第5話 再会してしまった……
今思えば、彼との出会いは最悪だったが、私にとって有意義だったかもしれない。だって、それから誰とお見合いしたって、あそこまで子供っぽい人はいなかったのだから。落ち着いてお見合いに挑めた。なにより、父もお見合いを予定していたものより減らしてくれた。私が嫌な思いをしたと思ったのだろう。
「お父様、今夜のお見合いなんですが……」
「リノア……すまない。今日は、その……」
え?私、お見合いの予定聞いただけだよね?
「えっと、どうかされたのですか?」
「今日はお見合いではないんだ。」
「そうなのですか?」
なんだ、ラッキー。でも、それならなんでこんなきちんとした格好させられたんだろ?
「旦那様、マルクネス様たちがいらっしゃいました。」
「分かった。応接間にお通ししてくれ……リノア、分かってもらえたかな?」
マルクネス……嫌な予感がするぞ。
「シルトリス様がいらっしゃったのですか?」
「ああ、彼の父上__シュビゼットと仕事の話があってな。その間、シルトリスのお相手をしていてくれないか?」
「い、嫌です!!」
あんな生意気なヤツと2人でとか無理。そもそも、あっちだって、私のこと嫌なはず。
「そう言わずに……」
「どうしても嫌です。」
「リノア……確かに、あの時の彼の態度はいいものとは言えない。だが、私は彼が勉強熱心だということも知ってるんだ。そう悪い子じゃないぞ。」
そういえば、博物館に通ってるんだよね?
「シルトリス様は、博物館で何を勉強なさってるのですか?」
「本人に聞いてみるといい。さあ、行ってきておくれ。」
……まあ、気になるしね。
「分かりましたわ。」
「くれぐれも、前みたいにケンカにならないようにね?」
「心得ておきます。」
「またお前かよ。」
「お前、ではありません。リノアです。」
「はいはい。」
「はい、は1回ですよ。」
「……」
「はい、は?」
「……はい。」
なんか拗ねてるけど、いいや。
「あの、シルトリス様。シルトリス様は博物館で何の勉強をなさってるのですか?」
「魔力のないヤツには関係ない。」
出た、魔力第一主義。そんなに魔力持ってるのが偉いのかよ。なんて言えるはずもなく、
「そう言わずに、教えてくださいませんか?」
「……ドラゴン。」
「ドラゴン?」
「ドラゴンとか魔物とかの生態とか色々……」
なんだ……子供っぽいやつじゃん。
「お父様から勉強熱心だと伺っていて。素敵ですね、ドラゴン。」
「っ……何も知らないヤツが言うな!!どうせ、ドラゴンとかをカッコイイって思ってんだろ?」
まあ、ドラゴンって言っても、悪い話は聞かないし。この世界ではペットみたいなもので、いっぱいという訳では無いが、見かけたことはある。カッコイイとは思わないけど。
「そのように思ったことはありませんが……悪い感情はありません。」
「ほら、そうだ。俺……やっぱりお前とは仲良くできねえわ。」
そう吐き捨てて、どこかへ行ってしまった。彼、ドラゴン嫌いなのかな?いや、そんなことより、
「だから……お前じゃなくてリノアです!!」