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オホホホホ……


 ふっと目が覚める。


 ……あれ寝てた? あー、なんかすっきりしたかも。若い体っていいわー。てか暗い。揺れてる? どこ?


「あ、気がついた?」


「お姉様!!」


 一番最初に視界に入ったのは騎士姿のリオさん、続いて制服のエラ。そしてここは視覚情報から馬車の中と思われる。

 エラが抱きついてきて苦しいんだけど、私から見える配置から考察するに、リオさんに姫抱っこされてる模様。えぇぇ……

 なんでそうなってるのか一個もわからないんだけど?


「タスタット商会に着く前に気がついて良かったわ」


 落ち着いた第三者の声の方を見ると私たちの向かいの席にいらっしゃる女性が優雅に微笑んだ。


 …………わー、王妃様に、よく……似た……ひと……ぉ……ぉぉおおおおおっ!!!???





 我が家に王妃がいらっしゃった。

 やっすいカップでやっすいお茶を召し上がる王妃サマ。

 我が家は今晩オトリツブシになるのかしら? オホホホホ……


 ごめんなさいお義父様。土下座をする機会もありませんでしたね。エラだけはユーイン王子の友人枠でどうにか生き残れるように王妃に土下座しますので。いつかちゃんとエラの元へ帰ってくださいね。


 一生懸命意識を飛ばそうとしても、やはり王妃のオーラは安いお茶では薄まったりはせず、私らは震えるばかり。お母様とソフィアも顔色が青いが、エラはさっきまで意識のなかった私を心配。ネルはよくわかっていないながらも大人しく、アンはへなちょこソファですやすや寝てる。


 王妃はお義父様の執務室へではなく、ネルとアンがすぐそばにいる作業台兼食事用の席に自ら着かれた。そこから私たちの震えが止まらない。どうにか立ってはいるが、もし一緒にお茶をなんて言われてもカップから全てこぼしてしまうだろう。

 馬車の周りにごっそりといた護衛さんたちは外で待機。家の中にはいつものようにリオさんだけなのはネルとアンにご配慮いただいたようだ。


 ……何をしに来たのかさっぱりわからぬ……


「どうですか?」


「悔しいけれど美味しいわ……」


 リオさんは通常通りで、王子たちへの態度とほぼ同じ。しかもうちの常備茶の味を王妃に聞くとか、リオさん強心臓ですね勘弁してくださいどうなってんの。

 ていうか、王妃にお世辞を言わせるとかリオさんの頭と命は大丈夫ですか。


「国産茶を楽しむのも王妃の仕事ですよ」


「そうね」


 ええ、国内の活性化に繋がりますからね。でもそういうお話はできれば我が家ではない場所でお願いします。


「ローザ・タスタット」


 王妃は突然お母様を呼ばれた。お母様はすでに震えが落ち着いたのか、返事をすると一歩前へ出た。さすがお母様。


「市場近くの馬車乗り場で暴れ馬を抑えたというのは本当かしら」


 よりによってその話題……

 エラはぎょっとし、王妃についてますます謎は深まるばかり。

 そういやエラにはまだ言ってなかった。私が倒れた経緯を話す前に家に着いちゃったから。


「はい」


 お母様は姿勢を崩さず、ほどよいタイミングで落ち着いた声で答えた。それを聞くとなんだか私も腹が据わった。

 なるようになれ!


「良かったわ。腕は落ちてなさそうね」


 え。お母様が馬に乗れる事をご存知なの? 私たちは知らなかったのに?


 にっこりと微笑む王妃。隣からお母様の戸惑いが伝わってくる。


「あなたたちの事は調べています。今、家の外に職を探していることも」


 王妃はふっとネルとアン、私たちの順に視線を移すと、お母様にさらっと仰った。


「私の侍女になるのはどうかしら?」


 …………暴れ馬を大人しくさせたら王妃の侍女に誘われた件。


 意味わからーーん!









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