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リオさんのお兄ちゃん顔だ

挿絵(By みてみん)

相内 充希さま作成♡



 『奥さま訓練(通称)』の間、私のやることはない。


 本当は受講生の補助をしたり手当てをする係なのだが、皆さんすっかり中堅になり、私の仕事が激減。ならばネルとアンや受講生の奥さまたちが連れてきた子どもたちと一緒にいればいいのだが、なぜかそちらは騎士さんたちの上役であるオジサマたちが一緒に遊んでくれている。


「我が子の世話は家人にばかり任せているうちに孫が生まれ、抱き上げるにも正直手が震えてね。ここは小さい子と触れ合えるいい場所だ。それに要人警護には子供も含まれることも多いから若い奴らも慣れておいた方がいい。リオみたいに誰が相手でも柔軟に対応できる騎士は少ないんだ」という。


「基本的に脳筋だからな!はっはっは!」


 いや、えー、と、ははは……


 そうして、最初は子どもたちに対しておっかなびっくりだった騎士さんたちもすっかり慣れた。今では鎧を着て、どの抱き方が痛くないかの検証をするまでになった。もちろん抱き上げるのは母親と本人が了承してくれた子に限るが。


 そんな訳であちらこちらと様子を見つつ、今日もリオさんと並んで訓練場の壁の花になってます。


「え、女子生徒全員と踊ったんですか?」

「そ。希望者だけとは宣言したけど、貴族だからって王子と踊る機会はそうそうないしね」


 卒業式のダンスパーティーで第二王子であるビクトル殿下がやらかしたらしい。やらかしたといっても、この事に青い顔をしたのは「兄上がそんな事したら僕もやらなきゃいけない空気になっちゃう!」と嘆いたユーイン王子だけらしいが。

 しかしさすがの体力だわ。卒業生だけのパーティーとはいえ何時間踊り通したんだろ。


「さすがに会場を出てからへばってたね」

「あ、ホッとしました。……でもそれ、昨日のお話ですよね?」

「うん、昨日のお話だよ」

「……あそこでソフィアと乱取りしている御方のお話ですよね?」

「うん、若いってスバラシイね……」


 リオさんがどこか遠くを見やる。私は体年齢はビクトル王子より若いが、今はリオさんに激しく同意である。ちなみにエラたち在校生は卒業式には参列したが、パーティーには参加していないので本日は普通に登校。

 それにしても、ビクトル王子はなんでそんな事をしたのやら。


「ま、それをきっかけに総当り戦みたいになって、壁の花になる女子も壁の染みになる男子もいなくて、和やかな会になったよ」

「総当り戦で和やか……」

「うん、男子同士で踊ったりして混沌としてた」

「ふふ!」


 なんだかよくわからないが和やかだったのは確かなのだろう。リオさんのビクトル王子への視線が穏やかだ。


「まだまだ教えなきゃならないと思ってたけど、昨日のあれはあれで良かったなぁ」


 お。リオさんのお兄ちゃん顔だ。ふふ。


「セルジオスは一を聞いて十を調べるタイプだからこれがまた手がかかってさ〜」

「へー、努力家なんですね」

「努力家っていうか、疑問が解消されないと寝ないでずっと質問攻め。文字が読めるようになると今度は資料室で調べて突き詰めるんだ……」

「えっ!」

「なぜなぜ期って言うんだっけ? 今思い出しても城全体がげっそりしてた気がする……」

「ひ、ひぇぇ……」

「10歳頃には落ち着いたけど、それまで学園の教師たちにも何度か突撃してたから、セルジオスが学園に通ってた頃は妙な緊張感があったなあ……」


 同学年じゃなくて良かった……!

 まあ、同学年でも接点はなさそうな気がするけども。


「リオさんは質問攻めに合わなかったんですか?」

「あったよ、一番の被害者だよ。だから『俺はその問題に関してまったくの門外漢だから専門の人に聞きに行こう』って誤魔化した」


 策士!


「……つもりだったんだけど、その専門家まで一度で案内できないと『へー、ほんとに知らないんだ』って見上げながら見下してきてさぁ……俺の事情を知らない時期だったからただの小間使い扱いで、あー、今思い出しても腹立つあの時の顔」


 ぶすりとするリオさん。


「そこからは意地になって先回りして調べたね〜」

「あらぁ、ふふふ」

「負けず嫌いなんだ」

「意外です」

「そう? じゃあちゃんと大人してるんだな俺」

「ふふふふ!」


 そつのないように見えるのはそんな過去があったからなのね。


「初めてお会いした時からリオさんは大人です」

「そ? 良かった」

「はい。ふふ」

「そこはゾーイさんには魅力的?」

「ぶっ!」

「ふっ!ははっ!」


 私も慣れたはずなのに、いつも戸惑ってしまう。

 まあ、こういう時に笑うリオさんもとてもとても良いと思います。


「わ〜、私への愚痴から流れるようにイチャイチャしだした」


 と、重そうな足音と金属の擦れる音とともに鎧フル装備のセルジオス王太子がやってきた。その両手はネルとアンとそれぞれに繋いでる。今日の鎧担当はセルジオス殿下もだったのね。


「しっ、セスさん邪魔しないの」

「しぇしゅしゃん、め」

「え〜。二人とも私に厳しくないかい?」

「ネルはセスさんかっこいいよ!」

「アンもすき!」

「……これがタスタット商会の飴と鞭教育……」


 違います。ただの無自覚小悪魔幼女です。



 



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