旅の仲間たち
「先程話してみてわかったのだがこの者、カケルは勇者である。今日をもってカケルに魔王討伐の任を与える、ひいてはカケルの共に行く仲間として我が娘フレイとここにいる魔導師のロトを任命する」
国王はカケルの勢いに負けたのか二人で会話して1時間後すぐに勇者として任命してくれた。この発表に周りの人たちは驚いていたし、これは当然なのだが、何よりカケル自身が驚いていた。
「少し待ってください、私は一人で魔王を倒しにいけます」
(こいつらがいたら、モンスター娘ハーレムがつくれないじゃないか)
もはやあの頃のカケルはどこいったのかというくらいの変貌ぶりである。下心丸出しの拒否の理由が頭に浮かぶ。
だがそれを知らない国王はこう答えた。
「他のものを巻き込みたくないのはわかる。だが、フレイは我が娘ながら剣術はこの国で1、2を争うほどすごく、ロトも凄腕魔導師として私に仕えていたのだ。」
どうしても2人を連れて行きたいことが伝わってくる。
(ゲームとかアニメで仮に魔王を倒した時、その英雄の仲間も英雄扱いされるもんなぁ・・・・)
この自慢げに話している国王を見て二人もさっきまでえ?私が?みたいな顔をしていたのに急に行く気満々になっている。
「娘は正直ここに残って欲しいのだが・・・・まあ、カケル一人では不安だし・・・・」
ボソッと国王がつぶやいていたのであれ?これ俺がショボそうだからか?と一瞬本当の理由が頭をよぎったのだがカケルは気のせいだと考えないことにする。そして渋々カケルは二人の同行を認めたのだった。
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あれよあれよという間にカケルはたびに行くための荷物を渡され、出発することになった。
「半年探したのに、出発までは3時間とかからない、なんだこれは」
フレイがぼやく。普通なら今日を休んで朝一に行くのでも早いくらいだ。だが実はもう王都の入り口の門まで来ていた。
「いいんじゃないか、さっさと魔王倒そうぜ」
カケルが元気に答える。「お前なんかさっきとキャラが違くないか?」とフレイに言われたがカケルは冷静に「いや」と答える。
そしてカケル一行は魔王討伐の旅に出かけるのだったーーーっということで今初めてあったスライムに飲み込まれている。
時間は飲み込まれる1日前に遡る。
「改めて挨拶しておく。俺はカケルだ。よろしく。」
「私は国王の娘で剣士、フレイ・ゲルマ・ヴァナディーナスだ。フレイと呼んでくれ。」
一応これから旅をしていく仲間なのだ。お互いのこと知るため自己紹介をする。
だがそれは建前でカケルは実は気になっていたのだ。この魔導師のロトというやつが。あれ?コイツどっかでみたことあるくね?なんか怪しくね?と。
「私はロト、国王に仕えていた。」
カケルは聞いたことがある声にどこで聞いたか記憶を蘇らせる。だがどうしても思いつかなかった。そして何より素性もわからないやつと共に旅なんてしたくなかったのだ。ロトがどんなやつかフレイの耳元で囁いて尋ねる。
「アイツフードで顔見えないんだが、しんじていいのか?」
「私も顔は見たことないが今までお父様に仕えて来たし、実力は確かだ。」
フレイも囁き返す。父親につかえていてその娘が顔をまだ見ていないことを不思議に感じたがそこでロトの方からばさっという音が聞こえた。どうやら聞こえていたらしい、フードを取ったようだ。
「カケルとは図書館であったことがある・・・覚えてないか?」
カケルとフレイは同時にロトの方を見る。そこには長い耳、金色の髪綺麗なブルーの目の女の子がいた。
「ああ・・・・君があの時の女の子だったんだね」
ポーカーフェイスで冷静にカケルは言葉を返す。だが実は頭の中はそれどころではなかった。
(リアルエルフきたーーーーーーーーーはい!嫁ねこの子嫁1号!同行許可してよかったーーーー)
モンスター娘が大好きなカケル、実はドワーフやエルフもいけることが元に世界にいた頃からわかっていた。ヒャッホーウと叫びたいところを必死に堪える。だが内心とてもテンションが上がっているカケルをロトの一言が吹き飛ばした。
「僕は男だ・・・」
表情には出さなかったのだが体は素直だった。カケルは膝から崩れ落ちる。フレイも驚いているようだ。
「今まで国王の命令でフードをかぶっていた。それにもう一度言うが僕はどこからどう見ても男だ・・・ほら・・・」
そういってくるっと回るロトはどこからはどう見ても女の子だった。
(え?なぜこの世界はこんなにも残酷なのか、いやいい香りするじゃん、どう見ても女の子じゃん・・・・まあ、ロトって名前を聞いて俺よりも勇者っぽいと思ってましたよええ、だからってこれはないでしょうよ、泣くな!泣くな!俺!平常心・・・・平常心だ・・・・)
膝から崩れ落ちたカケル。必死に取り繕うとするが気がつくと頬に涙が伝っていた。それを見てフレイは色々察しドン引きしていたのだが、ロトをみて頬を染めていた自分自身には気づいていなかった。
旅が始まったばかり、カケルはやっぱり1人がいいと空を見上げるのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。カレンとはどうやって別れたのかは今度書こうと思います。