でも貧乏性にはならないでね
「はい、では今日はここまでにしましょう」
出来上がったあみぐるみ猫は、ソフィアが二個、エラが一個で、それぞれ作りかけもあり。だけどユーイン王子が一個目を作り終えたタイミングで終了。そろそろお帰りの時間だし。
ユーイン王子は何かがふっ切れたのか、ちょっと不恰好でもそのまま編み続けた。出来上がりはとても猫には見えなかったし、ユーイン王子も微妙な表情だったけど。
「……うん。最初にしては上々だ、ということにしておこう」
ふふ、耳が赤いよ王子様?
口元もによによしてるし。
気晴らしはできたかな?
「次に来る時は毛糸を持って来る。もちろん!余っているものがあれば、にする」
はにかみユーイン王子の破壊力がやべー!
さすが王子!
そしてこちらの事も考慮してくれる王子サマ、さすがです。でも貧乏性にはならないでね。
ユーイン王子はエラに茶猫を返し、自作の猫を握ってまたリオさんと共に辻馬車で帰って行った。
二人の姿が角に曲がって見えなくなるまで見送ってから家に入ると、ソフィアとエラとお母様までがぐったりとしていた。
ははは、二度目の来訪とはいえ目の前に王子だし、ラフな格好だったとはいえ護衛の腰には剣があったし、緊張したね。
お茶飲もお茶。
「ゾーイは平気そうね……」
お母様にお茶を差し出すと不思議そうに言われた。お母様も平気そうだったのに。社交界に出なくなってしばらく経つから、大人でもしんどいのかな?
……王子だから……だな!
ロイヤルファミリーはやっぱりオーラがあるよね。良いものもそれが強すぎるとしんどいってことだね。うん。
「そうですね、エラより小さい子が落ち込んでましたし、長女としては気になると言いますか……」
小さい子、とお母様は吹き出し、ソフィアとエラは目を丸くした。
「お姉様……ユーインさまにそれは言わないでくださいね。ふふ」
ソフィアが呆れながらも笑い、エラはひとつしか違わないのにと笑う。
ちょっと、笑い過ぎじゃない?
まあ、許すけど。
でもそんな二人も王子にずいぶんと気を向けていた。
ぎこちないお世話姿がお姉さんしてて微笑ましかったぞ。
頑張り屋王子との時間は思っていたより楽しかったね。
今度は落ちないようにとエラの茶猫に根付け紐をつけてあげ、お弁当用の手提げハンカチに結んだところ、学園でそれを見つけたユーイン王子となぜか大騒ぎになったらしい。
……なんでだよ……王子の食い付くところがわからん……




