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パワーワードが過ぎるんですが!!

挿絵(By みてみん)

相内 充希さま作成♡



 コンコンコン


 大声の会話に三人で疲れ果て、話題もなくなり、いよいよ前世の話に行くか?と思い始めた頃、扉が小さくノックされた。

 すぐさまエルマーさんが立ち上がり、躊躇なく開けると、ワンピースがしわくちゃになり髪が乱れまくりのお母様がいた。


「エルマーさん、終わり、ました……」


 お母様の声は掠れていた。おつかれさまです!


「お、終わり、とは……?」

「旦那様は……よく……眠っています……」


 途端、エルマーさんは床に崩れ落ちた。


「ありがとうございます!奥様……!ありがとうございます……!」


 お母様はのろのろと屈むとエルマーさんの背を撫でた。


「エルマーさんこそ、ずっと旦那様に付いてくださって、ありがとうございます」

「いいえ……いいえ……!」


 その姿を見て、本当にお義父様が危なかったのだと実感。ソフィアと取り合っていた手が小さく震えた。


「エルマーさん、私も少し休みますので、旦那様に付いてもらえますか?」

「はい。お嬢様からだいたいの事はお聞きしました。今後のことは後程お話ししましょう」

「はい。娘たちを、ありがとうございました」


 エルマーさんがお義父様のもとへ向かうと、今度はお母様がその場で床にへたり込んだ。慌ててトイレから出て、少しトイレとランプから距離をとり、お母様を膝枕する。ソフィアが隣でお母様の乱れた髪を指で梳く。


「ごめんなさい……少し寝るわ……ね」

「はい。休んでください」


 正直、なんて声をかけたものかわからないけど、これはお母様にしかできなかったことだ。

 薄暗い中でも微妙に肌ツヤがいい気がするが、見ないふり。


「ふふ……髪を梳かれるって気持ちいい……」


 ス、とお母様は眠りについた。

 ……よっぽどだったんだな……こんなに髪が絡まってるし、お義父様の愛はどんだけよ……


「ソフィア、ゆっくり、少しずつ解いてあげましょう」

「はい」


 それでもお母様の寝顔は穏やかで。

 ソフィアと微笑み合った。





 さて、私たちがこの部屋に入れられて時間はどれくらい経ったのだろう。

 子爵は最後の団欒と言っていた。ドラマの定番では一日待ってくれる悪役はいない。すぐに買い手が現れるか、売られる前に襲われるか、だ。


 子爵側の人数は何人なのか。子爵と馭者にしか会っていないからといって、この屋敷に二人だけではないだろう。お義父様とエルマーさんを襲った10人もここにいるかもしれない。


 この地下室に運ばれる食事は、エルマーさんの体感では一日に一回、トイレの掃除は約一週間に一度。どちらもスラムにいるような人で、毎回同じ人かどうかは見分けがつかないそうだ。


 いつ、リオさんを呼べばいいだろう。


「せめて地下から上がってからよね……」

「やっぱり、ここから叫んでも外まで聞こえませんよね。さっきまであんなに大声を出していたのに、なんの反応もありませんし……」

「ソフィアは喉を痛めていない?」

「まだ出せます。お姉様はいかがですか?」

「大丈夫よ」


 廊下へ出る扉は外鍵だ。男性が二人もいるのだから体当たりで壊せるかもしれないが、体調が不全だし、鎖のせいで届かない。私たちは自力でこの部屋から出られない、ということになる。


「お姉様は、この後の予想はつきますか?」

「うーん」


 ソフィアがお母様の髪を手で梳きながら、ぽつりと聞いてきた。


「お姉様が考える最悪はどんなものですか?」

「え、そんなの口にしたらそうなってしまいそうで嫌だわ」

「そうかもしれませんけど……お父様が人身売買もしていたなんて、こうなってもまだ信じられないです……朝にお母様がもし拐われたらと言っていたから、少しだけ心構えができていましたけど……それでも怖くて泣いてしまいました、ふふ」

「ソフィアはとても頑張ったわ」

「でもお姉様とお母様が一緒でなければ頑張れませんでした」

「そうね……私も、ソフィアとお母様といなければ、きっと取り乱しているわ」


 それに、リオさんの『呼んで』がなければもっと悲観していたと思う。


「この部屋から出される時は一人ずつかもしれない」


 ソフィアの顔が青くなった。


「その時は私が最初に行くわ」

「お姉様!」

「お母様の代わりにソフィアを守るわ。そして必ずリオさんを呼ぶ。もしまた口を塞がれるようなら大暴れしてやる。ソフィアに無遠慮に触れたあいつだけは両手を潰す……!」

「お、お姉様……ふふっ、お母様みたい……ふふっ。なら、私も思いっきり引っ掻いてやりますわ」


 握りこぶしを作る私に、指をワキワキさせるソフィア。


「その時は俺も蹴り上げてやるんで、こっちに逃げて来てくださいね」


 向こうからエルマーさんが言ってくれた。

 一人じゃなくて本当に良かった。こんな状況でも心に余裕がある。


「ところで、リオさんとはゾーイお嬢様の恋人ですか?」

「ぶっふあぅっ!?」

「お姉様っ!?」


 そんな話したっけ!?なんでエルマーさんがそう思ったの!?


 パワーワードが過ぎるんですが!!








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