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2秒って

挿絵(By みてみん)

相内 充希さま作成♡




 社長との話し合いを終え、さて内職再開と道具を持ったら玄関がノックされた。平日の来客はまずいないので窓から確認すると、乗馬服の王妃が立っていた。

 ……なんで?





「こ……れは、これは、ようこそいらっしゃいました……」

「予定より早く退院されたとか。元気そうでなによりです。お邪魔してもよろしくて?」

「はい、散らかっておりますが」

「ええ、知っていてよ。ふふふ」


 玄関先でお義父様が王妃と対峙。

 なぜか王家と私たちの関わりを内緒にされていたお義父様とエルマーさんは王妃の登場に機能停止。しかし商人、再起動が早かった。2秒って。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


 いつものように王妃は作業机のそばの椅子に腰掛けた。そのなめらかな動きに呆然としながら待ったお義父様が伺う。


「ローザを借りに」

「あ?」


 おおおおおお義父様ーっ!切り替えが早過ぎるーっ!

 王妃様!お義父様をからかうのはやめてくださいーっ!シャレにならなくなるからーっ!


「王妃様、お戯れは……」


 お母様が少し赤らみながら困ると、王妃は扇を少し開いて「ふふふ、仲が良いのね?」とまた楽しげに言った。そのまま真っ青になっているだろう私と目が合うと「少しくらい悪戯してもいいじゃない?」と笑う。


 いやもう権力者の悪戯なんて心臓に悪いことしかない。勘弁してください。


 そしてやっと王妃とウォーレンさんから現状を全て聞かされたお義父様とエルマーさんは脱力。しれっとするウォーレンさんを睨みながら、お義父様はお母様の隣へ移動し、腰を引き寄せた。


「あ、あの……?」


 戸惑うお母様を何食わぬ顔で抱き寄せるお義父様。王妃は閉じていた扇をまた少し開いた。


「あらまあ、随分な独占欲ねぇ」

「ええまあ。やっと手に入れたひとですので」


 王妃とお義父様の間にビシバシと何かがほとばしっている気配がする。

 いったいこれは何対決なんだろうか……


「まだ病み上がりですので、どうぞその辺で」


 いつの間に準備したのかウォーレンさんがお茶を差し出すと、王妃は扇を閉じ、お義父様はお母様を椅子へエスコート。


 あれ。

 そういえば、いつもならここで仲裁するリオさんがいない。王妃のそばのいつもの場所には顔見知りの護衛さんが立っている。

 …………なんか、変な感じ。誰が来ても付き添いはいつもリオさんだったからか見慣れない。


「ローザが落ち着くまでは遠乗りはやめます。仕方がないから連れ出すのもやめるわ。その代わり娘たちは私とお城でお茶をしましょう。もちろんネルとアンも一緒に」


 は?

 王妃は楽しげに微笑むと、そのまま爆弾を投下した。


「リオが熱を出して寝込んでいるの。ゾーイ、付き添いをしてちょうだい」

「はい」


 なんの抵抗もなく、息をするように返事をした自分にびっくりである。

 冷静であれば色々と確認するところがあったのに。

 でも。


「ではすぐに出ましょう。ウォーレンと、確かエルマーだったわね、貴方たちはどうします?」

「さすがに終日二人きりですと奥様が心配ですので、私たちは残ります」

「あらふふふ!若いわねぇ」

「ええ、復帰したのならば会頭の仕事はたくさんございますので」

「あらあらうふふ。働き者にはぜひとも働いてもらわないとね」


 うわ、ブラック発言を聞いてしまった。なんだかんだ王妃とウォーレンさんも打ち解けたなあ。それとも社交辞令内のやり取りなんだろうか。難しいなあ、高貴な人との会話って。


「いや別にウォーレンとエルマーを連れてくださっても結構ですよ」

「アホか。お前がその気でも今ならお前の方が先に潰れるからな」

「本調子ではないところを無理矢理退院してきたのを自覚なさい」

「……ちっ」

「うーわ、ウォーレンさんに舌打ちすんなよ」

「……せっかく休業してますし、再教育からはじめましょうか」

「げぇっ!」


 ……お義父様たち、仲いいよなあ。

 あ!そうだ出掛ける準備よね!と言っても準備するものがないんだけど。


「あ、あの、王妃様。お城にあがれる服がないのですが、このままでもよろしいでしょうか」


 エラは制服があるからいいとして、ソフィアと私はつぎはぎワンピースだし、ネルとアンに至ってはシーツで作ったワンピースだ。今はこれしか服がない。今さら王妃が気にするとは思えないが誘われた場所が場所である。確認はとらないと。


「ええ。謁見の間に行くわけでもないし、私の私室みたいなところだから他の誰に会うわけでもないわ。そのままの格好で構わないわよ」


 ああ良かった。王妃の私室という場所がすでに魔境だけど、誰にも会わないのなら助かる。付き添いの護衛さんも肯定の意味なのか頷いてくれたし、緊張が少しだけほぐれた。


「ねーさま、どこに行くの?」

「王妃様のお家ですって。馬車に乗るからおトイレを済ませに行こうか」

「馬車にのるの?わーい!アン、おトイレ行こう!」

「わーい!」


 王妃にお待たせしますすみませんと軽く頭を下げると、にこやかに頷かれた。


「帰りはユーインに送らせます」


 エラがこっそり頬を染めた。かーわい!





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