見たいような、見たくないような
「い、いいえ。リオさんは諸事情により懇意にさせていただいている騎士様です」
「ほほぅ、諸事情とは?」
なんでツッコんで来るんですかエルマーさん!?
「そ、それについては助かって落ち着いてからということで……」
「そうですか。では懇意とはどの程度でしょう?」
ぬああっ!?オッサン絶対面白がってるだろ!?
「私はお似合いだと思います!」
え!?ソフィア!?
「だってお姉様はリオさんをお迎えに出る時にとても嬉しそうですもん」
えええええっ!?
「嘘っ!?そそそそそんなことないわよ!?」
「ネルとアンですら気を使ってお姉様にお任せしてますよ?」
「ええええええ〜!?」
ネルとアンが?本当に?
そうだとしたら穴を掘って埋まりたいくらい恥ずかしい。
確かにリオさんを頼りにしている自覚はある。騎士だし、気のいいお兄さんだし。
好意はある。
だって今のところ、嫌いになる要素がない。
それだけ。
「リオさんだって、常にお優しいですけどお姉様に一番優しいですわ」
やめてソフィア。
「そんなことないわよ!?リオさんはみんなに平等よ!」
「いいえ!そこは絶対に不平等ですわ!」
「ふ、不平等だなんて!?リオさんは国民を守る騎士なのよ!?」
「でも私もお母様も『俺を呼んで』なんて言われていませんわ」
ソフィアあああああっ!?
「あらま、熱烈じゃないですか」
エルマーさん!煽らないで!
「私、あの時はこっそりとうっとりしてしまいました……うふふ」
「あああれは!私が緊張してたから!よ!リオさんはみんなでケーキを食べにって言っていたでしょう!?」
みんなって言ってた。確かに聞いた。
「お姉様、お顔が真っ赤だわ。ふふふ〜?」
こんな風にイジられたら赤くもなるよ!
「おー、この暗がりでわかる程赤くなるなんて、熱烈ですね〜」
「エルマーさんまで!?ちちち違いますよ!?赤くなんてなってません!」
「いいですねぇ若いお嬢さんの恋バナ。オッサンでも潤いますわ〜」
「こ!?こここここ恋バナだなんて!?」
「違いますわエルマーさん。愛ですわよ、あ、い」
「ちょっとソフィア!?」
あいって何!?どういう愛!?
もしも愛のつく関係なら、よくて友愛よ!
「ほほぅ、これは帰ったら忙しくなりそうですね〜」
「エルマーさん、私もお手伝いしますわ」
「ちょっと二人とも!」
何が忙しくなるの!?何を手伝うの!?
「お姉様、大きな声を出してはお義父様とお母様が起きてしまいますよ」
「元気なのはいいんですけどね」
「うぐぅっ……!」
なんでそんなに意気投合してるの!?なんでこんなに話が通じないのおおおおおっ!?
「いや、聞こえていたし」
お義父様の声がした。
「お、モーリス。もう起きたのか?」
「「 お義父様! 」」
エルマーさんに支えられながらお義父様は上半身を起こしたようだ。
「ゾーイもソフィアにも大変な思いをさせてすまなかったね。おかげでさっきよりだいぶいい。なるほど、解毒か、よくできてる。……ローザは?」
家にいる時のような声の張りはないが、さっきまでよりは格段に聞き取りやすくなった。
眠るお母様の横顔にまた、おつかれさまと思う。
「お嬢様たちのところで眠っているよ」
「そうか……あとで詫びないとな……」
「お前の体力が万全じゃなくて良かったな?」
「……うるさい」
わあ……お義父様、今どんな顔してるんだろう?
見たいような、見たくないような。
「ところでゾーイ」
「はい!」
「脱出について、お前の恋人とはどんな打ち合わせをしているんだ?」
きゃあああっ!?
お義父様の顔色を想像しただけなのにーーっ!見たいと思ってごめんなさいーーっ!
リオさ、駄目だ!今一番助けを求めちゃ駄目な人!
誰かーーーっ!?助けてーーーっ!?




