立ち向かう訓練ではない。

 戦う方法じゃなくても腕や足にすり傷や痣ができる。その度にリオさんはとても複雑そうな顔をするが止めてとは言わないでくれている。


 一方で、『こんな事はままごとだ』と訓練に関わらない騎士さんたちもいる。そんな騎士さんたちですらなぜかお母様には一目置いているらしいが、訓練の時間は街の巡回に出ていて私たちとは会わない。

 騎士の訓練は打撲捻挫流血骨折が通常らしいので、それと比べたら確かに『ままごと』だろう。家に帰ると奥さんがすり傷だらけというのも許しがたいのかもしれない。

 

 でも『旦那に家のことは憂いなく安心して仕事をしてもらいたい』と笑う奥さんたちが素敵なのである。

 そんな風に言われて止めたいのに絆される旦那さんたちもまた素敵である。


 まあ、それはそれとして。

 どうせならたくさんの人に受けてもらいたい。どうやったらこちらと受講生、双方の負担を安く済ませられるだろう。


 と、ここ最近ずっと悶々としていたのだが、あっさりとお義父様たちが提案してくれた。


「じゃあ移動式はどうだ。庶民は金もそうだが通える距離だって近い方がいいだろう」

「あー。屋外でいいならあちこちにそれなりな広場はあるな」

「それなら、上手く交渉できれば場所代は安く済む可能性が高いですね」


 お義父様の案にエルマーさんとウォーレンさんが付け足していく。広場というのは公園のような整備されたものではなく、許可を取れば行商人が露店をひらけるような、その日その日で様子の変わる場所だそうだ。もちろん何もない日もある。


「なんならその地区の騎士団の見回り時間に合わせるか合わせてもらえれば護衛も兼ねてもらえるんじゃねぇすか?」

「それな。では王妃か殿下たちにお伺い、できますかね?」

「じゃあ曜日か週毎で予定を固定した方が騎士団も楽でしょうし、広場の使用許可も取りやすいです」

「護衛だが騎士団が駄目だったらどうする?」

「そん時は俺らか、どこかに頼むしかないな〜」

「うーん、腕っぷしなら大工から聞いてみるわ」


 商会の皆さんまで意見を出してくれ、あれよあれよと進んでいく。早い。


「だがローザが家にいないのは寂しい! 俺がローザロスになるから短時間で済ませてくれ!」


 ……お義父様……潔いんだかなんだか。









今回はここまでm(_ _)m



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