高級茶葉も買えないのに!?
「出所はまだ特定されていません。が、怪しい者は容疑者候補として見張りを付けています」
なんと!我が家は容疑者候補だった!?
高級茶葉も買えないのに!?
いやでも、運び屋としてなら高級茶葉が買えなくても関係ないか。つーか、妙な薬って麻薬的な?
「ああ、説明が足りなかったわね。全く関係無いと思っていたあなたにしっかりした知識があった事が怪しく思えてしまったの。ユーインに近いから余計に気になったわ。でもローザに会いたかったのは本当よ」
王妃は困ったように微笑まれた。
「目処はついているのですか?」
お母様が聞いてくれた。
「それは教えられません。ですが、ユーインをこちらに来させるのは止めませんし、ローザとの契約も実行します」
という事は、我が家はシロ(無実)と判断されたと思っていいのだろう。
あー、良かったー!
ホッとして、リオさんのいつも通りの表情にまたホッとする。
「この話は内緒にしてね。捜査はこっちでやっているから、聞き込みとかは決してしないでほしい。危ないから。エラちゃんも、学園でユーイン様に会ってもこの話だけはしないでね」
「は、はい!」
リオさんからもっともな注意を受けたが、そんなの絶対しませんて。通信講座には探偵なんてなかったし。
エラが返事をした横で、私とソフィアは何度も首を縦に振った。それを確認したリオさんが小さく噴いた。すぐ笑う……
あ、そうだ。リオさんに言っておこう。
「あの、もう調べはついているとは思うのですが、お義父さ、義父の捜索を頼んでいる人物がいます。以前商会に勤務していました、ウォーレンという男性です。我が家を訪問するのはユーイン様の他には彼だけになると思います」
「思います、とは?」
「えー、従業員はエラ以外の私たちが追い出してしまいましたので、嫌われています……あ!ウォーレンさんはエラの事はとても可愛がっていますし、私たちの尻拭いもしてくれましたし、とても感謝しています!」
「お姉様、もしや、ウォーレンを疑って……?」
エラが口元を手でおさえて、愕然とした顔をした。
「違う違う! ウォーレンさんがうちに来たときに不審者ではないとお知らせしたくて! こう言ってはなんだけど、もし彼が関わっているならとっくに私たちでも気づくくらいの被害が出てると思うのよ」
いやマジで。私らの尻拭いを引き受けてくれたくらいの有能な人だからね。リオさんたちなんててんてこ舞いになってるよ。
エラの顔が元に戻った、あー良かったー! エラのウォーレンさんへの信頼がすげえ。まあ、商会の皆がエラを可愛がっていたしね。皆がエラの親代わりだった。
……今さらながら、追い出してしまったことに胃がキリキリする……
「ずいぶんな信頼だね」
「お義父様を信頼していた彼を信用しています」
エラの様子にリオさんが苦笑する。私の考えを少し付け加えた。だって、追い出された彼らは新しくタスタット商会を立ち上げる事ができたはずなのにしていない。ということは皆はお義父様の元で働きたいのだろう。
だからたぶん、お義父様が帰って来たらまた全員集まる。社長すげえ。
そう考えれば、彼らの誰かが悪事に手を出す可能性はない。散財した私らはめっちゃ嫌われたし……
と、ソフィアがそっと寄って来た。
「妙な薬とはどんなものなのでしょうね……」
エラも気になるのかそっと寄った。
「そうねぇ。夢で見た中では麻薬というものが有名だったわ。見た目は小麦粉のように細かくてさらに真っ白の粉よ。元々は痛み止めや、戦場で兵士の気分を高揚させるために使われていたの。麻薬の何が恐ろしいかは依存性よ。種類によって効能が若干違うようなんだけれど、高揚した分、効果が切れた時にとても気持ちが落ち込むらしいわ。それを改善させたくてまた使用する。そしてさらに悪くなる」
ソフィアとエラの顔色が若干青くなる。
「繰り返し使用するうちに判断力も鈍って、駄目だとわかっていても求めずにはいられなくなる。そうなると、どんな法外な値段をつけられても払ってしまう。手持ちがなければ誰かからお金を奪う。犯罪者の数が膨れ上がるの」
二人がそっと手を取り合った。怖がらせてごめん。でもそれだけ恐ろしいものだから近寄らないでほしい。
「医療用のもの以外は国で認められていなかったから、売買するのはもちろん、製造や所持するだけでも罰せられたわ」
なのに撲滅には至らなかったなぁ……あ、妙な薬と聞いただけで麻薬に繋げてしまったけど、出回っている薬ってどんなものなんだろう?
リオさんがあんぐりと口を開けて私を見ていた。ん?
「……ゾーイさん……詳しいね……」
………………け、刑事ドラマ大好きだっただけなんですぅぅぅ!!




