「お姉様、具合はいかがですか」
コンコン
控えめなノックの後にそっと開いた扉からシンデレラが現れた。
「お姉様、具合はいかがですか」
お茶セットが乗ったトレイを持って私の部屋に入ってくると、ベッド脇の猫足サイドテーブルに置く。そして、その場でモジモジしている。
……だよねー……
今まで「汚れるから同じ部屋に入らないで!」が私からシンデレラへの毎日の挨拶だもん。階段落ちの後に部屋に運んでくれるんだって、恐る恐ると肩を貸してくれたシンデレラ。いつも怒鳴っていた私によく肩を貸してくれたよ。
まあ、お母様も妹もさっさといなくなっちゃったからしようがなかったよね。
その後もドレスを脱ぐのを手伝ってくれて、体に痣ができていないかチェックしてくれて、寝間着を準備してくれて、シワになったドレスを持って行こうとしたシンデレラを止めた。このドレスのおかげで助かったから感謝はしてるけどとりあえず放置。シワはできたけど大して汚れていないし。
ドレスは後ででいいなんて言ったくらいでは何にもならないけど。
何でこんなに献身的なんだろう。
我が事ながら、そんな価値は全くないのに。
「一杯だけ淹れてくれる?」
ベッドに起きている私の加減をみたいけれど、医者的な事が分からないだろうシンデレラは小さくオロオロとしていた。お茶を淹れるという仕事にホッとしたのか、肩が少しだけ下がった。
あぁ、いい香り。
シンデレラの淹れる紅茶は美味しい。プロの料理人には敵わないけれど料理も美味しい。ごくたまに拭き残しがあるけれど、掃除だって丁寧だし、天気が良ければ洗濯物のついでに寝具も干したりする。
いつでも私たち優先で。
「シンデレラ、話があります」
手渡された紅茶を一口飲み、そのままカップとソーサーを両手で持つ。
私の雰囲気に圧されたのか、シンデレラはベッドの側で畏まった。
「シンデレラ、いいえ……エラ」
瞬間。シンデレラは息を飲み、私を凝視。
「あなたの知る現在の我が家の財政状況を教えてちょうだい」
罰だとしても、目をくり抜かれるのはやっぱ嫌だ。