第6話 落ちていたピアス
そのまま彼の姿は見えなくなってしまい、気づいたら夕方になっていた。
「リノア様、お食事の用意ができました。」
「分かったわ……ねえ、シルトリス様を見かけなかった?」
「シルトリス様ですか?え、こちらにいらっしゃるのではないのですか!?」
「そう。いなくなってしまって……」
「どうしましょう。あ、護衛の方々に捜索していただけるよう、頼んできます!!」
「待って。」
これは元はと言えば、私が彼を怒らせるようなことを気づかないうちに言ってしまったことが原因なんだ。なら、私が解決すべき。
「いえ、いいわ。私が探してきます。」
「リノア様がですか!?ダメです!!そんなこと絶対にさせられません。」
「私がお父様からシルトリス様のお相手を頼まれたの。私が責任を持って、シルトリス様を探してきます。」
「……」
「大丈夫です。シルトリス様と一緒にすぐに戻ってきますわ。」
その後もしばらく渋っていたが、メイド1人をお付につけるという条件を呑み、ようやく外に出る頃には、月が青く光っていた。この世界の月は毎日青く光っていて、欠けることはない。なんかこういうこと考えると、前の世界とは全然違うんだなって、少し前の世界が懐かしくなる。
「シルトリス様、いらっしゃいますか?」
何度言っても、返事もなければ、物音もしない。本当に、どこに行ってしまったのだろう?私はとりあえず、庭の隅々を探してみることにした。いや、でも庭だけでもかなり広いよね……見つからなかったらどうしよう。不安な気持ちがどんどん大きくなっていく。
「あれ……リノア様、あそこに何か落ちていませんか?」
「え?」
彼女の指す先で何かが月の光を反射させて光っていた。近づいて見ると、
「赤いピアス……これって、シルトリス様のじゃ……」
ようやく彼への手がかりを見つけた。あ、もしかして、
「シルトリス様、これを探していらっしゃるのかしら?」
国から与えられたピアス。このピアスにどれだけの価値や意味があるかなんて想像もつかない。きっと、彼にとって大切なもの。
「これを、シルトリス様に届けてさしあげましょう?」
「はい。あ、リノア様、くれぐれもそのピアスが反射した光が目に入ることだけはやめてください。」
「なんで?」
「……目に光が直接入ると危険ですので。」
「ふーん……分かったわ。でも、本当に綺麗ね、このピアス。」
私にも魔力があったら、こんな綺麗なピアス貰えたのかな…-