冒険者デビューは華々しくありたい(3/3)
翌朝、門が開くのを待って、アキ達は冒険者ギルドに雪崩込んだ。
気がついたことがある。首を腰にぶら下げている仲間達。その中でも、あの少年の持っている首が格段に多い。六つも腰に首が入っているだろう袋をぶら下げている。他の人間が多くても二つであることを考えると、格段の腕前なのだろう。自信があるという発言に偽りはなかったということか。
「換金できない?」
冒険者ギルドの受付で、アキは呆気にとられていた。
「そうですね、換金できません」
受付嬢が、申し訳無さげに言う。
アキは首を受付に置いて、頭を振る。
「いやいやいや、俺は敵の首領を倒したんだぞ? 五十リギン貰えるはずだろう?」
「顔が確認できないため、山賊の首領は行方不明扱いになりました。この首は、一リギンですね」
ついムキになってしまったかな、とアキは思った。
後悔先に立たず。やってしまったことは変えられない。
仕方なく、アキは一リギンを受け取って建物の外に出た。
「どうだった?」
ユキが、弾んだ声で近づいてくる。
「……せめて、今日は美味しいものでも食うかぁ」
「今日はって何?」
「今日は、今日だよ。明日は明日で、明後日は明後日だ」
「……なんでそんな遠くを見る目をしているの。凄く、嫌な予感がするんだけれど」
その時、アキはふと視線に気がついて足を止めた。
あの少年が、鋭い視線をアキに向けている。その腰には、既に首の入った袋はない。
アキは無意識のうちに、剣の柄に手を伸ばした。少年も、剣の柄に手を伸ばす。
しかし、そのうち何事もなかったかのように、彼は人混みの中に消えていった。
(なんだったんだろう……まるで、俺を憎むかのような……)
アキは、剣の柄から手を離した。
「どうしたの?」
ユキが、顔を覗き込んでくる。
「なんでもないさ。さ、美味しいものを食おう」
「お風呂とお布団もね!」
さて、どうしたものだろう。責められるのはわかっている。どう説明したものか、どのタイミングで説明したものか、考えながらアキは歩き始めた。
これは当分、仕事を選んでいる余裕はなさそうだった。
何にせよ、アキの冒険は始まったのだった。
次回『予知眼の男はライバルなのか?』に続く
更新時期は未定