第8話 誓い②
ようやく戻ってくると、メイドは一目散にどこかへ向かって行った。そういえば、何か報告するって言ってたな。
「シルトリス様、一緒に食事しましょう?お腹も空いていらっしゃるでしょ?」
「……そんな暇、ないと思うけど?」
「え?」
暇って……そんなに私は忙しくないし。
「リノア!!」
「お父様?どうしたんですか、そんなに慌てて。」
「お前……見てしまったのか?」
「はい。先程から何度も言ってるのですが……何か都合の悪いことでもあるのですか?」
あの時のメイドの言葉は私の目を心配しただけの発言ではないことはもう明白だ。でも、私には何がよくないのか全然わからない。
「そんな……」
「お父様、はっきり言ってください。何があると言うんですか?」
「……」
なんで教えてくれないんだろ?父だけじゃない。周りにはたくさんの使用人たちがいる。その誰もが分かったような顔をしているのに、誰も教えてくれようとはしないのだ。
「姉様!!」
「オルヴィニス。あなたまで来て……」
「本当ですか!?婚約だなんて!!」
は……?
「何の話ですの?」
「お前、まだ分かんないのかよ。」
「シルトリス様はご存知なんですか?」
「……ピアスにはそれぞれの宝石の魔力が込められている。それが月の光に照らされることによって、他の力も受ける。そしたら……ここまで言えば分かるだろ?」
だから、絶対見るなって言ってたのか。その力を受けるから。ってことは、
「もしかして、それが原因なのですか?こ、婚約の……」
「俺のピアスの石はルビー。ルビーと月の相乗効果によって引き起こされるのは……誓いの魔法。」
「誓いの魔法……それによって、その……私とシルトリス様の婚約がなされたということですか?」
「そうだよ……ほんとツイてねぇ。こんなヤツと婚約かよ……」
嘘でしょ。え、まさかね。いや、ほんとに?
「お父様……嘘ですわよね?」
「……」
無言は肯定だよね……そんな……
「ま、まぁ、長い付き合いになるんだ。仲良く、な?」
そんなこと言われたって……
「『無理です/だ!!』」
こんな、男と婚約だなんて絶対嫌!!!!