第3話 赤いピアスの男の子
それから数ヶ月、ついに私が初めてのお見合いをすることになった。避けようがないらしい。
「いいかリノア、相手に失礼のないようにな。」
「はい。分かっております、お父様。」
娘のお見合いなんて、家を継ぐ息子よりも力を入れてないのだろう(実際、弟であるオルヴィニスの方が始めるの先だったし)。周りにいる人のたちの表情が、オルヴィニスのときほどは強ばっていない。
「お相手の方はどのような方なのですか?」
「え……あ、私の仕事場によく来る子だ。彼のお父上とも親交があって、今日の見合いが決まったんだ。」
「そうですの……」
仕事場って……博物館に通いつめるなんて、真面目な人なのかな?なんか真面目そうだな……
「もう一度言うが、相手の気を悪くするようなことは絶対にするな。態度にも出してはならないよ。」
「大丈夫です。」
私、そんな心配されるような子じゃないと思うんだけどな。
「旦那様、リノア様。お相手の方がいらっしゃいました。」
来たか……
「失礼します。」
「おっ、よくいらした。」
「本日は、このような場を開いていただき、ありがとうございます。」
「いや、私と君の仲だろ。これがうちのリノアだ。リノア、ご挨拶は?」
「……」
「リノア?」
「え、あ、ごめんなさい。」
父と相手の父親がしてた話なんて全く入ってこなかった。それぐらい、私は目の前に現れた男の子に目を奪われてしまった。見た目がたいそうかっこいいという訳ではない。ただ……
「赤いピアス……」
「リ、リノア、挨拶もせずにそんなこと……」
「大丈夫です。うちのはもう慣れてますので。」
心配してたのってこういうことか……男の子の耳には真っ赤なルビーが埋め込まれたピアス。これが意味することは、この世界の人ならみんな知ってる。
「あなた……そんなに魔力強いのですか?」
「リノア、いい加減にしろ!!」
父に怒られても、何も思わない。それよりも、目の前のこのほうが重大だ。
この世界では、保有する魔力の強さによって国王直属の魔術団から与えられるピアスの色が違う。あまり強くない者はパールの白いピアス、普通よりも強いとエメラルドの緑のピアス、そして、国の重要なポストに就くとサファイアの青のピアスが与えられる。そして赤は___測りきれないぐらい大きな力を持った人に与えられる。
「別に……君には関係ない。」
……初めて喋った。てか、こんなこといきなり聞いたら、嫌な思いするよね。
「ごめんなさい。いきなり、このようなことを聞いて。あ、申し遅れました。リノア・フォン・エカチェリーニです。以後、お見知りおきを。」
「……シルトリス・ベリギア・マルクネス。」
シルトリス様……
「よろしくお願いいたしますわ、シルトリス様。」
「……リノア、だっけ?」
いきなり呼び捨てかよ……!!
「はい、そうです。」
「俺は……君と仲良くする気はない。」
……は?