お!……女の子……!?
週末への打ち合わせを終え、ウォーレンさんを玄関で見送る。もう外は暗いのでエラと私だけ。
「ウォーレン、もう暗いから気をつけてね?」
「ははは、ありがとうございます。今は護衛さんがついてくださっているので夜道でも平気ですよ」
そう、ウォーレンさんにも護衛がついた。王妃とリオさんの判断だ。我が家付きの護衛さんから一人。その分、私らも自衛の準備をしている。
「それでもよ。何が起こるかわからないもの」
そうだ。お義父さまは事故にあった。
ウォーレンさんは若干しゅんとしたエラに微笑む。
「肝に銘じます。ではまた週末に参りますね」
「ええ!待ってるわ!」
はあぁぁエラが可愛いぃぃ。
ふふ、私たちに向ける笑顔とやっぱり少し違うなぁ。ウォーレンさんには安心しきっている感じ。ですよね〜。
「では失礼します」
ウォーレンさんが私にも声を掛けてくれた。……へ、私にも!?
「あ!は、はい!どうぞお気をつけて……」
「……ふっ」
うわあああっ!エラとネルとアンに向ける百分の一の微笑みだけど!ウォーレンさんが笑った!
なるほどツンデレってこういう事か。これはほだされる気持ちがわかるかも。
そしてウォーレンさんが角を曲がるまで見送り、家に入ろうとすると、庭からリオさんがやって来た。護衛さんたちと打ち合わせが終わったらしい。
「おつかれさまです。お茶を淹れましょう」
「いや、さっきお勝手からソフィアちゃんにみんなでいただいたよ」
ソフィアやるぅ!
はぁ……さっきの「苦いお茶宣言」には泣きそうになった……思い出してまたもほっこり。
「では、お片付けを手伝いに行きますね」
そうしてエラはいそいそと家の中に入った。私たちもとりあえず入りましょうとリオさんを振り返ると、リオさんは真面目な顔をしていた。ん?
そのままリオさんに促されて屋内に入り、リオさんの後ろで扉が閉まる。
「ゾーイさん。さっきソフィアちゃんが言ってたのは本当?」
ん?さっき?
「みすぼらしいって言われたって」
「ああ、はい。ええ、実の父ですが絶対に!許しませんわ!お母様も私も厚化粧を止めて粗食と規則正しい生活のおかげで肌艶がずっと良くなったのに!節穴にもほどがあります!そんな目が良しとした商品なんて絶対しょうもないか後ろ暗い品物です!」
まあ、本当に後ろ暗いかは自信がないけど、なんとか見極めよう。もう先入観でお父様は真っ黒だけど、こういう犯罪は尻尾切りも早い。
「危ない事はしないで。女の子なんだから」
お!……女の子……!?
あ、そうか、私ってば今は16歳だっけ。いやでも男の人からの女の子扱いなんて何年ぶりよ!?いやー恥ずかしい!!
「なんて言ってたのに、囮みたいになってごめん」
あ、そういう意味の女の子扱いか。そこは全然まったく。だって体は今の方が動けるし。それに。
「リオさんたちがいてくださるのでそれほど怖くはないです」
私たちだけではないという事がどれほど心強いか。
単純に男手というだけではない安心感。王子のおまけな私たちにここまで気をかけてくれる。
私の男運をここで使い切っても悔いはない。いつの間にか、それほど頼りにしている。
「……うん。何か起きても、必ず助ける」
男性に真っ直ぐ見つめられるなんて、いつ以来だろう。
こんなにドキドキするなんて、すっかり忘れてた。
「はい……頼りにしてます」
そんな気を使わないで、とは言えなかった。でもそれで正解だったみたい。
リオさんが微笑んだ。
そしてなぜか手を取られた。んん?
「うあ!ごめん、つい」
よほどに変な顔をしてしまったのか、リオさんは慌てて手を離した。ごめんと言いながら手をバタバタさせる。
焦るその姿になんだかほっこりしてしまった。




