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…………世の中の需要と供給って……

挿絵(By みてみん)

相内 充希さま作成♡




「ほぅ、それで挨拶に来た気概は認める。が。うちのゾーイに求婚()()とはどういうことだ。日和(ひよ)ってんじゃねぇぞコラ」


 お義父様、あなたはどこのヤンキーですか。執務机からリオさんを睨みあげないでください。

 でもリオさんは顔色を変えず、姿勢良く立っている。


「それについては私の不徳の致すところです。ですが、いつゾーイさんの縁談が組まれるかわかりませんので、せめて私をその選択肢の一つとしてご留意願いたく」

「なら素直に求婚でいいだろう」

「お義父様。私はエラの結婚を見届けるまで誰とも婚姻いたしません」

「ゾーイ。エラへのその気持ちは嬉しいがお前も適齢期なんだぞ?」

「もちろんソフィアも見届けたいですし、できればネルとアンもですわ」

「ネルとアン!?どんだけ待たせる気なの!?さすがに男として気の毒になるよ!?てか俺の話聞いてた!?ゾーイも適齢期!長女!」


 なぜこんなに早くお義父様に二人で報告することになったかというと、私にお金がなかったからである。


 もっと細かくいうと、王子の護衛をするリオさんが身に付けても遜色無く、かつ衝撃で変形したりしない指輪はけっこうなお値段だったのだ。私からお揃いにしようと言った手前やっぱり止めましょうとも言いにくく、借金してるくせにお義父様にさらに借金の相談をしたところ、まずは相手に会わせろと言われてしまった。

 ……情けな恥ずかしい……


 で。調整の結果、週末のユーイン王子と王妃と一緒に来たリオさんとお義父様の執務室に伺い、紹介した今である。ただし王弟の部分は内緒。王子の護衛や影武者役で充分にインパクトがあるし、母親が王妃と親友で筆頭侍女というだけでも王家に親しい位置にいる何かしらの納得がある。

 その証拠にお義父様はリオさんの経歴に関してツッコんでこない。……王妃様のおかげだな……


 そんなリオさんはいつも通り平静で、さらりと求婚予約まで宣言してくれた。そしてなぜかお義父様の方が熱くなっている。証人役なのかウォーレンさんとエルマーさんは壁際に並んで待機。


「お義父様。リオさんは待つと言ってくださいました。借金まみれの私には本当にもったいない御方です。それでも、どうしても、エラの結婚を見届けてから、自分のことを考えたいんです」

「はあ〜……」


 大きく息を吐いたあとに苦虫を噛み潰したような表情をしたお義父様は今度は憮然とした。


「可愛い娘へ予約だなんて、親としては煮えきらない男だと思うだろう」

「すみません」


 すかさずリオさんが頭を下げるとお義父様は苦笑した。


「いやまあな、ゾーイは意外に頑固なところがあるからなぁ」

「そこも可愛いので、何年だろうと待ちます」


 お義父様に頑固だと思われていた……

 頑固を可愛いって言われることがあるんだ……

 どうにか無表情を装ってはみたが、とにかく顔が熱い。なんか色々恥ずかしい。


「……そうかい。だが指輪については口を出させてくれ。似たような指輪を王子に付けさせるって、それだと素材的に王子とも揃いになるぞ。他の野郎ともなんて嫌じゃないか?」

「うわそれは確かに嫌ですね。ゾーイさんは()()だけお揃いがいいです」

「だろ?それでこのカタログなんだが」


 と、お義父様がなにかの冊子を取り出すとウォーレンさんとエルマーさんも加わり、男4人で執務机を囲んであーでもないこーでもないとワイワイやりだした。

 ……あれれ?


 とりあえず、リオさんとの仲を認めてはもらえたようなのでホッとした。

 ……彼氏、でいいんだろうか……

 お義父様たちにまざって楽しげなリオさんの後ろ姿に、しみじみとした喜びと、リオさんがこの場にいることが信じられないという不思議な感じがある。


 彼氏と父親がワイワイやってるのもこそばゆい気持ちになるんだなあ。

 ……今は疎外感もあるけど、まいっか。


 暇になってしまったので一人執務室を出る。


「あら、一人?」


 お母様のドクターストップが解除されるまで王妃も編みぐるみを作るようになった。編み目を確認するのが面倒だけれど、刺繍よりも道具が少ない手軽さをわりと楽しんでくださっている。


「はい。品物は再検討になりました」


 男だけで盛り上がってると言うと王妃は呆れ、お母様は苦笑。ソフィアとエラは何に決まるのかとワクワクし、ネルとアンは見様見真似でかぎ針を動かし、ユーイン王子は一心不乱に編みぐるみに挑んでいる。


 ちなみに王妃の作った編みぐるみネコはすでに10匹。根付紐を付け、扇に結んでいる。前世のひと昔前に流行った、携帯電話にキーホルダーをごっちゃり付けたようになりかけている。

 なんと編みぐるみネコ用に扇の要の下部に穴を開けたものを発注したそうだ。思いきりが良すぎない?

 そしてネルとアンのおもちゃとして、我が家にいらした時には貸してくださる。ごっちゃりしているのが面白いのか、ネルとアンはいつも楽しそうだ。


 そうして一緒に作っていると、執務室からお義父様たちが仲良く出てきた。


「ゾーイはどれがいいと思う」


 と、お義父様が作業机にさっきのカタログを置き、印を付けたページを嬉々として指す。どうやら決めきれなかったようである。

 お揃いアイテムの候補として選ばれたのは4つ。


 ・柄の模様をお揃いにし、柄尻には宝石を嵌めるも良しな護身用のナイフ

 ・二つを並べ合わせると一つの模様ができあがるメリケンサック

 ・持ち手の革部分をお互いの髪色または瞳の色に染めた革で編み込んだ鞭

 ・つま先部分に鉄板を仕込んだお揃いデザインのブーツ


 …………世の中の需要と供給って……


「薄着になっても隠せるナイフだろ」とお義父様。

「指輪に一番近いですよ」とエルマーさん。

「扱いは難しいですが、手を痛めにくい護身武器です」とウォーレンさん。

「靴なら父に頼めば早いし」とリオさん。


 ……いや、どれがいいかと聞かれても……


「……っ、このっ! スカポンターーン!!」


 と王妃の一喝が轟いた。









ド○ンジョ様よりドスを効かせて読んでいただけたら…(笑)

※王妃は転生者ではありません。



今回はここまで(。-人-。)

さあ次回、ゾーイはこの四択から選ぶのか、無難に指輪に落ち着くのか、乞うご期待☆

(嘘です!)




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