序章
時間を見つけては書いていきます。
よろしくお願いします。
「魔王に言われて渋々従っているこの子達には罪はない!なぜ倒さなきゃいけないんだーーーーーーボコップゴッ」
透明な物体の中でその声はかき消された。近くにいる2人はうんざりした目をしている。
なんせこの世界を救うはずの勇者が最初のモンスターに殺されそうになっているのだから
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橋本翔琉16歳だ。身長170センチ顔は普通、正直どこにでもいそうな高校生である。友達もそこそこいるし女の子とも普通に話せる。ただ少しおかしいところはというと人を好きになったことがない。じゃあ親が嫌いなのかといわれればそうではない。ただ「like」止まりなのだ。「love」ではない。どんな人に対しても愛情を抱いたことがないのだ。中学でカケルはそのことに気づき、いつか気になる人が現れるだろうだなんて軽く思っていた。そしてその時は高校生になったある日突然訪れた。
親友の部屋でパソコンしているとカケルはふと画面に出てきたその子達に釘付けになった。体に電気が走るような感覚、カケルは気がつくとこう叫んでいた。
「ようやく現れた!俺はこの子達に惚れた!」
これが恋かとこれが「love」かと
親友はカケルが好きになったことがないのを知っていたため普通にベットから飛び降り「誰?女優?モデル?」なんて聞いてきた。
しかし画面に映っていたものは違った。
「お前頭大丈夫か?」と親友が苦笑しながらもみた画面には蛇の尻尾や長い耳、黒い翼に鋭い爪、そこに映っていたものはどうみてもモンスター、ゲームで勇者が倒したりするやつだった。
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そこからのカケルはすごかった。いままで恋愛をしてこなかったのを取り戻すかのようにモンスター娘の画像を集め、ゲームを買った。ただゲームは自分の好きなモンスター娘を倒さないと次のモンスター娘に会えない。仲間にできるゲームは全て仲間にし、お別れや倒す時は涙を流した。そしてこの初恋はカケルの人生を狂わせる事でもあった。
今までそこそこしていた勉強や結構真剣に頑張っていた剣道、そんなことよりモンスター娘だ。勉強していた時間はモンスター娘を画像検索する時間に、剣道よりもフィギュア探し、気がつくとカケルの部屋はモンスター娘という偏ったジャンルのオタ部屋へと変わっていた。それをひとりっ子で両親共働きだったのもあり、止めるものはなかった。そしてだんだん親友もその異常っぷりにカケルから離れていき、気がつくとぼっちだった。しかしカケルはそんなことよりもモンスター娘、いや嫁を探していく。カケルはこの生活をとても楽しんでいた。周りから見れば、叶わぬ初恋を追いかける青年のようでたまにふとした時悲しい顔をするのだった。カケルの元親友は知っていた。その恋は本当に叶うはずのないものであると。「元に戻ってくれよ........カケル.........」元親友の声は届くことはなかった。
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今日はいつも通り学校が終わるとまっすぐに家に帰ることはせず、まだ見ぬモンスター娘フィギュアを探しに行った。
「まさかこんな掘り出しものが見つかるとは」
レアなフィギュアが見つかった熱が未だ冷めず、夜の道を一人、スキップしながら進んでいく。
(早くこの子を飾ってあげたいな・・・・・少し近道するか)
カケルは少し道をショートカットしてみることにした。いつもは通らない街灯が一つもない暗い道、そんな道を鼻歌交じりに進んでいく。途中壁にもたれてブツブツいってるおっさんがいて少し気にはなったがすぐに気にせず、なお鼻歌交じりにスキップで進んでいった。そしてようやく家が見えた時、カケルの背中に痛みが走った。
「え?」
そのまま荷物を奪われ走って走って逃げる音が聞こえる。振り向くとカケルは力がぬけ膝から崩れ落ちた。
「あのおっさん..............なん..............で?」
意識がどんどん朦朧としていく。
どくどくと心臓の動く音が聞こえる。周りはもうすでに血の海だ。そしてカケルはぐったりとしながらフィギュア返せと口にすることもできない。
(これやば・・・・・)
そうしてカケルの意識はそのまま深い闇に沈んでいったのだった。